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射手の統領112 宰府での情報収集と濃紺のマント
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射手の統領
Zu-Y
№112 宰府での情報収集と濃紺のマント
ハタカへ到着後、辛子明太子での遅めの朝餉を終えて、ハタカから南東へ向かった内陸の宰府へと進む。およそ四里の行程なので、馬車だとちょっこら2~3時間と言ったところだ。
俺は今、御者をやっている。
函府から東都へ東航路、東都から商都へ南航路、商都からハタカまで内海航路と、3つの廻船を乗り継いで来た北斗号の馬たちは、やっと外に出て歩けると言うことで元気いっぱいだ。余程、ため込んでいたのだろう。廻船の中に閉じ込められていたストレスを発散するかのように、抑えても抑えてもグイグイと速歩で進むので、もう好きなようにさせることにした。
「ちょっと、アタル。速過ぎなんじゃないの?」サヤ姉が文句を言って来る。確かに馬たちが速歩で進むと、北斗号の揺れは激しくなる。
「そうなんだけどさ、久々の外だから、こいつら喜んじゃって、抑えが効かないんだよ。」
「タヅナに代わってもらえばいいではないか?」ホサキもサヤ姉に同調した。
「まあ、そのうち疲れたら落ち着くだろ?好きにさせてやろうぜ。揺れて舌噛むといけないから、痛ッ。」注意しようと思った俺が噛んだ。泣
結局、ハタカから宰府までの行程を、ずーっと速歩のままで、1時間半後の昼前には、宰府に到着してしまった。この行程、普通は2~3時間何だけどな。まったくタフな奴らだ。
ここ宰府は、西の島、別名三の島の首府である。古より、和の国の玄関として、最寄港のハタカとともに、和の国海を挟んだ大陸にある異国との交易、防御、侵攻の拠点であった。和の国の文化は、大陸に由来するものが多い。
大陸の歴史は、群雄割拠、統一による大国の成立、腐敗による大国の分裂、再び群雄割拠と言うサイクルの繰り返しだ。大陸から和の国海に突出した半島の国も似たようなものだが、半島の国は、大陸にできた大国の属国にはなっても、吸収されたことはない。
和の国は、大陸の国や半島の国とは、蜜月関係のときもあり、侵攻されて防御一辺倒だったときもあり、さらには、半島の国に侵攻して蹂躙したときもある。
どちらも異国とは言え、切っても切れない深い関係の国だ。
俺たちはまず最初に宰府ギルドを訪れた。
もう春なのと、西の島は和の国でも比較的暖かいのだが、一応、俺たちセプトのユニフォームと言うことで、濃紺の外套を羽織ってギルドに入ると、ロビーの椅子にふんぞり返って座っていた冒険者風の3人組がこっちを向いた。顔が赤い。真っ昼間から呑んでいるようだ。
「見ない顔っちゃね。」そりゃそうだ。ついさっき宰府に着いたからな。
「旅んもんやろばい。そぎゃんしても、女は別嬪ばっかやね。」だろー!嫁たちは美人さん揃いだからな。いい眼してるじゃん!
「男はひとりばい。あん男、ぱっとせんのになしてあげな別嬪ばっか連れよると?」ちょっと待て、コラ!
ムッとして睨むと、3人組は睨み返して来た。
「アタル…やめて…。」サジ姉が止めるので、取り敢えず納めたのだが、
「なんね?もう、眼ぇ、逸らしよったばい。」
「兄ちゃん、ビビりよったと?」
「女ん前でカッコ悪かよー。」
くそっ、煽って来やがった。
「用件を先に済ませましょう。」とアキナが袖を引きつつ小声で行って来たのだが、それって用件が終わったらやっちゃっていいってことだよね?
俺は深呼吸して怒りを抑え、受付に告げた。
「俺はセプトのアタルだ。東都から指名依頼で来た。紅蓮龍攻略の件でギルマスに取り次いでもらいたい。」
ガタガタン!振り向くと、さっきの3人組がイスごとひっくり返っており、さっきまで酒で赤かった顔が青くなっている。
いったいなんなんだ?
「少々お待ちください!」受付嬢が飛び上がるように立って、奥にすっ飛んで行くと、3人組はもはや眼を合わせようとせずに俯いている。
「セプトが来たとね?」
騒々しい中年男がギルドの奥から出て来た。こいつがギルマスなのかな?
「俺がセプトのアタルだ。」
「よう、来んしゃった。すまんがすぐにギルマスルームに来ちょくれ。」
俺たちはギルマスルームに案内された。
「まあ座ってくれんか。俺がギルマスのツクマエたい。」
「セプトのアタルだ。それからセプトのメンバーで、サヤ、サジ、ホサキ、アキナ、タヅナ、サキョウ、ウキョウだ。」
「東都からよう来てくれたばい。早速ばってん、紅蓮龍がアゾの活火山を根城に暴れちょっとよ。アゾの活火山の周辺の町や村は、まだ春先じゃち言うに、真夏のような暑さで難儀しちょるけん、一刻も早く紅蓮龍を鎮めて欲しかと。よかね?」
「ああ、引き受けた。で、他の冒険者がやられたと聞いたがどんな戦いだったんだ?」
「まったく手も足も出んとよ。どいつもこいつも、いきなり炎のブレスを食ろうてかい、大火傷ったい。攻撃もなんもせんうちに、やられよったげな。ばり不甲斐なか。」
「紅蓮龍は炎の七神龍なのだから炎のブレスを吐くのは当たり前だろう?耐火装備はどうしてたんだ?」
「耐火装備があまり効かんとよ。」
「なんだと?どう言うことだ?」
「そんままの意味ったい。そんだけ炎のブレスがきつかっちゃろうね。」
「それは厄介だな。うーん、それならば冷やしてみるか?」
「七神龍の炎ば、どぎゃんして冷やすと?」
「冷気の七神龍の力を借りるんだよ。」
「いんや、そげなことば言いよっても、そう簡単には行かんじゃろうもん?」
「まぁそれは見てのお楽しみだな。」
「随分自信満々っちゃねぇ。」
「まあな。ところで攻略の前線基地となる町はあるか?できれば、温泉か湧水のある宿屋がいいのだがな。」
「それやったらいい赤湯の出湯があるけん、クマモンの港町の東にある、アゾの活火山の麓のタッテーノの温泉宿がよかったいね。ばってん、タッテーノの大橋が紅蓮龍にくさ、落とされよったけん、タッテーノの温泉宿からアゾの活火山には行きにくか、なりよったとよ。」
「なるほどな。分かった。まぁ何とするさ。
ところで金剛鏑の情報はないか?」
「金剛鏑ね。それじゃったら、カゴンマの東のサクラの火山島にあるっとやなかろか?ばってん、俺はよう知らんくさ、カゴンマのギルドで聞いてみんね?」
「分かった。貴重な情報をありがとう。」
俺はギルマスのツキマエと握手して別れた。
ロビーに戻ると先程の冒険者3人組はすでにいなかった。ちっ、逃げ足の速い奴らめ。煽って来たから軽く挨拶してやろうと思ってたのに。キョロキョロと奴らを探していると、
「アタルぅ、小者を相手にしたらダメですよぅ。」ふむ、タヅナのこの口調はふっと気持ちを楽にしてくれる。流石、癒し系。笑
今後の三の島攻略の起点となるであろう宰府で、流邏石8個を登録して皆に配った。
その後、道具屋で、紅蓮龍による真夏の暑さに備えて寒冷石を購入し、防具の耐熱防御力を強化して、来たる紅蓮龍攻略に備えた。
それから装備屋に回って、耐熱機能のマントを注文した。色は当然濃紺で8人分なので、数日掛かるとのことだが構わない。その間に、紅蓮龍攻略の前線基地とするタッテーノの出湯宿に行き、アゾの活火山に登って流邏矢を登録するなど、攻略の準備を行えばいいのだ。
なお、濃紺の規格外と言うセプトの通り名のため、流石に耐熱マントを濃紺以外の色にはできない。ってゆーか、本音を言うと、俺は結構この通り名が気に入っているのだ。笑
装備屋で濃紺の耐熱マントを注文した後、北斗号をキノベ陸運宰府営業所に預け、宿屋を取ったので、午後は宰府天満宮に行ってみた。
宰府天満宮は、学問神様の天神様を祀る神社として知られているが、その起源は、権力闘争と怨霊伝説が絡む結構やばいものなのだ。
古の朝廷に、後に天神様となって崇められる、学問に大層明るいお公家さんがいた。このお公家さんは、弱小公家一族の出であったが、その抜きん出た才でどんどん出世し、右大臣にまで登った。こうなると主流派で有力公家一族は、この才ある右大臣を目の敵にするのは世の常である。
有力公家出身の左大臣が陰謀を巡らし、才ある右大臣を陥れ、無実の罪で失脚させた。そしてその右大臣が、官職・官位を剥奪され、左遷されて来たのがここ宰府である。元右大臣は2年後、失意の内にここ宰府でこの世を去る。そして、その後、恐怖の怨霊伝説が幕を開けることになるのだ。
元右大臣を陥れた、有力公家出身の左大臣をはじめ、その陰謀に絡んだ取り巻き連中、そして、直接は陰謀に関わらなかったものの、陰謀を抑えることができずに傍観しているだけだった、帝家の帝太子や、譲位した元帝が、ことごとく頓死した。
その原因は元右大臣の祟りとされ、その怨霊の猛威に、当時の朝廷は震え上がった。かくしてその祟りと怨霊を鎮めるために社が造営されたのだが、それでも祟りは収まらず、慌てた朝廷は元右大臣に太政大臣を追贈し、慰霊のために造営した社を、帝家一族を祀る天満宮に格上げし、元右大臣の子孫を取り立てて重職を与え、ようやく祟りを納めた。その後も、怨霊の再発を恐れ、帝が宰府天満宮に御幸するなどして、怨霊の慰撫に努めたと言う。
しかし今は、学問の神様の天神様として人気の高い神社で、参拝客も多い。そう言う訳で、午後はゆるりと宰府天満宮に参拝して、紅蓮龍攻略を祈願した。
夕餉はもつ鍋の店に行った。もつ鍋は店ごとに違いはあるが、牛または豚のもつと、ニラ、キャベツ、豆腐、ゴボウ、もやしを具材として、鶏がらスープで煮込むのだが、白味噌仕立てや柚子胡椒仕立てなどもある。ノーマルな醬油仕立てに、白味噌仕立て、柚子胡椒仕立てと、3種類の鍋を5人前ずつ注文し、皆でがっつりと堪能した。
なお、俺はここで柚子胡椒仕立てが大層気に入り、翌日の宰府出発前に、山髙屋宰府支店で柚子胡椒をたっぷり仕入れた。もちろん仕入価格は、山髙屋移動店舗証明書のおかげで原価である。
宿屋に戻ると、今宵はタヅナと同室である。船旅で溜まっていたこともあり、お背中流しからマイドラゴンは暴走気味で、抑えるのにやや苦労してしまった程だ。
タヅナはねっとりじっくり攻めると大いに乱れる。乱れるとドラゴンあしらいが激しくなる。この乱れっぷりが俺の好みにマッチしているので、タヅナのときはついついそう言う攻め方になる。今宵も夜更けまで大いに堪能したのだった。
専務、例のアレを早く開発してくれ。
翌日、朝餉の後にキノベ陸運宰府営業所で北斗号を受け取り、山髙屋宰府支店で柚子胡椒を大量に仕入れて宰府を発った。左右の山の間の平野を、川の流れとともに南南東に進む。この川はこの先でゴチクの河に合流する支流だ。
そのまま馬手側の山の裾野に沿って、進路を南南東から南、そして南南西へと徐々に転じて行くと、さらに広い平野が前面に広がる。ここら一帯はストの農村で、ここで支流はゴチクの河に合流し、平野を南西へ流れて行って最終的には海に注ぐ。
ストの農村は、宰府からヤナガーの町まで行く今日の行程のほぼ中間点である。俺たちは北斗号を停めて昼餉の準備を始めた。火を起こして鍋を掛け、肉や野菜をぶち込んだごった煮で、仕上げは味噌で味を調え、宰府で仕入れた柚子胡椒をたっぷり効かせる。
柚子胡椒で辛みの利いた鍋は非常に旨く、体もポカポカ温まる。春になったとはいえまだ肌寒いので、より一層、鍋の旨さが引き立つ。
昼餉を終えて片付けていると、馬たちが蹄を掻いて警戒の様子を示した。すかさずキョウちゃんズとアキナが見張台に登って式神を飛ばした。しばらくしてアキナが、山から出て来てこちらに近付いて来る熊を発見した。腹を空かせた冬眠明けの熊が、鍋の匂いに釣られて出て来たようだ。
三の島の熊はだいぶ減ってると聞いていたが、こんな人里近くに出て来るとはな。それにしてもかなりでかい。大獣、いや猛獣サイズか?
「アタルは手を出さないで。ホサキ、タヅナ、行くわよ。」サヤ姉から指示が飛ぶ。近距離部隊でやる気らしい。
「うむ、承知した。ウキョウ、バフを頼む。」すぐさまウキョウが皆に各種バフの術を掛けた。
「サキョウぅ、相手にデバフお願いぃ。」サキョウは離れている猛熊に向かってデバフの術を連発した。
猛熊がこちらに向かって突進を開始した。自在の盾を展開したホサキが猛熊の突進を受け止める。と、同時にサヤ姉が二刀流剣舞で襲い掛かった。雷神の太刀と風神の脇差が華麗に舞い、猛熊が切り刻まれている。そしてサヤ姉は、猛熊がぶんぶん振り回していた両腕を切り落とした。
堪らず猛熊は後退ったところを、ホサキの如意の槍が伸びて正鵠突きが喉の急所を突いた。断末魔の咆哮を上げる猛熊。そこへタヅナが偃月の薙刀の旋回切りで、トドメとばかりに首を飛ばした。実に見事な連携である。
俺はすぐに、近距離部隊が倒した猛熊を解体した。今日の目的地のヤナガーの町のギルドで素材買取してもらおう。
ストの農村を流れる支流がゴチクの河に合流したところで、ゴチクの河を渡ると、反対岸はクメルの町だ。
まだ昼過ぎなので、クメルの町を通り過ぎて、ゴチクの河に沿ってさらに南西に進む。ゴチクの河の河口付近が今日の目的地のヤナガーの町である。
午後、俺はキョウちゃんズとアキナと一緒にメイン車両屋上の見張台にいる。キョウちゃんズとアキナは式神を飛ばして警戒しているが、式神を飛ばせない俺は、見張台の中央にある指揮所にいた。
しばらく行くとサキョウから、敵発見の報告が来た。
「アタル兄、11時の方向約1㎞に猪の群れがおるわ。3頭やな。ごっつうでかいで。」
「キラーボアかな?だとしたら肉弾突進は食らいたくないな。北斗号を壊されたら堪らん。北斗号には近付かせないように早目に対処しよう。」
「せやね。」
俺は伝声管で指揮所から御者台に注意を促す。
「11時の方向1㎞にキラーボア3頭。肉弾突進を警戒。北斗号に近付かせないように距離を取ったまま討つ。騎馬攻撃を仕掛けるぞ。
サヤ姉はダーク、サジ姉はヴァイス、ホサキはノアール、タヅナはセールイで騎馬出撃。
北斗号から俺とアキナが遠矢で援護、サキョウとウキョウは支援の術、サジ姉は中距離から麻痺の術と緊急時は回復の術。」
「「「「了解。」」」」「りょ…。」「「はいなぁ。」」
サキョウの各種デバフの術がキラーボア3頭の群れに次々と放たれ、ウキョウの各種バフの術が皆に降り注いだ。
北斗号を停め、御者台と補助席にいたサヤ姉、サジ姉、ホサキ、タヅナが騎乗して出撃した。ホサキを先頭に、両横にサヤ姉とタヅナ、殿にサジ姉の菱形フォーメーションでキラーボアの群れに向かって一直線で進む。
キラーボアが、肉弾突進を仕掛けて来て、騎馬隊にどんどん近付いて来る。が、キラーボアの肉弾突進は、破壊力こそあるものの、直線的な動きのために回避はしやすい。しかもサキョウのデバフの術で動きが緩慢だ。
俺とアキナは、北斗号メイン車両の屋上から、遠矢による遠距離攻撃を開始した。メイン車両の屋上は、平時は見張台、戦時は攻撃台として機能する。
かなり近付いたところで、サジ姉が殿から離脱して単独になり、コースを3時の方向に変えた。ホサキ、タヅナ、サヤ姉は、この順に一直線になってキラーボアに突っ込んで行く。
サジ姉から麻痺の術がキラーボア3頭に連射されると、まっすぐ突っ込んで来た先頭の1頭がもんどりうって転倒し、2頭目、3頭目がそこに突っ込む。次々に転倒して絡まり、慌てふためいている3頭に、近距離部隊が到着した。
見事なタイミングで麻痺の術が決まって転倒したため、もはやホサキの盾は不要、如意の槍による正鵠突きで1頭目を槍玉に上げ、続くタヅナの偃月の薙刀による旋回切りで2頭目の首を飛ばし、最後に華麗に馬上から舞い降りたサヤ姉の雷神の太刀と風神の脇差による二両流剣舞で3頭目を屠った。
もう話になんねぇ。妖獣相手に一方的過ぎやしねぇか?
サヤ姉が口笛を拭くと、ノアールがサヤ姉のもとに戻り、再び馬上の人となったサヤ姉を先頭に、近距離部隊が帰路に着く。そこへ別動隊となっていたサジ姉も合流して、サヤ姉とサジ姉が並走、続いてホサキとタヅナが並走して、騎馬隊は北斗号に帰還した。
その後、帰還した4頭を北斗号に繋げて、キラーボアを屠った場所に移動し、俺がキラーボアの解体して回収した。
夕刻にヤナガーに着いた。
ヤナガーのギルドで猛熊1頭とキラーボア3頭の素材買取を頼むと、キラーボアは討伐クエスト対象だったとかで、クエスト完了認定され、その報奨金も出た。全部まとめて金貨5枚と大銀貨3枚になった。ホクホクである。よっしゃー、これで今夜は、皆でヤナガーの鰻を食いまくってやるぞー。
そのまま山髙屋ヤナガー支店に北斗号を預け、宿屋を取ったらヤナガーの町に夕餉を摂りに繰り出す。夕餉はもちろんヤナガー名物の鰻せいろだ。
俺はウナギが大好物である。テンバなどの東では、ウナギの蒲焼は背開きして蒸してから焼くのだが、西では腹開きで蒸さずに焼く。ヤナガーは三の島だから当然西の焼き方である。
ヤナガーの鰻は西の蒲焼を、せいろに入れてさらに蒸すと言うもので、独特である。西の蒲焼は、蒸さない分、身に歯応えがあるのだが、蒸しの行程がないために、東の蒲焼のようなホクホク感はない。しかしヤナガーでは、せいろで蒸すので西の蒲焼よりも柔らかく、かといって東の蒲焼程ホクホクはしていない。
まあ、結局鰻好きの俺には、どちらもありなんだがな。笑
嫁たちも旨い旨いとたくさん食っていた。ちまちまお上品に小食を気取るより、健康的にガッツリ食う女性の方が、俺は好きだ。
宿屋に戻ると、今日は嫁会議の日だとかで、俺はひとりで寝たのだった。
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設定を更新しました。R4/9/4
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№112 宰府での情報収集と濃紺のマント
ハタカへ到着後、辛子明太子での遅めの朝餉を終えて、ハタカから南東へ向かった内陸の宰府へと進む。およそ四里の行程なので、馬車だとちょっこら2~3時間と言ったところだ。
俺は今、御者をやっている。
函府から東都へ東航路、東都から商都へ南航路、商都からハタカまで内海航路と、3つの廻船を乗り継いで来た北斗号の馬たちは、やっと外に出て歩けると言うことで元気いっぱいだ。余程、ため込んでいたのだろう。廻船の中に閉じ込められていたストレスを発散するかのように、抑えても抑えてもグイグイと速歩で進むので、もう好きなようにさせることにした。
「ちょっと、アタル。速過ぎなんじゃないの?」サヤ姉が文句を言って来る。確かに馬たちが速歩で進むと、北斗号の揺れは激しくなる。
「そうなんだけどさ、久々の外だから、こいつら喜んじゃって、抑えが効かないんだよ。」
「タヅナに代わってもらえばいいではないか?」ホサキもサヤ姉に同調した。
「まあ、そのうち疲れたら落ち着くだろ?好きにさせてやろうぜ。揺れて舌噛むといけないから、痛ッ。」注意しようと思った俺が噛んだ。泣
結局、ハタカから宰府までの行程を、ずーっと速歩のままで、1時間半後の昼前には、宰府に到着してしまった。この行程、普通は2~3時間何だけどな。まったくタフな奴らだ。
ここ宰府は、西の島、別名三の島の首府である。古より、和の国の玄関として、最寄港のハタカとともに、和の国海を挟んだ大陸にある異国との交易、防御、侵攻の拠点であった。和の国の文化は、大陸に由来するものが多い。
大陸の歴史は、群雄割拠、統一による大国の成立、腐敗による大国の分裂、再び群雄割拠と言うサイクルの繰り返しだ。大陸から和の国海に突出した半島の国も似たようなものだが、半島の国は、大陸にできた大国の属国にはなっても、吸収されたことはない。
和の国は、大陸の国や半島の国とは、蜜月関係のときもあり、侵攻されて防御一辺倒だったときもあり、さらには、半島の国に侵攻して蹂躙したときもある。
どちらも異国とは言え、切っても切れない深い関係の国だ。
俺たちはまず最初に宰府ギルドを訪れた。
もう春なのと、西の島は和の国でも比較的暖かいのだが、一応、俺たちセプトのユニフォームと言うことで、濃紺の外套を羽織ってギルドに入ると、ロビーの椅子にふんぞり返って座っていた冒険者風の3人組がこっちを向いた。顔が赤い。真っ昼間から呑んでいるようだ。
「見ない顔っちゃね。」そりゃそうだ。ついさっき宰府に着いたからな。
「旅んもんやろばい。そぎゃんしても、女は別嬪ばっかやね。」だろー!嫁たちは美人さん揃いだからな。いい眼してるじゃん!
「男はひとりばい。あん男、ぱっとせんのになしてあげな別嬪ばっか連れよると?」ちょっと待て、コラ!
ムッとして睨むと、3人組は睨み返して来た。
「アタル…やめて…。」サジ姉が止めるので、取り敢えず納めたのだが、
「なんね?もう、眼ぇ、逸らしよったばい。」
「兄ちゃん、ビビりよったと?」
「女ん前でカッコ悪かよー。」
くそっ、煽って来やがった。
「用件を先に済ませましょう。」とアキナが袖を引きつつ小声で行って来たのだが、それって用件が終わったらやっちゃっていいってことだよね?
俺は深呼吸して怒りを抑え、受付に告げた。
「俺はセプトのアタルだ。東都から指名依頼で来た。紅蓮龍攻略の件でギルマスに取り次いでもらいたい。」
ガタガタン!振り向くと、さっきの3人組がイスごとひっくり返っており、さっきまで酒で赤かった顔が青くなっている。
いったいなんなんだ?
「少々お待ちください!」受付嬢が飛び上がるように立って、奥にすっ飛んで行くと、3人組はもはや眼を合わせようとせずに俯いている。
「セプトが来たとね?」
騒々しい中年男がギルドの奥から出て来た。こいつがギルマスなのかな?
「俺がセプトのアタルだ。」
「よう、来んしゃった。すまんがすぐにギルマスルームに来ちょくれ。」
俺たちはギルマスルームに案内された。
「まあ座ってくれんか。俺がギルマスのツクマエたい。」
「セプトのアタルだ。それからセプトのメンバーで、サヤ、サジ、ホサキ、アキナ、タヅナ、サキョウ、ウキョウだ。」
「東都からよう来てくれたばい。早速ばってん、紅蓮龍がアゾの活火山を根城に暴れちょっとよ。アゾの活火山の周辺の町や村は、まだ春先じゃち言うに、真夏のような暑さで難儀しちょるけん、一刻も早く紅蓮龍を鎮めて欲しかと。よかね?」
「ああ、引き受けた。で、他の冒険者がやられたと聞いたがどんな戦いだったんだ?」
「まったく手も足も出んとよ。どいつもこいつも、いきなり炎のブレスを食ろうてかい、大火傷ったい。攻撃もなんもせんうちに、やられよったげな。ばり不甲斐なか。」
「紅蓮龍は炎の七神龍なのだから炎のブレスを吐くのは当たり前だろう?耐火装備はどうしてたんだ?」
「耐火装備があまり効かんとよ。」
「なんだと?どう言うことだ?」
「そんままの意味ったい。そんだけ炎のブレスがきつかっちゃろうね。」
「それは厄介だな。うーん、それならば冷やしてみるか?」
「七神龍の炎ば、どぎゃんして冷やすと?」
「冷気の七神龍の力を借りるんだよ。」
「いんや、そげなことば言いよっても、そう簡単には行かんじゃろうもん?」
「まぁそれは見てのお楽しみだな。」
「随分自信満々っちゃねぇ。」
「まあな。ところで攻略の前線基地となる町はあるか?できれば、温泉か湧水のある宿屋がいいのだがな。」
「それやったらいい赤湯の出湯があるけん、クマモンの港町の東にある、アゾの活火山の麓のタッテーノの温泉宿がよかったいね。ばってん、タッテーノの大橋が紅蓮龍にくさ、落とされよったけん、タッテーノの温泉宿からアゾの活火山には行きにくか、なりよったとよ。」
「なるほどな。分かった。まぁ何とするさ。
ところで金剛鏑の情報はないか?」
「金剛鏑ね。それじゃったら、カゴンマの東のサクラの火山島にあるっとやなかろか?ばってん、俺はよう知らんくさ、カゴンマのギルドで聞いてみんね?」
「分かった。貴重な情報をありがとう。」
俺はギルマスのツキマエと握手して別れた。
ロビーに戻ると先程の冒険者3人組はすでにいなかった。ちっ、逃げ足の速い奴らめ。煽って来たから軽く挨拶してやろうと思ってたのに。キョロキョロと奴らを探していると、
「アタルぅ、小者を相手にしたらダメですよぅ。」ふむ、タヅナのこの口調はふっと気持ちを楽にしてくれる。流石、癒し系。笑
今後の三の島攻略の起点となるであろう宰府で、流邏石8個を登録して皆に配った。
その後、道具屋で、紅蓮龍による真夏の暑さに備えて寒冷石を購入し、防具の耐熱防御力を強化して、来たる紅蓮龍攻略に備えた。
それから装備屋に回って、耐熱機能のマントを注文した。色は当然濃紺で8人分なので、数日掛かるとのことだが構わない。その間に、紅蓮龍攻略の前線基地とするタッテーノの出湯宿に行き、アゾの活火山に登って流邏矢を登録するなど、攻略の準備を行えばいいのだ。
なお、濃紺の規格外と言うセプトの通り名のため、流石に耐熱マントを濃紺以外の色にはできない。ってゆーか、本音を言うと、俺は結構この通り名が気に入っているのだ。笑
装備屋で濃紺の耐熱マントを注文した後、北斗号をキノベ陸運宰府営業所に預け、宿屋を取ったので、午後は宰府天満宮に行ってみた。
宰府天満宮は、学問神様の天神様を祀る神社として知られているが、その起源は、権力闘争と怨霊伝説が絡む結構やばいものなのだ。
古の朝廷に、後に天神様となって崇められる、学問に大層明るいお公家さんがいた。このお公家さんは、弱小公家一族の出であったが、その抜きん出た才でどんどん出世し、右大臣にまで登った。こうなると主流派で有力公家一族は、この才ある右大臣を目の敵にするのは世の常である。
有力公家出身の左大臣が陰謀を巡らし、才ある右大臣を陥れ、無実の罪で失脚させた。そしてその右大臣が、官職・官位を剥奪され、左遷されて来たのがここ宰府である。元右大臣は2年後、失意の内にここ宰府でこの世を去る。そして、その後、恐怖の怨霊伝説が幕を開けることになるのだ。
元右大臣を陥れた、有力公家出身の左大臣をはじめ、その陰謀に絡んだ取り巻き連中、そして、直接は陰謀に関わらなかったものの、陰謀を抑えることができずに傍観しているだけだった、帝家の帝太子や、譲位した元帝が、ことごとく頓死した。
その原因は元右大臣の祟りとされ、その怨霊の猛威に、当時の朝廷は震え上がった。かくしてその祟りと怨霊を鎮めるために社が造営されたのだが、それでも祟りは収まらず、慌てた朝廷は元右大臣に太政大臣を追贈し、慰霊のために造営した社を、帝家一族を祀る天満宮に格上げし、元右大臣の子孫を取り立てて重職を与え、ようやく祟りを納めた。その後も、怨霊の再発を恐れ、帝が宰府天満宮に御幸するなどして、怨霊の慰撫に努めたと言う。
しかし今は、学問の神様の天神様として人気の高い神社で、参拝客も多い。そう言う訳で、午後はゆるりと宰府天満宮に参拝して、紅蓮龍攻略を祈願した。
夕餉はもつ鍋の店に行った。もつ鍋は店ごとに違いはあるが、牛または豚のもつと、ニラ、キャベツ、豆腐、ゴボウ、もやしを具材として、鶏がらスープで煮込むのだが、白味噌仕立てや柚子胡椒仕立てなどもある。ノーマルな醬油仕立てに、白味噌仕立て、柚子胡椒仕立てと、3種類の鍋を5人前ずつ注文し、皆でがっつりと堪能した。
なお、俺はここで柚子胡椒仕立てが大層気に入り、翌日の宰府出発前に、山髙屋宰府支店で柚子胡椒をたっぷり仕入れた。もちろん仕入価格は、山髙屋移動店舗証明書のおかげで原価である。
宿屋に戻ると、今宵はタヅナと同室である。船旅で溜まっていたこともあり、お背中流しからマイドラゴンは暴走気味で、抑えるのにやや苦労してしまった程だ。
タヅナはねっとりじっくり攻めると大いに乱れる。乱れるとドラゴンあしらいが激しくなる。この乱れっぷりが俺の好みにマッチしているので、タヅナのときはついついそう言う攻め方になる。今宵も夜更けまで大いに堪能したのだった。
専務、例のアレを早く開発してくれ。
翌日、朝餉の後にキノベ陸運宰府営業所で北斗号を受け取り、山髙屋宰府支店で柚子胡椒を大量に仕入れて宰府を発った。左右の山の間の平野を、川の流れとともに南南東に進む。この川はこの先でゴチクの河に合流する支流だ。
そのまま馬手側の山の裾野に沿って、進路を南南東から南、そして南南西へと徐々に転じて行くと、さらに広い平野が前面に広がる。ここら一帯はストの農村で、ここで支流はゴチクの河に合流し、平野を南西へ流れて行って最終的には海に注ぐ。
ストの農村は、宰府からヤナガーの町まで行く今日の行程のほぼ中間点である。俺たちは北斗号を停めて昼餉の準備を始めた。火を起こして鍋を掛け、肉や野菜をぶち込んだごった煮で、仕上げは味噌で味を調え、宰府で仕入れた柚子胡椒をたっぷり効かせる。
柚子胡椒で辛みの利いた鍋は非常に旨く、体もポカポカ温まる。春になったとはいえまだ肌寒いので、より一層、鍋の旨さが引き立つ。
昼餉を終えて片付けていると、馬たちが蹄を掻いて警戒の様子を示した。すかさずキョウちゃんズとアキナが見張台に登って式神を飛ばした。しばらくしてアキナが、山から出て来てこちらに近付いて来る熊を発見した。腹を空かせた冬眠明けの熊が、鍋の匂いに釣られて出て来たようだ。
三の島の熊はだいぶ減ってると聞いていたが、こんな人里近くに出て来るとはな。それにしてもかなりでかい。大獣、いや猛獣サイズか?
「アタルは手を出さないで。ホサキ、タヅナ、行くわよ。」サヤ姉から指示が飛ぶ。近距離部隊でやる気らしい。
「うむ、承知した。ウキョウ、バフを頼む。」すぐさまウキョウが皆に各種バフの術を掛けた。
「サキョウぅ、相手にデバフお願いぃ。」サキョウは離れている猛熊に向かってデバフの術を連発した。
猛熊がこちらに向かって突進を開始した。自在の盾を展開したホサキが猛熊の突進を受け止める。と、同時にサヤ姉が二刀流剣舞で襲い掛かった。雷神の太刀と風神の脇差が華麗に舞い、猛熊が切り刻まれている。そしてサヤ姉は、猛熊がぶんぶん振り回していた両腕を切り落とした。
堪らず猛熊は後退ったところを、ホサキの如意の槍が伸びて正鵠突きが喉の急所を突いた。断末魔の咆哮を上げる猛熊。そこへタヅナが偃月の薙刀の旋回切りで、トドメとばかりに首を飛ばした。実に見事な連携である。
俺はすぐに、近距離部隊が倒した猛熊を解体した。今日の目的地のヤナガーの町のギルドで素材買取してもらおう。
ストの農村を流れる支流がゴチクの河に合流したところで、ゴチクの河を渡ると、反対岸はクメルの町だ。
まだ昼過ぎなので、クメルの町を通り過ぎて、ゴチクの河に沿ってさらに南西に進む。ゴチクの河の河口付近が今日の目的地のヤナガーの町である。
午後、俺はキョウちゃんズとアキナと一緒にメイン車両屋上の見張台にいる。キョウちゃんズとアキナは式神を飛ばして警戒しているが、式神を飛ばせない俺は、見張台の中央にある指揮所にいた。
しばらく行くとサキョウから、敵発見の報告が来た。
「アタル兄、11時の方向約1㎞に猪の群れがおるわ。3頭やな。ごっつうでかいで。」
「キラーボアかな?だとしたら肉弾突進は食らいたくないな。北斗号を壊されたら堪らん。北斗号には近付かせないように早目に対処しよう。」
「せやね。」
俺は伝声管で指揮所から御者台に注意を促す。
「11時の方向1㎞にキラーボア3頭。肉弾突進を警戒。北斗号に近付かせないように距離を取ったまま討つ。騎馬攻撃を仕掛けるぞ。
サヤ姉はダーク、サジ姉はヴァイス、ホサキはノアール、タヅナはセールイで騎馬出撃。
北斗号から俺とアキナが遠矢で援護、サキョウとウキョウは支援の術、サジ姉は中距離から麻痺の術と緊急時は回復の術。」
「「「「了解。」」」」「りょ…。」「「はいなぁ。」」
サキョウの各種デバフの術がキラーボア3頭の群れに次々と放たれ、ウキョウの各種バフの術が皆に降り注いだ。
北斗号を停め、御者台と補助席にいたサヤ姉、サジ姉、ホサキ、タヅナが騎乗して出撃した。ホサキを先頭に、両横にサヤ姉とタヅナ、殿にサジ姉の菱形フォーメーションでキラーボアの群れに向かって一直線で進む。
キラーボアが、肉弾突進を仕掛けて来て、騎馬隊にどんどん近付いて来る。が、キラーボアの肉弾突進は、破壊力こそあるものの、直線的な動きのために回避はしやすい。しかもサキョウのデバフの術で動きが緩慢だ。
俺とアキナは、北斗号メイン車両の屋上から、遠矢による遠距離攻撃を開始した。メイン車両の屋上は、平時は見張台、戦時は攻撃台として機能する。
かなり近付いたところで、サジ姉が殿から離脱して単独になり、コースを3時の方向に変えた。ホサキ、タヅナ、サヤ姉は、この順に一直線になってキラーボアに突っ込んで行く。
サジ姉から麻痺の術がキラーボア3頭に連射されると、まっすぐ突っ込んで来た先頭の1頭がもんどりうって転倒し、2頭目、3頭目がそこに突っ込む。次々に転倒して絡まり、慌てふためいている3頭に、近距離部隊が到着した。
見事なタイミングで麻痺の術が決まって転倒したため、もはやホサキの盾は不要、如意の槍による正鵠突きで1頭目を槍玉に上げ、続くタヅナの偃月の薙刀による旋回切りで2頭目の首を飛ばし、最後に華麗に馬上から舞い降りたサヤ姉の雷神の太刀と風神の脇差による二両流剣舞で3頭目を屠った。
もう話になんねぇ。妖獣相手に一方的過ぎやしねぇか?
サヤ姉が口笛を拭くと、ノアールがサヤ姉のもとに戻り、再び馬上の人となったサヤ姉を先頭に、近距離部隊が帰路に着く。そこへ別動隊となっていたサジ姉も合流して、サヤ姉とサジ姉が並走、続いてホサキとタヅナが並走して、騎馬隊は北斗号に帰還した。
その後、帰還した4頭を北斗号に繋げて、キラーボアを屠った場所に移動し、俺がキラーボアの解体して回収した。
夕刻にヤナガーに着いた。
ヤナガーのギルドで猛熊1頭とキラーボア3頭の素材買取を頼むと、キラーボアは討伐クエスト対象だったとかで、クエスト完了認定され、その報奨金も出た。全部まとめて金貨5枚と大銀貨3枚になった。ホクホクである。よっしゃー、これで今夜は、皆でヤナガーの鰻を食いまくってやるぞー。
そのまま山髙屋ヤナガー支店に北斗号を預け、宿屋を取ったらヤナガーの町に夕餉を摂りに繰り出す。夕餉はもちろんヤナガー名物の鰻せいろだ。
俺はウナギが大好物である。テンバなどの東では、ウナギの蒲焼は背開きして蒸してから焼くのだが、西では腹開きで蒸さずに焼く。ヤナガーは三の島だから当然西の焼き方である。
ヤナガーの鰻は西の蒲焼を、せいろに入れてさらに蒸すと言うもので、独特である。西の蒲焼は、蒸さない分、身に歯応えがあるのだが、蒸しの行程がないために、東の蒲焼のようなホクホク感はない。しかしヤナガーでは、せいろで蒸すので西の蒲焼よりも柔らかく、かといって東の蒲焼程ホクホクはしていない。
まあ、結局鰻好きの俺には、どちらもありなんだがな。笑
嫁たちも旨い旨いとたくさん食っていた。ちまちまお上品に小食を気取るより、健康的にガッツリ食う女性の方が、俺は好きだ。
宿屋に戻ると、今日は嫁会議の日だとかで、俺はひとりで寝たのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/9/4
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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