射手の統領

Zu-Y

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射手の統領057 超回復

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射手の統領
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№57 超回復

 朝から体がバキバキだ。体中が筋肉痛なのだが、特に太もも、尻、ふくらはぎは相当ヤバい。
 体を起こすまでひと苦労だ。体を引きずるようにして朝餉に行った。皆と一緒の朝餉がいいに決まってる。

「アタルぅ、随分きつそうねぇ。」
「面目ない。」
「今日は…筋肉の…回復を…優先…。温めて…血行を…よくする…。温泉が…一番…。」
「なるほどな。そうするよ。」
「脱水…症状に…ならない…ように…水分を…しっかり…摂る…。」
「分かった。ありがとう。」

 俺は休むことになったが、筋肉痛が出ていない皆は、タヅナが5人に馬の稽古をして、アキナはキノベのふたりと弓の技の稽古だ。俺は午前中、温泉でゆっくりし、筋肉痛が楽になったら、的場でアキナたちの稽古を見ることにした。

 皆で朝餉を摂りながら聞いてみた。
「昨日の嫁会議の議題は何だったんだ?」
「アタルの相手を輪番制にすることにしたのよ。」
「今まで、何人かで行ってたからな。アタルも、一度に何人も相手にするのは大変だろうし、ひとりずつの輪番制にしたのだ。」
 なるほどー。それはいいな。確かに皆とイチャイチャするのもいいが、1対1でじっくり、ねっとりもいい♪

「順番は?」
「セプトに加わった順にしたわ。初日と2日目は私かサジ、3日目はホサキ、4日目はキョウちゃんズ、5日目と6日目はアキナかタヅナ、7日目は嫁会議よ。」
「サキョウとウキョウはふたり一緒?」
「ひとりずつやと残った方が寂しなるねん。」
「うちらは一緒の方がええんよ。」
「なるほどね。で、今夜は?」
「皆さんが気を遣ってくれて、ひとりだけ弓の稽古で離れている私からになりました。」アキナがモジモジして答える。かわいい。

 サジ姉のアドバイスを受けて、俺は、午前中は温泉に浸かることにした。久しぶりに赤湯に入る。血行を良くするには、保温効果のある含鉄食塩泉の赤湯だ。基本、俺はにごり湯が好きだ。いかにも温泉という感じがする。
 それと強烈な硫黄臭がいい。赤湯は鉄っぽい匂いがするものの、匂いが弱いのが残念だ。だから普段はついつい白湯になるが、赤湯もにごり湯なので、泉質の中では好きな方なのだ。
 脱水症状はよくないそうなので、入浴前にたっぷり水を飲んだ。ほんとは、湯に浸かって軽く呑めると最高なのだが、サジ姉によると、酒は利尿作用があるので脱水症状を引き起こしやすくするらしい。それからのぼせやすくなる。
 酒呑んでの風呂は、前に懲りてるしな。サヤ姉とサジ姉との初陣を、のぼせて先送りにしてしまった苦い思い出が頭をよぎった。苦笑

 秋が深まって来ているので、昼とは言え、露天は湯から出ると涼しい。湯に浸かって火照ると出て、外で冷えるとまた湯に浸かる。なんとも贅沢なひとときだ。このまま1日が過ぎてもいいな。ときどき忘れずに水も飲む。筋肉痛は少しずつ引いて来た。

 湯に浸かりながら、今後の段取りを考える。
 次は、トリトの大砂丘の橙土龍攻略だ。馬車の納入があるまでは、馬の技の習得に励もう。実際、一番未熟なのは俺だから、俺次第なんだよな。サヤ姉とサジ姉とホサキが、騎馬の技が得意なら、御者の技も早めに訓練してもらうか。
 それに、タヅナとサキョウとウキョウが、馬と念話できるというのは驚いたな。ライとウズは、3人が馬と念話できる理由として、タヅナは天性の素質、キョウちゃんズは気力量が抜群に多いせいだと教えてくれた。
 天性の素質はいいとして、気力量が抜群に多いと念話ができるというしくみがよく分からん。そのうちライとウズに聞いてみるか。

 さて、橙土龍攻略の後はどうするかな。
 続けて他の七神龍攻略に向かうか、いったん拠点に戻るか。まぁ、戻って装備を整えるのが妥当だろう。ライもウズも寝込みを襲ったから攻略できたが、起きていたら苦戦していたに違いない。苦戦になれば当然装備は痛む。橙土龍が眠りに就いているとは限らないからな。

 馬車が完成したらまず西都に行く。西都から北西に上がって北の海岸線沿いをトリトの大砂丘まで進み、橙土龍の攻略後は南下して山越え、南の海岸線に出てから東に進めば、オミョシ分家のあるアーカを通る。
 アーカで分家の権座主にキョウちゃんズの仔細を話して承諾を得、もし話がまとまるなら同盟を結んで商都に戻る。決裂するなら、キョウちゃんズを泣かせた分、二発ぶん殴ってやる。
 商都で装備を整えて、その後は海路で南の島か、西の島へ出張るというのもいいだろう。

 昼餉はいつも通りみんなで摂った。
 俺は筋肉痛がだいぶ引いたので午後から馬の稽古に加わるつもりでいたのだが、サジ姉から、今日1日は回復に努めないといけないと言われた。軽い運動までならOKというので、午後はアキナの弓の稽古に付き合うことにした。

 昼餉を終えてアキナと一緒の的場に行くと、二の叔父貴がいた。二の叔父貴が興奮気味に話し掛けて来た。
「アタルよ、アキナは筋がいい。天性の才がある。」
「二の叔父貴どのがそこまで言われるとは珍しいな。アキナ、引いて見せてくれ。」

 アキナは弓構えると、呼吸を整えて打ち起こした。いいではないか。さらに驚いたことに、大三への移行で、親指を1/4ほど中指に沿って反時計回りに上げ、手の内をしっかり決めたのだ。おお!いい手の内だ。しかし引き分けで崩れやしないか?
 崩れない。引き分けながら、人差指の先を上げたので、連動して手の内が上下に締まる。初心者とは思えない程、親指がまっすぐに伸びており、これだと角見がしっかり効くだろう。
 中指、薬指、小指の爪先はしっかり揃い、掌底にはウズラの卵1個ほどの隙間があって、握卵の形ができている。馬手も手繰ることなく摘まむことなく、ひねりを効かせていい感じで収まった。馬手肘の位置も申し分ない。確かに二の叔父貴が一目置いただけのことはあるな。
 三重十文字を崩さずに会に入り、会ではしっかり伸びている。あとは離れだ。そして、ポンという軽い感じで離れが出て、馬手は矢筋にきれいに飛んだ。矢は的に入った。的中である。
 なんと!非常にいいではないか。

「アキナ、素晴らしい。その調子で稽古してくれ。」
「はい。」満面の笑みを浮かべるアキナ。
「アタル、言った通りであろう?」
「二の叔父貴どの、よくここまで導いてくれた。」
「アキナに天性の才があるのだ。」

 キノベから来たギャロとロップも稽古していたが、こちらは初心者にありがちな、弓手の親指の握り込みや、引分けでの弓手肩の詰まり、会で馬手肘が前に出る、離れで緩むなど、諸々の癖が出まくっている。まぁ、これが普通の初心者だがな。

 俺は、サジ姉に言われた通り、弓の稽古は軽くしておいて、アキナをマンツーマンで指導した。何かについてアドバイスをすると、アキナはすぐにそれをやって見せる。結局の所、アキナは非常に器用なのだ。
 これだと一定のレベルまではすぐに行くだろう。的中もコンスタントに羽分けを超えていくはずだ。

 午後の稽古が終わって、馬場の稽古の様子を見に行くと誰もいない。外乗に行ったようだ。
 みんなの帰りを待つことにして、余った時間で、アキナに東都総本店の質の悪い受付ふたりの話をした。そう、古都の金剛鏑を手に入れに行く直前の一件だ。社長へのアポなし面会を独断で断り、サンジョーの指示だと嘘をついたあのふたりの話である。
「とまぁ、こんな感じでな。あの山髙屋社長の下でもこういう輩が出てくるのだから、俺も家来どもには目を配らんといかんとつくづく思い知ったよ。」
「アタル、このお話は一昨日帰館したときに、すぐ聞かせて欲しかったです。」
「あ、ごめん。」
「この件をパパに伝えなくてはいけませんので、夕餉までの間に総本店に行きましょう。アタルも一緒に来てください。」
「え?まじで?」

 俺たちは、シャワーで汗を流すとすぐ流邏石で東都に飛ぶことにしたが、俺は東都総本店の流邏石は持っていない。アキナは総本店に飛び、俺は東都ギルドから総本店に急いで向かうことになった。

 総本店に着くと、受付にはあの質の悪いふたりを含め4人もいた。質の悪いふたりは、俺に気付くとすぐに立ち上がって深々と礼をした。
「「先日は大変失礼いたしました。」」
 ほう、ふたりは作業着か。ということは受付からは外されたな。ならば自分から申し出たということか。だとすると、まだ見込みはあるかもしれんな。
「お嬢からアタル様が来たらすぐご案内するようにと申し付かっております。」
 ふたりとも顔が青ざめている。俺はふたりに頷き、ふたりの案内に従ってついて行った。

 社長室に着くと、アキナ、山髙屋社長、ハンジョーがいた。
「アタル様、先日はお訪ね頂いたにも拘わらず、社員が不届きな対応を致しまして誠に申し訳ありません。」社長が立って深々と頭を下げた。
「「申し訳ありませんでした。」」ふたりが続いて深々と頭を下げる。

「舅どの、お手をお上げください。それと、様はおやめください。他の舅どのたちは、アタルどのと呼びますので、同様にお願いします。」
「アタル様、この者たちの直属の上司は私です。躾が行き届かず申し訳ありませんでした。」ハンジョーも深々と頭を下げる。
「ハンジョーも、様はやめてくれ。俺達の仲だろう。」
「はい。アタル。実はその日のうちに、このふたりから申し出がありまして、社長にもすぐに報告を入れました。今は受付から外し、トイレ掃除をさせています。」

「トイレ掃除は汚れ仕事。人が敬遠する分、心がきれいになると言うから、傲慢になった心を改める目的での、修行のやり直しにはちょうどいいな。さすがハンジョーだ。」
「修行のやり直しではありません。この者たちは、総本店の顔であったにも拘らず、山髙屋の看板に泥を塗りました。受付には向きません。本人たちが辞めるまでずっとこのままです。」
 ふたりは項垂れている。なるほど、そういうことか。最後のチャンスということだな。ハンジョーの台詞を鵜呑みにして辞めるようならそれまでの人材。黙々とトイレ掃除に精を出すなら、いつかは日の目を見るのだろう。
「そうか。俺がとやかく言うことではないな。」
「君たちは下がって業務に戻りなさい。」ハンジョーが指示して、元受付のふたりが社長室から出て行った。

「いやはや、お恥ずかしい限りです。」社長がまた恐縮している。
「舅どのや、西本店の店長があれだけ腰を低く対応して、範を示していると言うのに、ああいう不心得者も出る。統領になったとき、家来どもには目を配らねばならぬと、思い知りました。」
「本来、社長に不意の来客があったら、別室でお待ち頂いて、報告するのが決まりです。飛び込みの方が思わぬ商談をお持ちになる場合もありますので、社長がお出になる前に、いったん私たち番頭がお話を承り、社長に取り次ぐかを決めます。お客様を受付で門前払いするなど、あってはならないことです。」ハンジョーは今回の件、かなり憤慨しているな。

「ところで今回の件、俺もアキナには叱られましてね。」
「アタル、叱ってなんかいませんよ。話を盛らないでください。」アキナが反論する。
「ほう。盛るなということは、多少はご意見をしたのですかな?」社長が面白そうに目を輝かせ、続きを促して来た。
「短期で古都に行く前にここに寄ったときに今回の件がありましてね。アキナには今日の夕刻に話したのですが、一昨日帰って来たときにすぐ話して欲しかったと言われましたよ。その後のアキナの行動は、この通り、非常に迅速でした。」
「それはそれは。で、アタルどのは、どうお考えですか?」

「俺が迂闊でしたね。今回はあのふたりがその日のうちに申し出ていたからよかったですが、隠していればいまだに受付をしていたことになります。その場合、アキナの言うように、俺が一昨日報告していれば、それだけ早く対応できました。アキナの迅速かつ的確な判断力と行動力。実に素晴らしい。改めて惚れ直したところです。」
「いきなり何を言い出すんですか。」赤くなるアキナに、皆から笑いが漏れる。
「アタル、相変わらずですねぇ。」ハンジョーが半ば呆れている。

「ところでアタルどの、提携に関して、正規のお使者を立てて頂きましてありがとうございました。お使者どのからもご報告があると思いますが、話は滞りなくまとまりました。ひとつご提案をさせて頂きましたので、ご検討ください。」
「舅どの、承知しました。ではこれで。」
 俺とアキナはユノベ本拠に帰館した。

 帰還するとすぐ夕餉だ。
「アタル兄、どこ行っとったの?」
「おらんから、お風呂に一緒に入れなかったやないの。」
「ああ、すまんすまん。ちょっと用事があってアキナと一緒に東都総本店に行って来たんだよ。」俺は皆にこの間の事情を話した。
「それはアキナの言う通りね。」
「アタル…たまに…大事な…連絡が…抜ける…。」
「ごめんなさい。」

 夕餉の後は、アキナと白湯に行ったのだが、風呂好きのキョウちゃんズがついて来た。キョウちゃんズとの風呂で日課の頂マッサージをこなし、キョウちゃんズの誘いでアキナにも頂マッサージをして風呂から上がった。
 入浴中、マイサンはマイドラゴンと化していたが、これは多分、と言うか絶対にアキナが原因である。キョウちゃんズではない!俺はロリコンではない!
 そう言えば、今夜から嫁の輪番制が始まる。楽しみだ♪

 今夜の担当はアキナなので、風呂上りにそのままふたりで部屋に行った。
 アキナのたどたどしい手付きでのマイドラゴンあしらいがなんとも新鮮だ。その後、攻守交代して、色白のアキナの紅色の頂から攻略を開始し…。
 俺は、指と舌でアキナを痙攣させた。そう、妊娠のリスクを回避するために、本番はなしなのである。

 あー、俺がアイディアを出したゴムの避妊具が、早く開発されないかな。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/5/1

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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