射手の統領

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射手の統領017 豪商山髙屋

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射手の統領
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№17 豪商山髙屋

 ホサキを連れてユノベ館に行ったとき、流邏石にユノベ館を登録しといたので、今夜はユノベ館に帰って温泉に浸かることにした。
 俺はユノベ館を登録した流邏石を、サヤ姉とサジ姉とホサキに渡して、4人でユノベ館に飛んだ。

 俺は、ホサキに、湯殿の白湯と赤湯、そして垢離場の冷泉について話した。ホサキは温泉に興味津々だ。
 俺はお気に入りの白湯に向かったのだが、3人ともついて来る。
「え?お預けなのでは?」
「混浴では妊娠しないわ。」とにこやかな返事が返って来た!
 ひゃっほーい!むっちゃ嬉しい。けど、生殺しプレイですかー?

 白濁硫黄泉のせいで、頂が見えそうで見えない。くそう。当然マイサンはマイドラゴンに変身中である。くー、妄想は、モロ見えよりやばいぞ。
 そして、お預けよりも生殺しの方がきついかもしれない。いや、きつい。絶対に!

 白湯を堪能しつつ、浴場で欲情を掻き立てられてしまった俺は、白湯を出て部屋に戻った。

 サヤ姉とサジ姉が来ると、ユノベでは、いつも別部屋を用意している。しかし、大抵はどちらかの部屋でふたりは一緒に過ごす。今夜からホサキの部屋も別に用意したが、今夜はホサキも誘われたようだ。3人で朝まで仲よく過ごすのか。
 俺も混ざりたいが、生殺しはきつい。今夜は我慢して、長々し夜をひとりかも寝む。の心境だ。もう寝よう。

 翌日になった。自宅と言うこともあり、昨夜はぐっすり眠れた。
 今夜は商隊と顔合わせだ。
 午前中はユノベ館でのんびりと過ごして、久々に赤湯、冷泉、白湯と湯巡りをした。
 そして懸案の、伯母御たちへの手紙を書く。

~~手紙の文面~~

前略 (動または静)の伯母御どの

 先日ご挨拶に伺いましたが入れ違いでお留守のとのことで、また昨日、ユノベに帰りましたが、またしても入れ違いでお会いできず、残念至極です。
 まず、武者修行の件がお気に召さないとのことですが、その理由は孫を抱くのが遅れるとか?このアタル、(サヤ姫またはサジ姫)と並んでも、姉妹にしか見えない、うら若き伯母御どのを、早々に御婆々様にすることなど到底できません。
 20代後半にしか見えない伯母御が御婆々様とは、天の理に反することです。
 また、タテベとの婚姻同盟は、ユノベ、トノベ、ヤクシの強固な3家同盟に、タテベを加えて、さらに強い4家同盟とすることですから、政略として受け入れました。決して、わが正妻ふたりをないがしろにするものではありませんし、すでにサヤ姫とサジ姫は、タテベのホサキ姫を妹のごとく受け入れております。どうか、後押しをよろしくお願いします。
 この手紙が届く頃は、われら4人、西へ旅立っておりますが、七神龍を眷属とする武者修行の土産話を楽しみにお待ち下さい。

草々
アタル

~~アタル目線~~

 こんなもんでいいかな。念のため、サヤ姉とサジ姉に見てもらったが、ふたりとも腹を抱えて大爆笑していた。
 最近、目尻のしわを気にし出している伯母御たちに、娘と姉妹に見えるとか、20代後半にしか見えないとか、よくも抜け抜けと書いたものだ。見え透いたお世辞と分かっていても、否定したら自分の容色の衰えを認めることになるから、負けず嫌いの伯母御たちは、苦笑いして受け入れるしかないだろう。と言って笑い転げていた。
 伯母御たちはそうだったのか。

 伯母御たちよ、年の離れた姉妹なら何とか通用すると思うぞ。多分だけど。それから30代前半なら信じてもらえると思うぞ。多分だけど。あと、目尻のしわには俺は気付いてなかったぞ。これはほんとだ。頑張れ、伯母御たち。

 ふたりの伯母御に手紙を出し、ユノベで昼餉を摂ってから、流邏石で東都へ飛んで、先日の宿屋に向かった。
「4人だが部屋はあるか?」
「シングルとツインは満室です。デラックスダブルも1部屋しかないですね。4人部屋ならありますよ。」
 フロントは先日の女の子だ。ニヤついている。先日の、俺vsサヤ姉&サジ姉のやり取りを思い出しているのだろう。くそっ。
 振り向くと3人とも頷いている。
「じゃぁ4人部屋で。」
「大銀貨1枚と銀貨8枚です。」
 俺は大銀貨2枚を支払い、銀貨2枚をお釣りにもらった。

 宿屋に荷物を置いて、4人で東都をぶらつく。大通りの大店街を歩いているととりわけ大きな大店が目に入った。山髙屋だ。

 山髙屋は、もともとは魚屋だったそうだが、当代になってから様々な食品に商いを広げ、みるみる規模を拡大し、米相場で飛躍的に身代を伸ばしたそうだ。
 多くの廻船を所有し、和の国各地から廻船で様々な産物を運んで来るようになって、さらに商いの幅が手広くなった。その廻船は今や何十隻にもなり、和の国の海運の中心的存在になっている。

 もともと扱っていた食品に加え、衣類などの生活必需品や、木材などの建材、贅沢品と言われる嗜好品まで、およそこの店で買えないものはないと言う。東都の衣食住と経済を支えているのだ。
 和の国中のほとんどの町に支店があるが、商都にも大きな店舗があり、東都店を総本店、商都店を西本店と言うそうだ。

 特に買い物はないが、とても活気がある店なので何となく見て回っていると、ひときわ威勢のいい声が聞こえて来た。
 俺たちとそう年の変わらない女の子が、両手を腰に仁王立ちして、店員たちにあれこれ指示を出している。出荷する品物の確認かな?
 店員たちも、女の子を「お嬢」と呼んで慕っているようだ。

「お客様、どうされました?」不意に声を掛けられて振り向くと、優しそうな小父さんがいた。
「あの女の子の仕切り具合が見事で見惚れてたんだ。」
「ほう。お客様のタイプでございますか?」
「そう言うんじゃないよ。キビキビとした仕事ぶりが眼を引くし、人の使い方がとても上手い。気風もいいし、俺と同じくらいなのに、責任者みたいだから凄いなって。」
「それはそれは。お褒めを頂いてうれしゅうございますよ。実は私の娘なんです。」
「え?小父さんの娘さんなの?親子で一緒に働いてるとは羨ましいね。」
「ほう、羨ましいと?失礼ですが、お客様のお年頃では親は煙たいものではありませんか?」
「いや、俺は親父を尊敬してるよ。両親とももういないけどね。」
「これは大変失礼いたしました。」小父さんは恐縮して深々と頭を下げた。
「別にいいよ。小父さんは俺の事情を知ってた訳じゃないからね。」

 そこへ声が掛かった。
「社長ー、こんなところにいたんですかー?探しましたよ。」
「これこれ、お客様の前ですよ。」
「あ、すみません。」
「小父さん、社長さんなんだ。その割には威張ってないね。」
「私は威張るのは好きじゃないんですよ。すみません、呼ばれたのでこれで失礼します。」

「ふーん、ああ言う社長さんもいるのね。」
「感じ…よかった…。凄く…。」
 と言うことは、あの女の子は社長令嬢なのだな。あ、それでお嬢と呼ばれていたのか。
 まぁ、所詮、俺たちとは住む世界が違うがな。

 そろそろ集合時間だ。ギルドへ戻ろう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/1/30

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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