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射手の統領007 新たな試練の内容
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射手の統領
Zu-Y
№7 新たな試練の内容
俺たち3人は霊峰の麓の樹海に来ている。たった今、雷撃矢によって、一発で大猪を仕留めたところだ。
ライを眷属にしたことによる大きな収穫は、通常矢をライの金剛鏑(ライ鏑)に触れさせるだけで、通常矢による雷撃の属性攻撃が可能になったことだ。
これで俺は、通常の弓矢による遠距離攻撃に加えて、弓矢による雷撃の属性攻撃が可能になった。雷撃だけなら、属性攻撃術に特化した陰陽師の陽士に匹敵する攻撃力を得たと言えるだろう。
しかしそれよりもさらに貴重なのは、ライの神龍としての知識だ。もはやライは眷属と言うよりは、俺にとっては、尊敬する師匠と言う位置付けになっている。
親父の仇が師匠と言うのは、冷静に考えると変かもしれないが、それだけライが惜しみなく与えてくれる知識が、俺にとっては眼から鱗なのだ。
もともとライは、尊敬する親父を倒したと言うことで、一目置いていた存在だ。眷属であり、師であり、仲間だ。
親しげにライ鏑の中のライと話す俺を見て、サジ姉もサヤ姉も、
「ライに…わだかまりを…持って…ない…。」
「アタルは柔軟よね。そう言うところは素直に凄いと思うわ。」
と、感心していた。
この国は和の国と言い、海洋に浮かぶ島国で、大きな島は4島で大四島と呼ぶ。
俺たちがいるのは、大四島で最大の和の島で、弓なりの形をしているため、弓の島とも言う。大四島以外の小さい島は無数にある。
和の国には帝都が2つあり、東都と西都と言う。
東都と西都の間が中和、
東都からは北に国土が伸びており東北和、
西都からはさらに西に国土が伸びており西和、
と呼ぶ。
東北和のさらに北には2番目に大きい北の島=二の島、
西和のさらに西に3番目に大きい西の島=三の島、
西和の南に大四島で最小の南の島=四の島、
がある。
ライによると、ライのような神龍は7体いて七神龍と言い、この国の各地に割拠している。それぞれがライに匹敵するすさまじい力を有していると言う。
七神龍とは、
中和の東で東都の近くのフジの霊峰に黄金龍のライ、
中和の西で西都の近くのビワの聖湖に蒼碧龍、
東北和の中央北部のニアの大森林に翠樹龍、
西和中央北岸のトリトの大砂丘に橙土龍、
北の島のシカオの大雪原に藍凍龍、
西の島のアゾの活火山に紅蓮龍、
そして南の島のズリの断崖岬に紫嵐龍、
である。
和の国の象徴である帝は、御代替わりのたびに東都と西都に住み替える。
今上の帝は東都におわす。よってわれらユノベも、トノベもヤクシも、またその他の一党もすべては、東都近くに本拠を構えている。
帝がご譲位されれば、次の帝は西都におわすことになるので、われらも本拠を西都近くに遷す。今は東都が本拠なので、現在は副拠となっている西の本拠には、代官を置いている。
ユノベの館に戻り、湯殿で白湯に浸かる。湯殿には白湯と赤湯があり、俺は白湯が好みだ。白湯の中で考えを整理すると、新たな成人の試練がだんだんと形になって来た。
それは、和の国を巡って、残りの神龍6体もすべて眷属にすることだ。
俺はライを眷属にしたおかげで、弓矢による雷撃が可能となった。残りの神龍を眷属にするたびに新たな属性攻撃を得られる。弓矢による物理的な攻撃に付加する属性攻撃の種類が増えれば、属性攻撃の陰陽士や陽士を凌駕することができる。
弓矢の属性攻撃がオミョシの陽の術に勝るのは、属性攻撃に耐性がある相手でも、弓矢による物理的ダメージだは与えられるからだ。陽の術は属性攻撃への耐性がある相手には効かない。
優秀な陰陽士でも使える陽の術はせいぜい3属性程度であるが、俺は神龍を眷属にするたびに属性が増える。最終的にはあらゆる属性攻撃が可能となるのだ。
しかしこの試練は、とにかく時間が掛かる。達成までに何年掛かるか分からない。つまり、統領を継ぐのがいつになるのか分からない。叔父貴たちが賛成するはずがない。
統領を継いでからだと、一党を統べる責任が生じるから、和の国を自由気儘に巡ることはほぼ不可能となろう。
封龍矢は一手(2本)でいいが、金剛鏑は1つをライに使ったのでもう1つしか残ってない。つまり金剛鏑の入手を、並行して行わなくてはならない。流邏矢も一手しかないが、可能ならさらに欲しい。
サヤ姉とサジ姉はどうするだろう。戦力的にもふたりには一緒に来て欲しい。しかし成人の試練なら、俺ひとりでこなすべきだろう。
そもそも、ライを眷属にしたのに、ふたりの力を借りてしまったのが、自分としては納得できず、再試練を受けたいと言ったのだ。さてどうしたものか?
これ以上考えてもいい考えが浮かばないし、いい加減、白湯でのぼせちまう。もう、温泉から上がろう。
湯殿の入り口で、サヤ姉とサジ姉とばったり会った。ふたりは赤湯から出て来たとこだった。ふたりとも長い髪をアップでまとめていて、うなじが妙にそそる。
「あら、アタルも今出たとこ?アタルはたいてい白湯よね。」
「あぁ。いかにも温泉って匂いが好きなんだよ。」
「残念…だったね…。赤湯に…してたら…私たちと…混浴…。」
「サジ姉、俺が先に入ってたら、入って来ないだろ?俺が後から入ったら、俺はふたりにボコられるだろ?」
「うふふ…今は…ダメ…。」将来的にはいいんかい?あ、娶ったらありか。婚約でもいいかな?
「いいわよ。婚約してからなら。」
「えっ?えー?」
「やっぱり、婚約したらいいかな?とか考えてたわね。」
「考えてる…こと…すぐ…分かる…。単純…。」
「敵わんなー。」
勝ち誇るふたり。小振りな双丘が上を向いている。
「ところでさ。成人の試練の仕切り直しのことなんだけど…。」
俺は和の国を巡り、ライ以外の残りの神龍6体を眷属にしたいこと、でも叔父貴たちは許してくれないだろうこと、ふたりとの婚儀がいつになるか分からなくなること、などなど懸念事項を告げた。
「それは成人の試練にしては壮大過ぎるわね。次期統領就任に向けての武者修行ってことでいいんじゃないかしら?ね?サジ。」
こくり。
「試練は…叔父様…たちの…顔を…立てて…樹海の…獣…10体…。サヤ…?」
「そうね。そして次期統領就任のための武者修行に出るってことにしたら?ね?サジ。」
こくり。
「サヤ…そしたら…私たちも…一緒に…行ける…。」
「そうね。それに流邏矢でちょくちょくユノベに帰れば、あまり文句も出ないでしょ?ね?サジ。」
こくり。
「それだ!」
俺は思わずふたりを抱き締めた。
「「ふぇっ」」
「頭いいなー、ふたりとも。俺、さんざん悩んでも答えが出なかったんだけどさ。あっさり解決だな。
何より、ふたりが一緒に来てくれることが嬉しいよ。戦力的にも大幅アップだ。」
ハグを解くと、真っ赤になってるふたり。かわいい。
翌日、介添のふたりを連れて再び樹海へ。前日と合わせて、雷撃矢で瞬殺した獣は、大猪3頭、大狼2頭、大熊2頭、大鹿5頭の計12頭。弓矢による属性攻撃の威力を改めて思い知った。
ユノベの館に帰還して叔父貴たちに報告。
「叔父貴どのたち、サヤ姉とサジ姉を介添に樹海の獣12頭を狩って来た。ご検分あれ。」
「なんと。2日でか?しかも大獣ばかりではないか!」
「見事じゃ。天晴ぞ、アタル。」
「これで次期統領に文句はあるまい。ふたりとも、介添ご苦労であった。」
「叔父貴どのたち、折り入って頼みがあるのだが。」
「なんだ?試練での手柄に免じて、大抵のことは聞くぞ。」
「されば、願いは2つある。まずは大熊1頭をライの食糧として賜りたい。ライから受けた雷の力を纏いし矢で、此度の獲物12頭すべてを瞬殺だ。ライの手柄でもある。」
「よかろう。」
「2つ目は、ライと同等の力を持つ神龍があと6体、和の国に割拠している。統領就任のための武者修行を兼ねて、そのすべてをわが眷属とし、あらゆる属性攻撃を手に入れたい。」
「なんと。しかし、成人の試練を終えたら、統領就任と婚約発表の段取りなのだぞ。」
「統領に就任したら、おいそれとは出歩けぬ。統領内定で如何か? また、統領内定と合わせて、サヤ姉とサジ姉のふたりとの婚約を発表する。
それと、武者修行の間は、叔父貴どのたちに今まで通りの統領代理を頼みたい。」
「しかしな、婚約発表と同時に婚約者をほったらかすのはいかがなものか。トノベやヤクシへの手前もあるのだぞ。」
「ふたりは連れて行く。それならトノベもヤクシも文句はあるまい。それに、ふたりとも、戦力として大いに期待している。」
「しかしなぁ…。」
「叔父貴どのたち、よくよく考えよ。神龍による属性獲得は弓矢の戦闘力を飛躍的に上げ、属性攻撃を占有していたオミョシを凌ぐ力を身に付けるのだ。何を迷うことがある?」
「「「うーむ。」」」
「われら3人のパーティは、遠距離攻撃の俺、近距離攻撃のサヤ姉、回復のサジ姉とバランスはかなりよい。
適当な人材がいれば、防御役と支援役を加えてもよい。さすればパーティは盤石となる。
さらには流邏矢でちょくちょく帰還し、近況報告もしようぞ。」
「しかしなぁ。姉貴たちに何と言えばよいか。」
「何を言うか。嫁いだ伯母御どのたちに、ユノベの方針に対して、とやかく言わせてよいはずがなかろう!
叔父貴どのたち、シャキッとせよ。そんな弱腰では、亡き親父どのが嘆こうぞ。」
「それもそうだの。アタルの言う通りぞ。確かにわれらは姉貴たちの顔色を気にし過ぎていたかもしれん。」
「それにな、俺には、サヤ姉とサジ姉が付いているのだ。そもそもこのアイディアの出どころはふたりだからな。」
「なるほど。姉貴たちが文句を言って来たら、アタルを焚き付けたのは、サヤとサジだと言えばよいのだな。」
「ククク…姉貴たちの唖然とする顔が目に浮かぶわ。」
「いい気味じゃ。よし、アタル、武者修行を認めようぞ。」
「サヤもサジもアタルをよろしく頼むぞ。」
「いや、俺がふたりを守るんだよ。」
「アタル、最後のセリフは言わない方がカッコよかったわよ。」
「アタル…詰めが…甘い…。」
「…ごめんなさい。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
Zu-Y
№7 新たな試練の内容
俺たち3人は霊峰の麓の樹海に来ている。たった今、雷撃矢によって、一発で大猪を仕留めたところだ。
ライを眷属にしたことによる大きな収穫は、通常矢をライの金剛鏑(ライ鏑)に触れさせるだけで、通常矢による雷撃の属性攻撃が可能になったことだ。
これで俺は、通常の弓矢による遠距離攻撃に加えて、弓矢による雷撃の属性攻撃が可能になった。雷撃だけなら、属性攻撃術に特化した陰陽師の陽士に匹敵する攻撃力を得たと言えるだろう。
しかしそれよりもさらに貴重なのは、ライの神龍としての知識だ。もはやライは眷属と言うよりは、俺にとっては、尊敬する師匠と言う位置付けになっている。
親父の仇が師匠と言うのは、冷静に考えると変かもしれないが、それだけライが惜しみなく与えてくれる知識が、俺にとっては眼から鱗なのだ。
もともとライは、尊敬する親父を倒したと言うことで、一目置いていた存在だ。眷属であり、師であり、仲間だ。
親しげにライ鏑の中のライと話す俺を見て、サジ姉もサヤ姉も、
「ライに…わだかまりを…持って…ない…。」
「アタルは柔軟よね。そう言うところは素直に凄いと思うわ。」
と、感心していた。
この国は和の国と言い、海洋に浮かぶ島国で、大きな島は4島で大四島と呼ぶ。
俺たちがいるのは、大四島で最大の和の島で、弓なりの形をしているため、弓の島とも言う。大四島以外の小さい島は無数にある。
和の国には帝都が2つあり、東都と西都と言う。
東都と西都の間が中和、
東都からは北に国土が伸びており東北和、
西都からはさらに西に国土が伸びており西和、
と呼ぶ。
東北和のさらに北には2番目に大きい北の島=二の島、
西和のさらに西に3番目に大きい西の島=三の島、
西和の南に大四島で最小の南の島=四の島、
がある。
ライによると、ライのような神龍は7体いて七神龍と言い、この国の各地に割拠している。それぞれがライに匹敵するすさまじい力を有していると言う。
七神龍とは、
中和の東で東都の近くのフジの霊峰に黄金龍のライ、
中和の西で西都の近くのビワの聖湖に蒼碧龍、
東北和の中央北部のニアの大森林に翠樹龍、
西和中央北岸のトリトの大砂丘に橙土龍、
北の島のシカオの大雪原に藍凍龍、
西の島のアゾの活火山に紅蓮龍、
そして南の島のズリの断崖岬に紫嵐龍、
である。
和の国の象徴である帝は、御代替わりのたびに東都と西都に住み替える。
今上の帝は東都におわす。よってわれらユノベも、トノベもヤクシも、またその他の一党もすべては、東都近くに本拠を構えている。
帝がご譲位されれば、次の帝は西都におわすことになるので、われらも本拠を西都近くに遷す。今は東都が本拠なので、現在は副拠となっている西の本拠には、代官を置いている。
ユノベの館に戻り、湯殿で白湯に浸かる。湯殿には白湯と赤湯があり、俺は白湯が好みだ。白湯の中で考えを整理すると、新たな成人の試練がだんだんと形になって来た。
それは、和の国を巡って、残りの神龍6体もすべて眷属にすることだ。
俺はライを眷属にしたおかげで、弓矢による雷撃が可能となった。残りの神龍を眷属にするたびに新たな属性攻撃を得られる。弓矢による物理的な攻撃に付加する属性攻撃の種類が増えれば、属性攻撃の陰陽士や陽士を凌駕することができる。
弓矢の属性攻撃がオミョシの陽の術に勝るのは、属性攻撃に耐性がある相手でも、弓矢による物理的ダメージだは与えられるからだ。陽の術は属性攻撃への耐性がある相手には効かない。
優秀な陰陽士でも使える陽の術はせいぜい3属性程度であるが、俺は神龍を眷属にするたびに属性が増える。最終的にはあらゆる属性攻撃が可能となるのだ。
しかしこの試練は、とにかく時間が掛かる。達成までに何年掛かるか分からない。つまり、統領を継ぐのがいつになるのか分からない。叔父貴たちが賛成するはずがない。
統領を継いでからだと、一党を統べる責任が生じるから、和の国を自由気儘に巡ることはほぼ不可能となろう。
封龍矢は一手(2本)でいいが、金剛鏑は1つをライに使ったのでもう1つしか残ってない。つまり金剛鏑の入手を、並行して行わなくてはならない。流邏矢も一手しかないが、可能ならさらに欲しい。
サヤ姉とサジ姉はどうするだろう。戦力的にもふたりには一緒に来て欲しい。しかし成人の試練なら、俺ひとりでこなすべきだろう。
そもそも、ライを眷属にしたのに、ふたりの力を借りてしまったのが、自分としては納得できず、再試練を受けたいと言ったのだ。さてどうしたものか?
これ以上考えてもいい考えが浮かばないし、いい加減、白湯でのぼせちまう。もう、温泉から上がろう。
湯殿の入り口で、サヤ姉とサジ姉とばったり会った。ふたりは赤湯から出て来たとこだった。ふたりとも長い髪をアップでまとめていて、うなじが妙にそそる。
「あら、アタルも今出たとこ?アタルはたいてい白湯よね。」
「あぁ。いかにも温泉って匂いが好きなんだよ。」
「残念…だったね…。赤湯に…してたら…私たちと…混浴…。」
「サジ姉、俺が先に入ってたら、入って来ないだろ?俺が後から入ったら、俺はふたりにボコられるだろ?」
「うふふ…今は…ダメ…。」将来的にはいいんかい?あ、娶ったらありか。婚約でもいいかな?
「いいわよ。婚約してからなら。」
「えっ?えー?」
「やっぱり、婚約したらいいかな?とか考えてたわね。」
「考えてる…こと…すぐ…分かる…。単純…。」
「敵わんなー。」
勝ち誇るふたり。小振りな双丘が上を向いている。
「ところでさ。成人の試練の仕切り直しのことなんだけど…。」
俺は和の国を巡り、ライ以外の残りの神龍6体を眷属にしたいこと、でも叔父貴たちは許してくれないだろうこと、ふたりとの婚儀がいつになるか分からなくなること、などなど懸念事項を告げた。
「それは成人の試練にしては壮大過ぎるわね。次期統領就任に向けての武者修行ってことでいいんじゃないかしら?ね?サジ。」
こくり。
「試練は…叔父様…たちの…顔を…立てて…樹海の…獣…10体…。サヤ…?」
「そうね。そして次期統領就任のための武者修行に出るってことにしたら?ね?サジ。」
こくり。
「サヤ…そしたら…私たちも…一緒に…行ける…。」
「そうね。それに流邏矢でちょくちょくユノベに帰れば、あまり文句も出ないでしょ?ね?サジ。」
こくり。
「それだ!」
俺は思わずふたりを抱き締めた。
「「ふぇっ」」
「頭いいなー、ふたりとも。俺、さんざん悩んでも答えが出なかったんだけどさ。あっさり解決だな。
何より、ふたりが一緒に来てくれることが嬉しいよ。戦力的にも大幅アップだ。」
ハグを解くと、真っ赤になってるふたり。かわいい。
翌日、介添のふたりを連れて再び樹海へ。前日と合わせて、雷撃矢で瞬殺した獣は、大猪3頭、大狼2頭、大熊2頭、大鹿5頭の計12頭。弓矢による属性攻撃の威力を改めて思い知った。
ユノベの館に帰還して叔父貴たちに報告。
「叔父貴どのたち、サヤ姉とサジ姉を介添に樹海の獣12頭を狩って来た。ご検分あれ。」
「なんと。2日でか?しかも大獣ばかりではないか!」
「見事じゃ。天晴ぞ、アタル。」
「これで次期統領に文句はあるまい。ふたりとも、介添ご苦労であった。」
「叔父貴どのたち、折り入って頼みがあるのだが。」
「なんだ?試練での手柄に免じて、大抵のことは聞くぞ。」
「されば、願いは2つある。まずは大熊1頭をライの食糧として賜りたい。ライから受けた雷の力を纏いし矢で、此度の獲物12頭すべてを瞬殺だ。ライの手柄でもある。」
「よかろう。」
「2つ目は、ライと同等の力を持つ神龍があと6体、和の国に割拠している。統領就任のための武者修行を兼ねて、そのすべてをわが眷属とし、あらゆる属性攻撃を手に入れたい。」
「なんと。しかし、成人の試練を終えたら、統領就任と婚約発表の段取りなのだぞ。」
「統領に就任したら、おいそれとは出歩けぬ。統領内定で如何か? また、統領内定と合わせて、サヤ姉とサジ姉のふたりとの婚約を発表する。
それと、武者修行の間は、叔父貴どのたちに今まで通りの統領代理を頼みたい。」
「しかしな、婚約発表と同時に婚約者をほったらかすのはいかがなものか。トノベやヤクシへの手前もあるのだぞ。」
「ふたりは連れて行く。それならトノベもヤクシも文句はあるまい。それに、ふたりとも、戦力として大いに期待している。」
「しかしなぁ…。」
「叔父貴どのたち、よくよく考えよ。神龍による属性獲得は弓矢の戦闘力を飛躍的に上げ、属性攻撃を占有していたオミョシを凌ぐ力を身に付けるのだ。何を迷うことがある?」
「「「うーむ。」」」
「われら3人のパーティは、遠距離攻撃の俺、近距離攻撃のサヤ姉、回復のサジ姉とバランスはかなりよい。
適当な人材がいれば、防御役と支援役を加えてもよい。さすればパーティは盤石となる。
さらには流邏矢でちょくちょく帰還し、近況報告もしようぞ。」
「しかしなぁ。姉貴たちに何と言えばよいか。」
「何を言うか。嫁いだ伯母御どのたちに、ユノベの方針に対して、とやかく言わせてよいはずがなかろう!
叔父貴どのたち、シャキッとせよ。そんな弱腰では、亡き親父どのが嘆こうぞ。」
「それもそうだの。アタルの言う通りぞ。確かにわれらは姉貴たちの顔色を気にし過ぎていたかもしれん。」
「それにな、俺には、サヤ姉とサジ姉が付いているのだ。そもそもこのアイディアの出どころはふたりだからな。」
「なるほど。姉貴たちが文句を言って来たら、アタルを焚き付けたのは、サヤとサジだと言えばよいのだな。」
「ククク…姉貴たちの唖然とする顔が目に浮かぶわ。」
「いい気味じゃ。よし、アタル、武者修行を認めようぞ。」
「サヤもサジもアタルをよろしく頼むぞ。」
「いや、俺がふたりを守るんだよ。」
「アタル、最後のセリフは言わない方がカッコよかったわよ。」
「アタル…詰めが…甘い…。」
「…ごめんなさい。」
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更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
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