78 / 132
契約結婚が大きく変わる時
契約結婚が大きく変わる時4
しおりを挟む「気が付いたか、杏凛」
「ここ……は?」
料理教室で倒れ、鵜方先生の病院に連れて行かれた事だけは何となく覚えてる。でも今いる場所は慣れた鵜方先生の病院のベッドでもなく、いつも眠っている私の部屋でもない。
起き上がらずに首だけを動かして周りを見ると、どうやらここはホテルの一室らしい。
「鏡谷コンツェルンが経営しているホテルの一つだ、今夜はこの部屋に泊まるから無理をしないで眠っていると良い」
どうやら鵜方先生の医院に近いホテルへと私を運んできたらしい。いつでも先生と連絡が取れるように、と言ってたけど相変わらず匡介さんは過保護だ。
それにしても、今日の発作はいつもよりとても苦しかった。頭がガンガンと痛み、怖くて呼吸もままならなくて……
何かを訴えてくるかのように警報音のような何かが鳴り響いているようだった。
「匡介さん、今日の私は……いつもと違っていましたか?」
自分ではいつもと違うと感じたが、匡介さんから見た私はどうだったのか。今はそれを知りたいと思って聞いてみた。
「……発作が起こる前、君に何があったのかを詳しく聞きたい。鵜方先生はそう言っていた」
「発作が起こる前、ですか……」
いつもと大きく違う事はしていない。普段と変わらず月菜さんと話をして調理をし、片付けを終えて調理室を出た。
その時に近くにいた女性のブレスレットから落ちた天然石を拾って、それで……
「……天然石? もしかして、あれが?」
そう言えば先日、封筒に入れられた天然石を見た時も何か違和感を感じた。深くは考えなかったけれど、あれから何となく落ち着かない気分になって……
よく考えてみれば、私は天然石のアクセサリーを一つも持ってはいない。綺麗だとは思うけれど、何故かいつも欲しいとは思わなかった。
「天然石? 君はそれをどこで目にしたんだ……?」
「料理教室の生徒さんのブレスレットが切れたの、それを拾って渡しに行こうとしていたら強い眩暈がして……」
いつもの発作は呼吸が苦しくなることがほとんどで、あんなふうに目の前が真っ暗になる感じはなかった。一気に意識を失わさせられるような、そんな強さは。
「それを見て杏凛、君は……いや、何でもない。その天然石はどうしたか分かるか?」
「多分、倒れた時に手から零れ落ちたと思うわ。ねえ、匡介さんはその事について何か知っているの?」
私がさっきの事を話すたびに、匡介さんは何か考えるような仕草を見せる。それが私の中でずっと引っかかっていた。
この人は私の知らない何かを、本当は知っているんじゃないかって。
もし知っているのだとしたら、何故私にそれを教えてくれないのか? それがただの過保護からくるものだとは思えなかった。
それなのに……
「今の杏凛に話せるようなことは何もない、今は余計な事は気にせず休んでいなさい」
0
お気に入りに追加
307
あなたにおすすめの小説
同居離婚はじめました
仲村來夢
恋愛
大好きだった夫の優斗と離婚した。それなのに、世間体を保つためにあたし達はまだ一緒にいる。このことは、親にさえ内緒。
なりゆきで一夜を過ごした職場の後輩の佐伯悠登に「離婚して俺と再婚してくれ」と猛アタックされて…!?
二人の「ゆうと」に悩まされ、更に職場のイケメン上司にも迫られてしまった未央の恋の行方は…
性描写はありますが、R指定を付けるほど多くはありません。性描写があるところは※を付けています。
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
アクセサリー
真麻一花
恋愛
キスは挨拶、セックスは遊び……。
そんな男の行動一つに、泣いて浮かれて、バカみたい。
実咲は付き合っている彼の浮気を見てしまった。
もう別れるしかない、そう覚悟を決めるが、雅貴を好きな気持ちが実咲の決心を揺るがせる。
こんな男に振り回されたくない。
別れを切り出した実咲に、雅貴の返した反応は、意外な物だった。
小説家になろうにも投稿してあります。
最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた―――
ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。
それは同棲の話が出ていた矢先だった。
凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。
ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。
実は彼、厄介な事に大の女嫌いで――
元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――
陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました
夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、
そなたとサミュエルは離縁をし
サミュエルは新しい妃を迎えて
世継ぎを作ることとする。」
陛下が夫に出すという条件を
事前に聞かされた事により
わたくしの心は粉々に砕けました。
わたくしを愛していないあなたに対して
わたくしが出来ることは〇〇だけです…
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
同期の御曹司様は浮気がお嫌い
秋葉なな
恋愛
付き合っている恋人が他の女と結婚して、相手がまさかの妊娠!?
不倫扱いされて会社に居場所がなくなり、ボロボロになった私を助けてくれたのは同期入社の御曹司様。
「君が辛そうなのは見ていられない。俺が守るから、そばで笑ってほしい」
強引に同居が始まって甘やかされています。
人生ボロボロOL × 財閥御曹司
甘い生活に突然元カレ不倫男が現れて心が乱される生活に逆戻り。
「俺と浮気して。二番目の男でもいいから君が欲しい」
表紙イラスト
ノーコピーライトガール様 @nocopyrightgirl
十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。
職場で知り合った上司とのスピード婚。
ワケアリなので結婚式はナシ。
けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。
物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。
どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。
その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」
春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。
「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」
お願い。
今、そんなことを言わないで。
決心が鈍ってしまうから。
私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる