上 下
14 / 88
契約と仕事の始まり

契約と仕事の始まり4

しおりを挟む


 聖壱さんが私の事を心配して言ってくれてるのは分かる。だからって、そんなに過保護にならなくても……

「貴方が私の事を気にしてくれるのは嬉しいわ。だけど、私だって大人の女なのよ?自分の事は自分で何とか出来るつもりよ。」

「分かってる、香津美は強い女性だ。それでも……お前の事は俺が守りたい。」

 守りたい?気が強くて性悪女だとばかり言われるような、こんな私を?聖壱さんの瞳を見つめ返すけれど、まっすぐな彼の眼は嘘をついているとは思えない。

「私は、守ってもらうほど弱くは……」

 何度か周りの人に言われたことがあるわ。「香津美さんは強いから一人で大丈夫だね。」と。強い私は守ってもらう訳にはいかないの。

「そうじゃない、俺にとって香津美が強いか弱いかは関係ない。お前の事が好きだから守りたい、それだけだ。」

 聖壱さんは今まで私が言われてきたことと反対の事ばかり言ってくるの。嫌われてばかりの私を気に入り、危険な事はするなと怒る。そして今度は、今まで守る必要はないと言われてきた私を守りたいなんて……

「そんな事言われても……困るわ。」

 こういう時、私は素直に「嬉しい」とか「ありがとう」が言えないの。私は今まで強がって「一人で大丈夫」だと言い続けてきたから。

「夫が愛する妻を守りたい、これは当たり前のことだ。ゴチャゴチャ言わずに香津美も少しくらいは俺に守られてろ。」

 私の大嫌いな命令形なのに、胸がキュウってなるのはどうして?私も本当はこうやって誰かに守られたかったの?




「え、偉そうに言わないでっていつも言ってるでしょ?私は別に貴方に守られなくったって……きゃっ!」

 こんなに言ってくれてる聖壱さん相手でも、やっぱり素直になれない。
 だけどいつものように可愛くない返事をしていた途中、聖壱さんがいきなり私のスーツのジャケットの中に手を入れてきたの!

「やはり俺にキチンと教えられないと言う事を聞く気が無いって事でいいんだな、香津美?」

 聖壱さんの射貫くような瞳に見つめられ、さすがの私も体が震えた。この人……本気で私を躾ける気だわ。
 腰のラインをゆっくりとなぞって少しずつ上へと進んでいく聖壱さんの両手。身体を他人に触られることがほとんどなかった私は、その感覚に戸惑い泣きたくなってしまう。

「聖壱さ…んっ!こんな事は……」

「俺に守られるって言え、香津美。言うまで、終わらないぞ?」

 シャツの上から大きな手が少しずつ胸のふくらみに近付いて来る。どうすればいい?何といえば聖壱さんを止められる?
 とうとう彼の指が私のシャツのボタンを外しにかかった、その時――――

【コンコン、カチャリ……】

 社長室のドアがノックされ、こちらの返事を待たずにそのまま開かれた。

「……何をしてるんですか、聖壱。僕はここをお前の仕事場だと記憶していましたが?」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

それは、あくまで不埒な蜜戯にて

奏多
恋愛
設楽一楓は、高校生の頃、同級生で生徒会長だった瀬名伊吹に弱みを握られて一度だけ体の関係を持った。 その場限りの約束のはずが、なぜか彼が作った会社に働くことになって!?   一度だけのあやまちをなかったことにして、カリスマ的パワハラ悪魔に仕えていた一楓に、突然悪魔が囁いた――。   「なかったことに出来ると思う? 思い出させてあげるよ、あの日のこと」     ブラック企業での叩き上げプログラマー兼社長秘書 設楽一楓 (しだら いちか)  × 元同級生兼カリスマIT社長 瀬名伊吹 (せな いぶき) ☆現在番外編執筆中☆

桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜

花室 芽苳
恋愛
【本編完結/番外編追加します】  幼い頃から匡介に苦手意識を持つ杏凛。しかし親同士の付き合いで、顔を合わす事も少なくなかった。  彼女が彼を苦手な事はみんなが知っている事だったが、そんな時……尊敬する祖父の会社が経営難に!?いったいどうすればと悩む杏里。 「杏凛、俺と契約結婚をしなさい。そうすれば君を助けてやる事も出来る」  いきなり現れた匡介から契約結婚を持ち掛けられる。驚く杏凛に匡介は…… 「3年間だけでいい、その間に君の祖父の会社を立て直してみせるから」 「そんな言葉で私がすんなりあなたに嫁ぐとでも?」  しかしこのままでは祖父も会社も救う事が出来ない、ついに杏凛は決意する。 「私に必要以上に構わなくていいのです。こんな強情な契約妻は放っておいて匡介さんは好きな事をしてください」 「夫が妻に構う事の何が悪い?俺は杏凛を放っておいてまでしたい事なんて無い」  杏凛は自分をどんどん甘やかし過保護になっていく匡介に戸惑う。 (昔の彼は私に冷たい眼差しを向けるだけだったのに。今の彼にどういう態度をとればいいのか分からない――――)  妻への過保護な愛情と嫉妬心に振り回される夫、匡介 190㎝ 35歳  夫への苦手意識から冷たい態度しかとれない妻、杏凛 169㎝ 29歳

俺様な極道の御曹司とまったりイチャイチャ溺愛生活

那珂田かな
恋愛
高地柚子(たかちゆずこ)は天涯孤独の身の上。母はすでに亡く、父は音信不通。 それでも大学に通いながら、夜はユズカという名で、ホステスとして生活費を稼ぐ日々を送っていた。 そんなある日、槇村彰吾(まきむらしょうご)という男性が店に現れた。 「お前の父には世話になった。これから俺がお前の面倒を見てやる」 男の職業は、なんとヤクザ。 そんな男に柚子は言い放つ。 「あなたに面倒見てもらう必要なんてない!」 オレサマな極道の若と、しっかり者だけどどこか抜けてる女の子との、チグハグ恋愛模様が始まります。 ※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「絶対にキモチイイと言わせてやる」 私に多額の借金を背負わせ、彼氏がいなくなりました!? ヤバい取り立て屋から告げられた返済期限は一週間後。 少しでもどうにかならないかとキャバクラに体験入店したものの、ナンバーワンキャバ嬢の恨みを買い、騒ぎを起こしてしまいました……。 それだけでも絶望的なのに、私を庇ってきたのは弊社の御曹司で。 副業がバレてクビかと怯えていたら、借金の肩代わりに妊娠を強要されたんですが!? 跡取り身籠もり条件の愛のない関係のはずなのに、御曹司があまあまなのはなぜでしょう……? 坂下花音 さかしたかのん 28歳 不動産会社『マグネイトエステート』一般社員 真面目が服を着て歩いているような子 見た目も真面目そのもの 恋に関しては夢を見がちで、そのせいで男に騙された × 盛重海星 もりしげかいせい 32歳 不動産会社『マグネイトエステート』開発本部長で御曹司 長男だけどなにやら訳ありであまり跡取りとして望まれていない 人当たりがよくていい人 だけど本当は強引!?

腹黒御曹司の独占欲から逃げられません 極上の一夜は溺愛のはじまり

春宮ともみ
恋愛
旧題:極甘シンドローム〜敏腕社長は初恋を最後の恋にしたい〜 大手ゼネコン会社社長の一人娘だった明日香は、小学校入学と同時に不慮の事故で両親を亡くし、首都圏から離れた遠縁の親戚宅に預けられ慎ましやかに暮らすことに。質素な生活ながらも愛情をたっぷり受けて充実した学生時代を過ごしたのち、英文系の女子大を卒業後、上京してひとり暮らしをはじめ中堅の人材派遣会社で総務部の事務職として働きだす。そして、ひょんなことから幼いころに面識があったある女性の結婚式に出席したことで、運命の歯車が大きく動きだしてしまい――?  *** ドSで策士な腹黒御曹司×元令嬢OLが紡ぐ、甘酸っぱい初恋ロマンス  *** ◎作中に出てくる企業名、施設・地域名、登場人物が持つ知識等は創作上のフィクションです ◆アルファポリス様のみの掲載(今後も他サイトへの転載は予定していません) ※著者既作「(エタニティブックス)俺様エリートは独占欲全開で愛と快楽に溺れさせる」のサブキャラクター、「【R18】音のない夜に」のヒーローがそれぞれ名前だけ登場しますが、もちろんこちら単体のみでもお楽しみいただけます。彼らをご存知の方はくすっとしていただけたら嬉しいです ※著者が読みたいだけの性癖を詰め込んだ三人称一元視点習作です

冷徹秘書は生贄の恋人を溺愛する

砂原雑音
恋愛
旧題:正しい媚薬の使用法 ……先輩。 なんて人に、なんてものを盛ってくれたんですか……! グラスに盛られた「天使の媚薬」 それを綺麗に飲み干したのは、わが社で「悪魔」と呼ばれる超エリートの社長秘書。 果たして悪魔に媚薬は効果があるのか。 確かめる前に逃げ出そうとしたら、がっつり捕まり。気づいたら、悪魔の微笑が私を見下ろしていたのでした。 ※多少無理やり表現あります※多少……?

氷の公爵はお人形がお気に入り~少女は公爵の溺愛に気づかない~

塔野明里
恋愛
 学校にも家にも居場所なんてなかった。  毎日死ぬことばかり考えていたら、目の前で事故が起こったとき咄嗟に体が動いてしまった。  死ぬはずだった子どもを助けてしまった死ぬ予定じゃなかった私。神様は、私に異世界で生きなおすチャンスをくれた。  本当に私を必要としてくれる人に出逢えるのかな?  異世界で私を助けてくれたのは氷の公爵と呼ばれる人。  私は彼のお人形になることにした。 *改訂版です。以前書いていたものを書き直しさせていただきました。 *人生投げやり女子×拗らせ公爵様のすれ違い模様を描きたい。 *R18は後半にしかありません。該当の話には*マークをつけます。

あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

sae
恋愛
イケメン、高学歴、愛想も良くてモテ人生まっしぐらに見える高宮駿(たかみやしゅん)は、過去のトラウマからろくな恋愛をしていない拗らせた男である。酔った勢いで同じ会社の美山燈子(みやまとうこ)と一夜の関係を持ってまう。普段なら絶対にしないような失態に動揺する高宮、一方燈子はひどく冷静に事態を受け止め自分とのことは忘れてくれと懇願してくる。それを無視できない高宮だが燈子との心の距離は開いていく一方で……。 ☆双方向の視点で物語は進みます。 ☆こちらは自作「ゆびさきから恋をする~」のスピンオフ作品になります。この作品からでも読めますが、出てくるキャラを知ってもらえているとより楽しめるかもです。もし良ければそちらも覗いてもらえたら嬉しいです。 ⭐︎本編完結 ⭐︎続編連載開始(R6.8.23〜)、燈子過去編→高宮家族編と続きます!お付き合いよろしくお願いします!!

処理中です...