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番外編 貴方が選んでくれた物だから

番外編 貴方が選んでくれた物だから2

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「ごめんなさい。準備に時間がかかりそうなので、柚瑠木ゆるぎさんは先にテナントの喫茶店で待っていてもらえませんか?」

 そう言って彼に家から出てもらって、すでに一時間は経ってしまいました。やっとすべての準備を終えて姿見でもう一度確認してからバッグを持って部屋を出ます。
 時計の時間を見て焦りますが、走ってはせっかく香津美さんが選んでくれたコーデを台無しにしてしまうかもしれなくて……

 それにしても何故でしょう? 今日はやけにチラチラと人に見られているような気がするのです、やはりこの格好が私に似合っていないのでしょうか。
 周りの人に視線から顔を隠すように少しだけ俯いて、柚瑠木さんの待ち合わせの喫茶店まで急ぎます。

 喫茶店に入って店員さんに待ち合わせだと伝えると、奥の席で柚瑠木さんが本を読んでいるのを見つけました。
 窓から差し込む日の光に一瞬だけ眩しそうに目を細めるその姿も素敵です。ほら、他の女性客の方も柚瑠木さんの事が気になっていらっしゃいます。
 前のように他の女性に声を掛けられる前に、彼の傍に行かなくては。
 この姿に柚瑠木さんはどんな反応をされるのか、緊張で胸がドキドキしてしまいます。

「すみません、柚瑠木さん。お待たせしました」

「……え、月菜つきなさん?」




 椅子に座ったまま私を見上げる柚瑠木ゆるぎさんはとても驚いた顔をしています。やはりこの格好はおかしかったのでしょうか?
 
「ご、ごめんなさい。私一度着替えて……きゃっ!」

 やはり自分にはこんな大人っぽい格好は似合わないような気がして戻ろうとすると、慣れない高めのヒールで躓きそうになって……

「大丈夫ですか、月菜つきなさん? 僕は大人しく待っていたのに、どうして帰ろうとするんです」

 すぐに柚瑠木さんが私の身体を支えてくれて、私は転ばずに済みました。でも、恥ずかしさで顔を上げることが出来なくて……

「だって……柚瑠木さんは私の格好が似合わないから驚いていらっしゃるんですよね?」

 今日の私の服は香津美かつみさんと二人で選んだもの。身体にフィットした白のキャミソールにブルーのシアーシャツ。そして大人っぽいマーメイドラインのロングスカートに合わせて、普段よりもヒールの高い白のアンクルストラップサンダル。
 真っ直ぐな長い黒髪だっていつもは降ろしているか一つに束ねるだけですが、今日は大きめに編み込んで一纏めに。
 普段は大人しめのワンピースばかり着ている私には、もの凄く頑張ったつもりのコーディネートだったんです。私よりもずっと落ち着いた雰囲気の柚瑠木さんの隣に居ても子供っぽく見えないように、と。

「そりゃあ、驚きますよ。今の月菜さん、いつもと別人のように大人っぽいんですから」

 そう言って柚瑠木さんは、そっと私の身体を起こすと椅子へと座らせてくれます。


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