49 / 127
契約結婚の全てを知って…
契約結婚の全てを知って…2
しおりを挟む「あの頃の僕は周りとの交流を避けて殻に閉じこもってばかりだったのに、真澄さんはそんな事はお構いなしに僕を外に連れ出すような人でした。父や母から頼まれた勉強は二の次で、彼女は僕に色んなものを見せ教えてくれたんです。」
今の柚瑠木さんからは想像も出来ないような子供時代、それを少しずつ変えていったのがきっと真澄さんという存在なのでしょう。
柚瑠木さんの話し方から、彼が真澄さんの行動に戸惑いながらも少しずつ心を開いていったことがなんとなく分かりました。
「真澄さんはどこに僕を連れ出す時も、いつも必ず手を握ってくれました。僕が何度恥ずかしいから、と言っても彼女はこの手を離したりしなかった。いつの間にか僕もそれが当たり前になっていて、気にしなくなるほどに……」
知りたいと思っていた柚瑠木さんと真澄さんの事なのに、2人の親密な関係を聞けば胸が苦しくなる。そんな自分をどうしていいのか分からないまま。
もしその頃の柚瑠木さんに私が出会えていたら……そんな事を考えても、私では真澄さんの代わりにはなれないのに。
「柚瑠木さんにとって真澄さんは……いえ、続きを話してもらえますか?」
もし私が柚瑠木さんの立場だとしたら、真澄さんに恋心を抱いてもおかしくはありません。でもそんな事を聞く勇気は私には無かったのです。
「月菜さん……本当に無理をしていませんか?」
そんな私の変化にも柚瑠木さんは気付いてくれて、優しい言葉をかけてくれます。けれど、今は柚瑠木さんになんとなく甘えられない気がして……
「大丈夫です、続きをお願いします。」
今の私に言えることはそれしかありませんでした。だって本当に辛いのは、悲しい過去を思い出しながら私に話している柚瑠木さんのはずなのですから。
それでも柚瑠木さんの過去を知りたい、苦しんでいる理由を貴方から話して欲しいと思ってしまうんです。
「……分かりました。僕の事を二階堂財閥の御曹司ではなく、ただの一人の人間として自然に接してくれる真澄さん相手に僕が心を開くまで大した時間はかかりませんでした。友人のように、時には姉みたいに振舞う真澄さんは、いつの間にか僕にとって特別な存在になっていて……」
柚瑠木さんの言葉に胸が「ズキン」と痛みます。やはり彼にとっての【特別】は真澄さんなのですね。これから先も、私が柚瑠木さんの一番の特別になれる日はこないのでしょうか?
「恋……をしたのですか?」
その答えを知りたくないのに、我慢出来ずに柚瑠木さんに聞いてしまったんです。
柚瑠木さんの事はどんな事でも受け入れると言ったのに、私はまだそんなに強くなれていないのかもしれません。
私の問いかけによって柚瑠木さんの表情は曇り、彼が私への返答に悩んでいることが分かります。私だってこんな風に柚瑠木さんを困らせたいわけではないのに……
もしその答えが私にとって辛いものでも、きっと柚瑠木さんは嘘をついたりしないと思います。だって……大切な人に嘘をつかれたほうがずっと苦しいって事を、柚瑠木さんが一番分かっているはずですから。
「……そうですね、僕は真澄さんに恋をしていたんだと思います。多分、初恋でした。」
覚悟していた言葉でしたが、やはりショックでした。私と出会う前の柚瑠木さんが誰かに恋をしていた。そんなの当然なのに、真澄さんがその相手だと思うと苦しくて……
もし今も真澄さんが柚瑠木さんの傍にいたとしたら、私はここにはいなかったかもしれない、と。
「真澄さんのおかげで少しずつ僕も外の世界に目を向けるようになりました。誰よりも僕の事を親身になって考えてくれる真澄さんを、いつの間にか両親以上に信頼するようになっていて……」
そこまで話すと柚瑠木さんは私に「少し待っていてください」とだけ言って、寝室へと入っていきました。すぐに寝室から出て来た柚瑠木さんは、片手に小さなアルバムを持っていました。
「この人が、真澄さんです。そして……これがあの日起こった出来事、僕の悪夢の原因です。」
柚瑠木さんの見せてくれたアルバムには、活発そうでショートヘアーが似合う女性の写真。その隣には小さな新聞の切り抜きが貼り付けてあって……
0
お気に入りに追加
647
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【完結】東京・金沢 恋慕情 ~サレ妻は御曹司に愛されて~
安里海
恋愛
佐藤沙羅(35歳)は結婚して13年になる専業主婦。
愛する夫の政志(38歳)と、12歳になる可愛い娘の美幸、家族3人で、小さな幸せを積み上げていく暮らしを専業主婦である紗羅は大切にしていた。
その幸せが来訪者に寄って壊される。
夫の政志が不倫をしていたのだ。
不安を持ちながら、自分の道を沙羅は歩み出す。
里帰りの最中、高校時代に付き合って居た高良慶太(35歳)と偶然再会する。再燃する恋心を止められず、沙羅は慶太と結ばれる。
バツイチになった沙羅とTAKARAグループの後継ぎの慶太の恋の行方は?
表紙は、自作です。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる