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契約結婚が始まりました!
契約結婚が始まりました!
しおりを挟む「ではそろそろ行きましょうか、月菜さん。」
片手で私の荷物を持った柚瑠木さんが、もう片方の手を私に差し伸べてくれて……柚瑠木さんは、本当にどこかの国の王子様のような人だと思って見ていました。
柚瑠木さんからの提案で、先に私達は籍を入れて二人で暮らしすことになりました。結婚式の事はこれからゆっくり二人で決めることになったんです。
……そう、実は今日から私達は一緒に生活をするんです。
「はい、これからよろしくお願いします。あの……柚瑠木さん。」
「何でしょうか?」
きちんと自分の意志を伝えることも大切だと思い、昨日ちゃんと練習しておいたんです。
「あの……契約結婚でも、私は柚瑠木さんの妻としてこれから頑張ります!」
練習したかいがありました、柚瑠木さんにちゃんと伝えることが出来た!
そう思ったのですが……
彼はそんな私を見て、ただでさえ冷たい印象を与える瞳をさらに細めて……
「月菜さんは余計な事はしなくていい、貴女は僕のお飾りの妻に過ぎないんですから。」
柚瑠木さんの言葉に心が冷たくなっていくような気がしました。契約結婚だということは理解していましたが、自分をただのお飾りの妻だとまでは思っていませんでしたから。
夫婦としてお互いのために何かできないかと考える私と、夫婦なのにお互い無関心でいようとしたがる柚瑠木さん。
どうやら私たちの新婚生活は前途多難そうです――――
「月菜さん。ここが僕たちが暮らす新居になります。」
柚瑠木さんに連れて来られたのは、たくさんの有名人や資産家たちが暮らしていると聞く【ラピスヒルズビレッジ】。
テレビの取材もNGだと言わている謎の多く、噂でしか聞いた事の無かった特別な場所――――
「柚瑠木さん、あの建物は何でしょう?それにあっちは……?」
興奮して柚瑠木さんのジャケットの袖の部分を掴んでしまったのです。柚瑠木さんは私のその手をそっと離して……
「あの建物は総合病院です。セレブや有名人もよく来ますが、ヒルズに住んでいればいつでも診てもらえるようになっています。それと……月菜さんも必要な物があるでしょうから、後でそちらのショッピングモールに行きましょう。」
柚瑠木さんは丁寧に説明してくれましたが、私は彼に手を離されてしまったことが少しショックでした。
柚瑠木さんには私に対して特別な感情を持ってほしいなど、欲張りな事を願うつもりはありません。ですが、触れることすら拒絶されるとは思っていなかったので……
「どうしました、月菜さん?」
私が落ち込んでいる事に気付き、声をかけてくれる柚瑠木さん、決して悪い人ではないと私は思うのです。
だからこれが契約結婚とはいえ、私は柚瑠木さんのために出来るだけの事をしていきたいと思っているんです。
歩き出した柚瑠気さんの後を追ってレジデンスの中へと入ると、そこは高級ホテルのように煌びやかでした。
思わず周りをキョロキョロと見てしまいます。
私も十条コーポレーションの社長の娘としていろんな所を見てきましが、ここは本当に華やかな場所。
地味な私がまさかこんな場所で暮らすことになるなんて……
「どうですか、月菜さん。少しは気に入ってもらえましたか?」
「は、はいっ、とても。」
「2人の新居については、僕に任せてください」と言われたので、柚瑠木さんにお任せしていたのですが……まさか、こんな贅沢な場所に住む事になるなんて思ってもいなかったんです。
部屋の中は広くてとても住みやすそうです。すぐに生活出来るよう、家具等は既に設置されていました。
「月菜さんが気に入らないものがあれば言ってください、すぐに取り換えさせますから。」
「いいえ、私はこれで十分です。」
柚瑠木さんは無表情で頷くと、奥の部屋の一つのドアを開きました。
「この部屋は月菜さんの好きに使っていただいて結構です。ベッドやテレビ、チェストなどは既に設置しています。」
シングルのベットがこの部屋には一つだけ、という事は柚瑠木さんはどうするのでしょうか?
そう思って柚瑠木さんを見上げると、彼は静かに頷ずいて隣のドアを開けて……
「こちらが寝室です、普段は僕がこちらで眠ります。月菜さんには僕がこの部屋に呼んだ時だけ来ていただきたいんです。」
え、それってどういう事ですか――――?
「あのっ、それって……その……」
聞きたいけれどそういう夜の事情に疎い私は、柚瑠木さんにその意味をうまく聞くことが出来なかったのです。そんな私を見て柚瑠木さんは……
「契約結婚とはいえ僕たちはもう夫婦です。月菜さんも大人の女性なんですから、この意味は分かると思いますが?」
彼の言葉を理解した私は、その事を想像してしまい緊張で足が震えてしまいました。
ちゃんとそれも覚悟して嫁いできたつもりだったのに、妻としての役割にそういう事もあるのだと家族から教えられてきたのに。
「……僕はそう考えていますが、月菜さんが嫌がるなら無理強いをするつもりはありません。そこまで冷酷な夫になる気はないので。」
柚瑠木さんはそう言うと、ふっと目を伏せました……その一瞬だけ見えた彼の切なそうな顔に、私は思わず柚瑠木さんの手を取ってしまったのです。
「いいえっ、大丈夫です。私は柚瑠木さんの妻ですから!」
そして彼が驚くほどの大きな声で返事をしてしまったんですが、私の勢いはそのまま止まることなく……
「私は初めてですが頑張りますので、よろしくお願いします!」
私は柚瑠木さんの手を握ったまま、結婚初日からとんでもない事を言ってしまっていたのでした。
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