決められた運命

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マリナ

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 優しく 笑顔で 天使のように…


 城下町で産まれたのが私マリナ。

 両親は知らず孤児院で暮らしてきた。

 しかし物心がつく頃から私は何をやれば良いか知っていたわ。

 人には優しく、嫌なことがあっても笑顔を忘れず、愚痴も悪口も言わない。


 14歳の時、教会のお手伝いをしていたらこの国の皇太子様がお出でになった。

 何かに引き寄せられるように見たら、皇太子様と目があった。

 私の王子様だ。

 私達が惹かれ合い、お互いの手に触れた時。誰も居ないのに教会の鐘が鳴り響いた。


 それからは夢のような日々だった。

 皇太子様の婚約者様には虐められたけど、王宮の人も皇太子様も皆が私の味方だった。



 彼と会ったのはいつだったか。
 婚約者様に頬を叩かれ、赤く腫れた顔を皆に見られたくなくて生け垣に隠れてた時だったかな?

 お前、本当に皇太子を愛してんの?

 びっくりしたわ。だって私達は神の祝福の鐘が鳴ったんだよ。皇太子様と私は神に愛されたんだよ。

 もちろん! 私の王子様だもん! 

 立ち上がって大きな声で言ったわ。
 それなのに彼は冷たい視線を向けて、

 それで? いつまでも幸せに?

 それだけ言って何処かへ消えたの。

 

 「アマーリエ様が崖から身投げなさりました。未だ、ご遺体は見つけられませんが生存は絶望的かと」

 ウィリアム様の執務室で聞いた。

 報告を受けて呆然とするウィリアム様の顔が苛立つ。だって、私はいつも虐められたんだよ? それでも愚痴も悪口も言わなかったんだよ?

 
『それで? いつまでも幸せに?』

 彼の言葉が脳裏に浮かぶ。だから言うの。

「まだ見つからないなら、生きているかも知れません。希望はまだあるわ」


優しく 笑顔で 天使のように…
 
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