時の呪縛

葉羽

文字の大きさ
上 下
17 / 20
17章

時間の終焉

しおりを挟む
葉羽と彩由美は、過去との決別を果たした後、心に新たな希望を抱いて村の広場に立っていた。周囲は明るく照らされ、彼らの未来が開かれていることを感じさせた。しかし、その静けさの中に、何か不穏な気配が漂っていることに気づいた。

「この村には、まだ解決しなければならないことが残っている。」葉羽は言った。彼の目には、決意が宿っていた。

「私たちが失踪者たちを解放したことで、時間がどのように変わるのか見届ける必要がある。」彩由美も頷き、彼女の表情には緊張感が漂っていた。

彼らは再び時計塔の前に立ち、止まった時計を見つめた。針は静止しており、時間の流れを感じることができなかった。しかし、彼らの心の中には、時間が動き出す予感があった。

「私たちの行動が、時間の流れを変えるかもしれない。」葉羽は言った。「私たちがこの時計を動かすことで、村の運命も変わるはずだ。」

「でも、どうやって時計を動かせばいいの?」彩由美は言った。彼女の目には不安が浮かんでいた。

その時、再び影が現れた。それは、失踪者たちの姿を模した影で、彼らの目には感謝の光が宿っていた。

「お前たちが私たちを解放してくれたことで、私たちの心は安らいだ。しかし、時間が止まったままでは、この村は再生できない。」影の一人が言った。

「私たちは、時間を取り戻すために何をすればいいの?」葉羽が尋ねると、影たちは静かに頷いた。

「お前たちの心にある決意が、時計を動かす力になる。過去を受け入れ、未来を信じることで、時間は再び流れ出す。」影の声は優しさと力強さを持っていた。

「私たちの心の中に、その力があるのか…」彩由美は思った。彼女は自分の心に手を当て、深呼吸をした。「過去を受け入れた私たちが、未来を信じることが大切だ。」

葉羽は彩由美の手を握りしめた。「私たちは共にいる。どんな試練が待ち受けていても、未来を信じて進んでいこう。」

その瞬間、時計の針が微かに動き始めた。周囲の空気が震え、村の景色が変わっていくのを感じた。

「やった…!時計が動いている!」彩由美が驚きの声を上げた。彼女の目には希望の光が宿っていた。

「私たちの心の決意が、時間を動かす力になったんだ!」葉羽も嬉しそうに言った。

しかし、その時、周囲の空気が急に冷たくなり、影が再び強い存在感を放った。「だが、時間を取り戻すためには、最後の試練が待っている。お前たちが本当に未来を信じることができるのか、試される時が来た。」

「最後の試練…?」葉羽は緊張感を抱えながら尋ねた。

「お前たちの心の奥に隠された真実が、試練として立ちはだかる。」影は言った。「その恐れを乗り越えなければ、時間は本当に流れ出すことはない。」

「私たちは、過去を受け入れた。恐れを乗り越え、未来を信じる覚悟がある!」彩由美は叫んだ。

影たちが彼らを包み込み、周囲が暗くなった。彼らの心の奥に潜む恐れや不安が浮かび上がり、映像となって現れた。

「お前たちが直面するのは、選択の時だ。時間を取り戻すために、何を選ぶのか。」影の声が響く中、映像が次々と彼らの前に現れた。

過去の選択、失った人々、助けられなかった瞬間…それらすべてが彼らの心を締め付けた。

「私たちは、もう逃げない。過去を受け入れ、未来を信じる。」葉羽は決意を新たにした。

「共にいる限り、どんな試練でも乗り越えられる!」彩由美も続けて言った。

彼らの心に宿る決意が、光を放ち始めた。影たちの存在が薄れ、映像が消えていく中で、彼らは自らの選択を受け入れ、恐れを乗り越えようとしていた。

「私たちが選ぶのは、未来への道だ。過去は過去として、私たちは新たな一歩を踏み出す!」葉羽は叫んだ。

その瞬間、影たちが彼らの前に現れ、深い感謝の意を表した。「お前たちがその心を持っているなら、私たちも解放される。」

周囲が再び明るくなり、時計の針が力強く動き出した。時間が流れ始め、村は新たな息吹を得た。

「時間が戻ってきた…!」彩由美は目を輝かせ、葉羽もその光景に感動を覚えた。

影たちの姿がどんどん薄れていく中、彼らは過去との決別を果たし、未来へと歩み出す準備が整った。

「私たちは、時間の終焉を迎え、新たな未来を切り開くことができる。」葉羽は微笑んだ。

「はい、私たちの友情が、その未来を照らす光になる。」彩由美も笑顔を浮かべ、二人は手を取り合った。

村の人々が再び姿を現し、彼らの周りで笑顔を交わしている。失踪者たちの運命が変わり、時間が流れ出したことで、村は新たな希望に満ちていた。

葉羽と彩由美は、未来に向かって歩き出した。彼らの心には、過去を受け入れた強さと、未来への希望が宿っていた。時間の終焉を迎えた彼らは、新たな旅立ちを果たすのだった。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

双極の鏡

葉羽
ミステリー
神藤葉羽は、高校2年生にして天才的な頭脳を持つ少年。彼は推理小説を読み漁る日々を送っていたが、ある日、幼馴染の望月彩由美からの突然の依頼を受ける。彼女の友人が密室で発見された死体となり、周囲は不可解な状況に包まれていた。葉羽は、彼女の優しさに惹かれつつも、事件の真相を解明することに心血を注ぐ。 事件の背後には、視覚的な錯覚を利用した巧妙なトリックが隠されており、密室の真実を解き明かすために葉羽は思考を巡らせる。彼と彩由美の絆が深まる中、恐怖と謎が交錯する不気味な空間で、彼は人間の心の闇にも触れることになる。果たして、葉羽は真実を見抜くことができるのか。

騙し屋のゲーム

鷹栖 透
ミステリー
祖父の土地を騙し取られた加藤明は、謎の相談屋・葛西史郎に救いを求める。葛西は、天才ハッカーの情報屋・後藤と組み、巧妙な罠で悪徳業者を破滅へと導く壮大な復讐劇が始まる。二転三転する騙し合い、張り巡らされた伏線、そして驚愕の結末!人間の欲望と欺瞞が渦巻く、葛西史郎シリーズ第一弾、心理サスペンスの傑作! あなたは、最後の最後まで騙される。

コドク 〜ミドウとクロ〜

藤井ことなり
ミステリー
 刑事課黒田班に配属されて数ヶ月経ったある日、マキこと牧里子巡査は[ミドウ案件]という言葉を知る。  それはTMS探偵事務所のミドウこと、西御堂あずらが関係する事件のことだった。  ミドウはマキの上司であるクロこと黒田誠悟とは元同僚で上司と部下の関係。  警察を辞め探偵になったミドウは事件を掘り起こして、あとは警察に任せるという厄介な人物となっていた。  事件で関わってしまったマキは、その後お目付け役としてミドウと行動を共にする[ミドウ番]となってしまい、黒田班として刑事でありながらミドウのパートナーとして事件に関わっていく。

支配するなにか

結城時朗
ミステリー
ある日突然、乖離性同一性障害を併発した女性・麻衣 麻衣の性格の他に、凶悪な男がいた(カイ)と名乗る別人格。 アイドルグループに所属している麻衣は、仕事を休み始める。 不思議に思ったマネージャーの村尾宏太は気になり 麻衣の家に尋ねるが・・・ 麻衣:とあるアイドルグループの代表とも言える人物。 突然、別の人格が支配しようとしてくる。 病名「解離性同一性障害」 わかっている性格は、 凶悪な男のみ。 西野:元国民的アイドルグループのメンバー。 麻衣とは、プライベートでも親しい仲。 麻衣の別人格をたまたま目撃する 村尾宏太:麻衣のマネージャー 麻衣の別人格である、凶悪な男:カイに 殺されてしまう。 治療に行こうと麻衣を病院へ送る最中だった 西田〇〇:村尾宏太殺害事件の捜査に当たる捜一の刑事。 犯人は、麻衣という所まで突き止めるが 確定的なものに出会わなく、頭を抱えて いる。 カイ :麻衣の中にいる別人格の人 性別は男。一連の事件も全てカイによる犯行。 堀:麻衣の所属するアイドルグループの人気メンバー。 麻衣の様子に怪しさを感じ、事件へと首を突っ込んでいく・・・ ※刑事の西田〇〇は、読者のあなたが演じている気分で読んで頂ければ幸いです。 どうしても浮かばなければ、下記を参照してください。 物語の登場人物のイメージ的なのは 麻衣=白石麻衣さん 西野=西野七瀬さん 村尾宏太=石黒英雄さん 西田〇〇=安田顕さん 管理官=緋田康人さん(半沢直樹で机バンバン叩く人) 名前の後ろに来るアルファベットの意味は以下の通りです。 M=モノローグ (心の声など) N=ナレーション

ヘリオポリスー九柱の神々ー

soltydog369
ミステリー
古代エジプト 名君オシリスが治めるその国は長らく平和な日々が続いていた——。 しかし「ある事件」によってその均衡は突如崩れた。 突如奪われた王の命。 取り残された兄弟は父の無念を晴らすべく熾烈な争いに身を投じていく。 それぞれの思いが交錯する中、2人が選ぶ未来とは——。 バトル×ミステリー 新感覚叙事詩、2人の復讐劇が幕を開ける。

【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~

紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。 行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。 ※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

学園ミステリ~桐木純架

よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。 そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。 血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。 新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。 『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。

【1話完結】ほのぼのミステリー

Algo_Lighter
ミステリー
ほのぼのとした日常の中に隠れた、小さな謎を解く心温まるミステリー。 静かに、だけど確かに胸に響く優しい推理をお楽しみください。

処理中です...