時の呪縛

葉羽

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7章

失踪者たちの声

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葉羽と彩由美は、再び時計に手を触れた。瞬間、周囲がまばゆい光に包まれ、彼らの意識は過去の記憶の中へと引き込まれていった。光が収まると、目の前には薄暗い村の広場が広がっていた。村人たちの姿は見えないが、どこからともなくかすかな声が聞こえてくる。

「助けて…私たちを解放して…」その声は、悲しみに満ちた響きで、葉羽の心に重くのしかかった。

「この声…失踪者たちの声?」彩由美は耳を澄ませて言った。彼女の表情は恐怖と期待が入り混じっている。

「おそらくそうだ。彼らが私たちに何かを伝えようとしている。」葉羽は決意を新たにし、声のする方向へと歩き始めた。彼の心には、失踪者たちの運命を知りたいという強い思いがあった。

彼らは広場の中心へと進み、周囲の様子を観察した。かすかな声が次第に鮮明になり、村人たちの姿が浮かび上がってきた。彼らは時計塔の前に集まり、誰かを待つかのように不安な表情を浮かべていた。

「彼らは何を待っているの?」葉羽は疑問を抱きながら、村人たちの中に混ざろうとした。しかし、彼の体はまるで空気のように透けていて、村人たちには届かない。

「私たちには見えないけれど、彼らは確かにここにいる。」彩由美が言った。彼女の目には、村人たちの苦しみが映っていた。

その時、ひときわ大きな声が響いた。「時計よ、動け!私たちの運命を変えてくれ!」それは、失踪者の一人であろう男性の叫びだった。

「一体、何が起こったの?」葉羽はその声に引き寄せられるように近づいた。彼はその男性の表情に注目した。彼の目には、絶望と怒りが宿っていた。

「私たちは、この村のために生きてきた。しかし、時計が止まった日から、すべてが狂い始めた。」男性は周囲の村人に向かって叫んだ。「私たちは、誰も助けてくれない。誰も私たちを思い出してくれない!」

その瞬間、周囲の村人たちが一斉に声を上げた。「私たちの記憶を取り戻して!私たちの声を聞いて!」彼らの声は、悲しみと絶望に満ちていた。

「どうして、私たちの声を聞いてくれないの?」別の女性が泣きながら叫ぶ。「私たちは、ただ時間の罠に囚われているだけなのに。」

葉羽はその言葉に胸が締め付けられる思いがした。彼らは、過去の記憶に閉じ込められ、助けを求めているのだ。彼は、彼らの声を無視することはできなかった。

「私たちが、あなたたちを助けるよ!」葉羽は叫んだ。「私たちは、あなたたちの運命を解き明かすためにここに来た!」

村人たちの視線が葉羽に集まった。彼らの目には、希望の光が宿り始めていた。「本当に、私たちを助けてくれるのか?」男性が問いかける。

「はい、必ず解放します。あなたたちの過去を知り、真実を受け入れることで。」葉羽は力強く答えた。

「私たちの記憶は、時計の針と共に動いている。過去の選択を受け入れなければ、私たちは永遠にこのまま。」女性が続ける。「私たちの声を聞いて、そして私たちの運命を変えてほしい。」

「私たちが何をすれば、あなたたちを解放できるの?」彩由美が尋ねた。彼女の声には、真剣さがあった。

「儀式が必要だ。時計の針を動かし、私たちの心を一つにすることで、私たちは自由になれる。しかし、選ばれた者には代償が伴う。」男性が答えた。

「代償…それは、私たちの命かもしれない。」女性が涙を流しながら言った。「でも、私たちの命が無駄にならないように、どうか真実を見つけてほしい。」

葉羽は彼らの言葉に心を打たれた。彼らは自らの運命を受け入れる覚悟を持っているのだ。彼は、失踪者たちの声を聞くことで、彼らの運命を変えるための使命を感じた。

「私たちが真実を知り、あなたたちの運命を変えるために、もう一度儀式を行う必要がある。」葉羽は決意を新たにした。「私たちは、共にこの呪縛を解き明かす!」

その瞬間、周囲の光景が揺らぎ、失踪者たちの声が高まった。「ありがとう!私たちの声を聞いてくれて。私たちは、あなたたちを信じる!」

だが、次の瞬間、彼らの姿が薄れ、周囲が暗闇に包まれた。葉羽は、失踪者たちの声が遠のいていくのを感じ、焦りが募った。

「葉羽、何が起こるの?」彩由美が不安げに尋ねる。

「分からない…だけど、彼らの運命を解き明かすために、もう一度過去を受け入れなければならない。」葉羽は心を強く持ち、再び時計に手を伸ばした。

彼らは、失踪者たちの声を背に受けながら、真実を探し続ける決意を固めた。時間の流れの中で、彼らの運命がどう変わるのか、それはまだ未知のままだった。 

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