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2章

禁断の実験室

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翌日、葉羽は馴染みの喫茶店で渦波縫也と向かい合っていた。縫也は地元警察署の刑事であり、葉羽とは幾度か事件解決に協力したことがあった。飄々とした雰囲気とは裏腹に鋭い洞察力を持つ、葉羽にとっては頼れる存在だ。

「例の研究所の件だけど、何か掴んだことはあるか?」

葉羽が単刀直入に尋ねると、縫也はコーヒーカップに視線を落としたまま、静かに口を開いた。

「ああ、少しな。実は俺も、あの件はただの病死じゃない気がしててね。非公式に調べているんだ」

縫也の言葉に、葉羽の胸が高鳴った。彼の直感は間違っていなかったのだ。

「患者のカルテを見たんだが、死因は様々で、共通点が見当たらない。だが、全員が昏睡状態だったこと、そして死ぬ直前に異常な行動を見せていたという点で一致している」

縫也は懐から一枚の写真を取り出し、葉羽に差し出した。それは、研究所の内部を撮影したものだった。薄暗い廊下、無機質な医療機器、そして、ひときわ目を引く巨大なカプセル型の装置。写真全体から、異様な雰囲気が漂っている。

「これは……」葉羽は息を呑んだ。

「このカプセル、何だか気味が悪いよな。患者の脳波を測定するための装置らしいんだが……」縫也は意味深に言葉を濁らせた。

葉羽は写真に写るカプセル型装置を凝視しながら、縫也から聞いた患者の症状と、あの窓辺に現れた異形の影を結びつけた。

(もし、あの影が……)

葉羽の脳裏に、恐ろしい仮説が浮かび上がった。

「縫也さん、俺は研究所に潜入する」葉羽は決意を固めたように言った。

「待て、葉羽。危険すぎる。警察が公式に動けるようになるまで……」

「待っていられない。もし俺の考えが正しければ、今この瞬間にも誰かが犠牲になっているかもしれない」

葉羽の強い意志に、縫也はそれ以上何も言えなかった。

「彩由美にも協力を頼む。彼女は頼りになる」

葉羽の言葉に、縫也は小さく頷いた。「気をつけろよ、葉羽。何かあったらすぐに連絡しろ」

その夜、葉羽は彩由美と共に研究所へと向かった。深夜の研究所は、昼間とは比べ物にならないほど不気味な雰囲気に包まれていた。ひっそりと佇む洋館は、まるで闇に潜む巨大な獣のようだった。

「葉羽くん、本当に大丈夫? なんだか怖いよ……」彩由美が不安げに呟いた。

「大丈夫だ、彩由美。俺が守る」葉羽は力強く言った。

二人は縫也から入手した情報をもとに、裏口から研究所に侵入した。内部は異様な静寂に包まれており、ひんやりとした空気が肌を刺す。廊下を進むにつれ、葉羽の胸騒ぎはますます強くなっていった。

やがて二人は、建物の地下へと続く階段を発見した。階段を下りると、重い鉄の扉が現れた。葉羽は慎重に扉を開けると、そこには地下に広がる巨大な空間が広がっていた。

薄暗い空間の中央には、あの写真で見た巨大なカプセル型装置が複数台設置されている。そして、その奥には、さらに異様な形状をした巨大な装置が鎮座していた。無数のケーブルが複雑に絡み合い、不気味な光を放っている。それはまるで、SF映画に出てくるような、非現実的な光景だった。
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