推理の迷宮

葉羽

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9章

最後の推理

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第9章: 最後の推理

翌朝、葉羽は緊急の呼び出しを受けて誠一郎の書斎に向かった。そこには既に彩由美と影山がいた。

「何があったんですか、おじいさん?」葉羽が尋ねた。

誠一郎は厳しい表情で答えた。「世界規模の陰謀が、いよいよ動き出した。」

彼はスクリーンを指さした。そこには世界中で同時多発的に起きている不可解な事件のニュースが映し出されていた。

「これらの事件は全て、『影の蝶』と呼ばれる組織の仕業だ。」誠一郎は説明を続けた。「彼らの目的は、世界中の主要な暗号システムを同時にハッキングし、グローバル経済を崩壊させることだ。」

葉羽は眉をひそめた。「なぜそんなことを?」

「力だ。」影山が口を挟んだ。「世界を混乱に陥れ、その隙に乗じて新たな秩序を作り上げようとしているんだ。」

誠一郎は頷いた。「その通りだ。そして、彼らの最終目標は今夜12時。我々には24時間しかない。」

彩由美が不安そうに尋ねた。「私たちに何ができるんですか?」

誠一郎は葉羽を見つめた。「葉羽、君の推理力が鍵となる。『影の蝶』の本部を突き止め、彼らのシステムを無効化しなければならない。」

葉羽は深呼吸をした。「分かりました。全力を尽くします。」

それから数時間、葉羽は与えられた全ての情報を分析し、推理を重ねた。彩由美と影山も全面的にサポートした。

夜の11時、葉羽は突然立ち上がった。

「分かった!」

全員が彼に注目した。

「『影の蝶』の本部は、実は私たちのすぐ近くにある。」葉羽は説明を始めた。「彼らは、最も疑われにくい場所を選んだんだ。」

「まさか...」誠一郎の顔が青ざめた。

葉羽は頷いた。「はい、この豪邸の地下にあります。」

一同は驚愕した。

「でも、どうやって?」彩由美が尋ねた。

葉羽は説明を続けた。「全ての謎を解くカギは、この家の設計図にありました。通常の豪邸には不自然な空間が存在していたんです。そして、世界中で起きた事件の地理的パターンを分析すると、全てがこの場所を中心に放射状に広がっていることが分かりました。」

誠一郎は深刻な表情で言った。「まさか、私の知らないところで...」

影山が叫んだ。「時間がない!今すぐ行動を!」

葉羽は全員を見渡した。「僕たちで『影の蝶』を止めましょう。」

一同は頷き、豪邸の地下へと向かった。そこには確かに、最新技術を駆使した秘密基地があった。

激しい戦いの末、葉羽たちは『影の蝶』のメンバーを制圧し、システムの無効化に成功した。

時計が12時を指す直前、全てが終わった。

誠一郎は疲れた表情で葉羽に言った。「よくやった、葉羽。君は真の『影の調停者』になったな。」

葉羽は彩由美の手を取りながら答えた。「いいえ、僕たち全員でやり遂げたんです。」

影山は興奮気味に言った。「これは間違いなく世紀の大事件だ!しかし、誰にも語ることはできないんだろうな...」

全員が笑った。

その夜、世界は知らないうちに大きな危機を脱していた。そして葉羽と彩由美の新たな冒険が、ここから始まるのだった。
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