焔星高校の密室 鏡影の殺人 ～天才少年・神藤葉羽と幼馴染の事件簿～【本格推理×ホラー×どんでん返し】

25章

エピローグ - 鏡の残像

事件から数週間が経った。街路樹の葉は色づき始め、秋の気配が深まっていた。神藤葉羽は、自宅の書斎で、一枚の写真を眺めていた。それは、鹿島翔とのツーショット写真だった。探偵事務所での一枚。鹿島は穏やかに微笑んでおり、その表情からは、彼が抱えていた闇など想像もつかない。

事件の真相は、あまりにも残酷で、複雑なものだった。鹿島翔、尊敬していた探偵であり、事件解決のパートナーであった彼が、全ての黒幕だったという事実。葉羽は、今もなお、その事実に苦悩していた。

白鳥優希は、自首し、逮捕された。彼は、罪を償うために、法廷で全てを語り、自らの犯した罪を認めた。白鳥は、佐伯蔵人を殺害した罪で起訴されたものの、情状酌量の余地があると認められ、懲役刑を言い渡された.

佐伯久美子は、精神病院に入院した。彼女は、長年の恨みと復讐心に囚われ、精神的に不安定な状態だった。彼女は、治療を受けながら、ゆっくりと、過去の傷を癒していくことになるだろう。

事件の舞台となった旧佐伯邸は、売却され、新たな持ち主の手に渡った. 洋館は取り壊され、跡地には、近代的なマンションが建つ予定だという。かつての栄華を誇った佐伯家の歴史は、こうして幕を閉じた。

葉羽は、彩由美と共に、鹿島翔の墓参りをした. 墓石には、彼の名前と生没年月日が刻まれている。簡素な墓石だったが、葉羽にとっては、鹿島との思い出が詰まった、大切な場所だった。

「鹿島さん…あなたは、なぜ、あんなことをしたのですか…」

葉羽は、墓石に語りかけた。彼の声は、悲しみに満ちていた.

彩由美は、静かに葉羽の隣に立ち、彼の肩に手を置いた。

「葉羽くん…もう、過去は振り返らないで…」

彼女の優しい言葉が、葉羽の心を慰めた。

葉羽は、深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。彼は、過去にとらわれていてはいけない。彼は、未来を生きなければならない.

二人は、墓地を後にした.

夕暮れの空が、オレンジ色に染まっている.

葉羽は、彩由美の手を握りしめ、歩き始めた。

「彩由美…ありがとう」

葉羽は、心から感謝の気持ちを込めて言った.

「何に？」

彩由美は、微笑んで尋ねた.

「全てに. 君がいてくれたおかげで、俺は、この事件を乗り越えることができた」

葉羽は、彩由美の手を強く握りしめた。

彩由美は、照れくさそうに頬を赤らめた.

「私こそ、葉羽くんに感謝しているわ. あなたがいてくれたおかげで、私は、怖くなかった」

彩由美は、葉羽を見つめた。彼女の瞳には、愛情が溢れていた。

葉羽は、彩由美の言葉に、心が温かくなった。彼は、彩由美を愛していた。そして、彼は、彩由美のために、生きていこうと決意した。

二人は、夕焼け空の下、手をつないで歩き続けた.

彼らの未来は、まだわからない. しかし、彼らは、希望に満ちた未来を信じて、前へ進んでいく.

数日後、葉羽は、書斎で、事件の記録を整理していた。彼は、この事件を風化させないために、全ての記録を残しておこうと考えていた。

その時、彼の目に、一枚の紙が留まった。それは、佐伯景子の遺書だった。

彼は、遺書をもう一度読んでみた.

遺書には、佐伯景子の心の葛藤が綴られていた. 彼女は、佐伯家の人間として生まれたことに苦しみ、自分の存在意義に悩んでいた。

そして、彼女は、葉羽に宛てて、こんなメッセージを残していた。

「葉羽くん、あなたには、私のように苦しんでほしくない. あなたには、幸せになってほしい. そして、どうか、この事件の真相を、世間に公表してください. それが、私にできる、せめてもの償いです」

葉羽は、佐伯景子の言葉に、胸を締め付けられた. 彼は、彼女の願いを叶えなければならない。彼は、この事件の真相を、世間に公表することを決意した.

葉羽は、事件の記録をまとめ、一冊の本に仕上げた。

本のタイトルは、「鏡の残像」.

彼は、この本を出版し、事件の真相を世間に公表した.

事件は、大きな反響を呼んだ.

多くの人々が、事件の真相に驚き、そして悲しんだ。

しかし、同時に、多くの人々が、葉羽の勇気と正義感に感銘を受けた。

葉羽は、事件の aftermath に向き合いながら、ゆっくりと、心の傷を癒していった。

そして、彼は、彩由美と共に、新たな人生を歩み始めた.

二人の未来は、希望に満ちていた。

そして、彼らの心には、鹿島翔の影が、静かに、しかし確かに、刻まれていた。

それは、彼らが決して忘れてはいけない、過去の記憶。そして、未来への教訓。

鏡の残像は、彼らの心に、永遠に残り続けるだろう。