焔星高校の密室 鏡影の殺人 ～天才少年・神藤葉羽と幼馴染の事件簿～【本格推理×ホラー×どんでん返し】

6章

第一の犠牲者

佐伯景子の逮捕で、事件は解決したかに思われた。しかし、葉羽の胸騒ぎは消えなかった。電話の相手の声、そして「闇に近づきすぎると、どうなるか」という言葉が、彼の心に暗い影を落としていた。まるで、この事件の背後には、もっと深い闇が潜んでいることを暗示しているかのようだった。

景子の自供によれば、彼女は遺産相続を目的に、佐伯蔵人を毒殺したという。犯行に使われた毒物は、特殊なもので、検出が非常に困難なものだった。彼女は、密室トリックの専門書を参考に、綿密な計画を立てて犯行に及んだのだ。

しかし、葉羽は、彼女の自供に納得できなかった。何かが引っかかる。まるで、重要なピースが欠けているような感覚だった。

彼は、もう一度事件現場である旧佐伯邸を訪れることにした。彩由美には、心配をかけたくない一心で、再び内緒で向かうことにした。

洋館に到着すると、既に日は暮れ始めていた。空は、重苦しい灰色の雲に覆われ、不気味な雰囲気を醸し出していた。庭の草木は生い茂り、まるで洋館を覆い隠そうとしているかのようだった。

葉羽は、玄関のドアノブに手をかけた。ドアは、鍵がかかっていなかった。彼は、ゆっくりとドアを開け、中へと入った。

玄関ホールは、ひっそりと静まり返っていた。埃っぽい空気が、重苦しく漂っている。壁に飾られた肖像画の目は、まるで葉羽を見つめているかのようだった。

彼は、書斎へと向かった。書斎のドアも、開いていた。

部屋の中に入ると、彼は息を呑んだ。

書斎は、荒らされていた。本棚の本は散乱し、机の引き出しは全て開けられていた。まるで、誰かが何かを探していたかのようだった。

葉羽は、部屋の中を注意深く観察した。何か手がかりがないか、くまなく探した。

その時、彼の目に、床に落ちている一枚の写真が映った。

写真は、古びて色あせていたが、佐伯蔵人と若い女性のツーショット写真だった。女性は、美しい黒髪と吸い込まれるような黒い瞳を持っていた。

葉羽は、写真の裏側を見た。そこには、「久美子」という名前が書かれていた。

久美子。一体誰なのだろうか。佐伯蔵人の恋人？それとも、家族？

葉羽は、写真をポケットにしまい、書斎を後にした。彼は、洋館の他の部屋も調べたが、特に変わった様子はなかった。

その時、彼の耳に、かすかな物音が聞こえた。

物音は、地下室から聞こえてくるようだった。

葉羽は、地下室へと続く階段を探した。そして、隠し扉の後ろに、地下室へと続く階段を発見した。

彼は、ゆっくりと階段を下りていった。

地下室は、薄暗く、湿っぽい空気が漂っていた。カビ臭い匂いが、鼻をつく。

地下室の中央には、テーブルが置かれており、その上には、一台の古い映写機が置かれていた。

葉羽は、映写機に近づき、電源を入れてみた。

すると、映写機がカタカタと音を立てて動き始めた。

壁に映し出されたのは、古い白黒映像だった。

映像には、佐伯蔵人と若い女性が映っていた。女性は、先ほどの写真に写っていた女性、久美子だった。

二人は、楽しそうに会話をし、笑い合っていた。

しかし、映像は突然中断し、画面は真っ暗になった。

その時、葉羽の背後から、人の気配を感じた。

彼は、振り返った。

そこに立っていたのは、黒い人影だった。

人影は、ゆっくりと葉羽に近づいてきた。

葉羽は、恐怖で体が硬直していた。

人影は、葉羽の目の前まで来た。

そして、人影は、口を開いた。

「ようこそ、闇の世界へ」

低い声が、葉羽の耳元で響いた.

葉羽は、意識を失った.

　葉羽が目を覚ますと、彼は見知らぬ場所にいた.

そこは、薄暗く、閉鎖的な空間だった。

彼は、椅子に縛り付けられていた。

目の前には、仮面をつけた男が立っていた。

「目が覚めたか、神藤葉羽君」

男の声は、電話の声と同じだった。

「あなたは、一体誰ですか？」

葉羽は、男に問いかけた。

「私は、真実を知る者だ。そして、君を闇へと導く者だ」

男は、意味深な言葉を残して、部屋を出て行った.

　葉羽は、必死に状況を把握しようとした.

一体、何が起きているのか。

なぜ、ここにいるのか.

その時、彼の耳に、悲鳴が聞こえた。

　それは、彩由美の声だった。