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7章

翡翠川の証言

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葉羽の意識が闇に沈んだ後、どれだけの時間が流れたのか、彼には分からなかった。再び意識が戻った時、彼は見慣れない部屋にいた。簡素なベッド、小さな机、そして鉄格子のついた窓。まるで、病院の一室のようだった。

「…ここは…?」

葉羽は、ゆっくりと起き上がり、周囲を見渡した。頭は重く、身体は鉛のようにだるかった。まるで、深い眠りから覚めたばかりのようだった。

その時、ドアが開き、一人の女性が入ってきた。翡翠色のワンピースを纏い、長い黒髪を後ろに束ねた女性。五十嵐の秘書、翡翠川蛍だった。

「…目が覚めたのね」

翡翠川は、落ち着いた声で言った。彼女の顔には、心配そうな表情が浮かんでいた。

「…翡翠川さん…?」

葉羽は、彼女の名前を呼んだ。翡翠川は、小さく頷いた。

「…ええ。私が、あなたをここに連れてきたの」

翡翠川の言葉に、葉羽は混乱した。なぜ、翡翠川が自分をここに連れてきたのだろうか? 五十嵐はどこにいるのだろうか? そして、彩由美は?

「…一体、何が…?」

葉羽は、混乱した頭で尋ねた。翡翠川は、椅子に座り、葉羽に語り始めた。

「…五十嵐さんは、狂気に取り憑かれていたの。量子力学の研究にのめり込み、禁断の技術に手を出してしまった…」

翡翠川の言葉は、重苦しく、葉羽の胸に突き刺さった。彼は、五十嵐が量子複製装置を使って魂の転写実験を行っていたことを思い出した。

「…魂の転写…?」

葉羽は、呟いた。翡翠川は、悲しげに頷いた。

「…ええ。五十嵐さんは、永遠の命を手に入れようと、自分の複製を作り、魂を転写しようとしたの。でも、実験は失敗し、彼の魂は複製体へと転写され、元の肉体は死んでしまった…」

翡翠川の言葉に、葉羽は愕然とした。五十嵐は、すでに死んでいたのだ。そして、今、この屋敷を徘徊しているのは、五十嵐の魂が転写された複製体だった。

「…では、あの五十嵐は…?」

葉羽は、尋ねた。

「…彼は、五十嵐さんの魂が転写された複製体。でも、魂の転写は完全ではなく、彼の精神は不安定で、狂気に支配されている…」

翡翠川の言葉に、葉羽は戦慄した。複製体の五十嵐は、もはや人間ではなく、怪物と化していたのだ。

「…彩由美は…彩由美はどこだ…?」

葉羽は、彩由美のことを思い出した。彼女は、五十嵐に捕らえられていたはずだ。

「…彼女は、五十嵐…いえ、複製体に捕らえられているわ。彼は、あなたと同じように、彼女にも魂の転写実験を行おうとしている」

翡翠川の言葉に、葉羽は目の前が真っ暗になった。彩由美が、危険にさらされている。彼は、何としても彼女を助け出さなければならない。

「…どうすれば、彩由美を助けられる…?」

葉羽は、翡翠川に尋ねた。翡翠川は、少し考えてから答えた。

「…量子複製装置を破壊すれば、複製体の五十嵐も消滅する。そして、彩由美も解放されるはず…」

翡翠川の言葉に、葉羽は希望の光を見出した。彼は、量子複製装置を破壊することを決意した。

「…でも、量子複製装置はどこにあるんだ…?」

葉羽は、尋ねた。翡翠川は、秘密の実験室の場所を葉羽に教えた。

「…分かった。必ず、彩由美を助け出す」

葉羽は、決意を新たにした。彼は、ベッドから起き上がり、部屋を出ようとした。しかし、彼の身体はまだ弱っており、ふらついてしまった。

「…大丈夫?」

翡翠川は、心配そうに葉羽に声をかけた。

「…ああ、大丈夫だ。俺は、彩由美を助け出さなければならない」

葉羽は、強い意志で言った。翡翠川は、葉羽の決意を感じ、頷いた。

「…私も、協力するわ。五十嵐さんは、私の恩人だった。彼の行ったことは許せないけど、彼を止められるのは、私たちしかいない」

翡翠川の言葉に、葉羽は勇気づけられた。彼は、翡翠川と共に、秘密の実験室へと向かった。

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