笑うピエロの影

6章

真実の断片

葉羽と彩由美は、ピエロ祭りの会場へ向かう途中、心の中に高まる緊張感を抱えていた。祭りはすでに終息を迎え、町の人々は恐怖と混乱の影響から立ち直れずにいた。広場は人影もまばらになり、祭りの華やかさはどこかに消えてしまった。

「葉羽くん、もう一度あの像を見に行くの？」彩由美が不安そうに尋ねる。

「そうだ。あの像には何かが隠れている。何か手がかりが見つかるはずだ。」葉羽は決意を固めて答えた。彼は、あの像が事件の核心に迫る鍵であると信じていた。

広場に着くと、夜の帳が降り始めていた。ピエロ像は、薄暗い光の中で不気味に佇んでいる。葉羽は周囲を見回し、誰もいないことを確認した後、像の後ろへと回り込んだ。

「注意して、葉羽くん。」彩由美が声をかける。彼女の目には、緊張が浮かんでいた。

葉羽は像の後ろに立ち、じっとその構造を観察する。前回見た時よりも、より詳細に何かを探し出そうとする。すると、ふと、像の基部に見慣れない金具があるのに気づいた。

「これだ…！」葉羽は小さく呟いた。彼は金具に触れ、引っ張ってみる。すると、像の底部が微かに動き、隠された扉が開いた。葉羽は驚きながらも、すぐにその中を覗き込んだ。



像の内部は暗く、何もないように見えたが、その奥には何かが隠されている気配がした。葉羽は懐中電灯を取り出し、光を当てる。すると、奥に置かれた小さな箱が視界に入った。

「これ、なんだろう？」葉羽は箱を取り出し、彩由美に見せた。「開けてみる？」

「うん、でも気をつけて。」彩由美は不安そうに言った。

葉羽は慎重に箱の蓋を開ける。中には、古びた手紙と一緒に、小さな鍵が入っていた。手紙には、何かの暗号のような文字が書かれている。

「これ、何かのヒントかもしれない。」葉羽は手紙を読み上げる。暗号のような文面は、何か重要な意味を持っているようだったが、すぐには理解できなかった。

「手紙の内容、解読できる？」彩由美が尋ねる。

「まだ分からない。でも、どこかで見たことがあるような気がする。」葉羽は頭を悩ませた。彼の目の前には、時間との闘いが待っていることを感じていた。警察が再びこの場所に来る前に、真実を掴まなければならない。

「もしかして、あの元部下が言っていた呪いに関係があるのかもしれない。」葉羽は思いついた。「ピエロ祭りの背後にある伝説や呪いのことを調べてみよう。」

「それなら、図書館に行こう！」彩由美は提案した。彼女の目は、希望の光を宿していた。



図書館に着くと、葉羽と彩由美はすぐに資料を探した。ピエロ祭りに関する古い文献や伝説を集め、暗号の意味を解読する手がかりを探す。

「これだ！」葉羽が一冊の本を見つけ、ページをめくる。そこには、ピエロ祭りの呪いに関する詳細が記されていた。古い伝説によると、祭りの間に悪事を働いた者には、ピエロの呪いが降りかかると言われていた。

「この伝説、実業家にも当てはまるかもしれない。」葉羽は思考を巡らせる。「彼が関与したプロジェクトに、何か不正があったのかもしれない。」

手紙の暗号を解読するために、葉羽は文献と照らし合わせながら考え続けた。すると、突然、彼の脳裏にひらめきが訪れた。「あの元部下が言っていた、プロジェクトのアイデアを盗まれたという話…それが、実業家の命を奪う原因になったのかもしれない。」

「でも、どうやってそのことが事件に結びつくの？」彩由美が不安そうに尋ねる。

「おそらく、実業家が何かを隠していた。彼が関与したプロジェクトの中に、黒い噂があったのではないか。それを知った誰かが、彼を殺すことに至ったんだ。」葉羽は興奮しながら言った。

彼はすぐに行動に移すことを決意した。「今からその元部下にもう一度会いに行こう。彼が知っていることがあるかもしれない。」

二人は図書館を後にし、再び居酒屋へと向かった。葉羽の心の中には、真実に迫る期待と不安が交錯していた。果たして、彼は事件の核心に辿り着けるのか？運命が彼を試す時が迫っていた。