グレイマンションの謎

葉羽

文字の大きさ
上 下
1 / 7
1章

呪われた洋館

しおりを挟む
神藤葉羽は、東京の一軒家の豪邸に住む高校2年生。彼は学年トップの成績を誇り、推理小説を読むことが何よりも好きだった。普段は冷静沈着で、どんな問題にも論理的にアプローチするが、恋愛には奥手な一面を持っている。特に、幼馴染の望月彩由美に対しては、少し緊張してしまうのだった。

夏休みのある日、葉羽は友人から「グレイマンション」という古びた洋館の話を聞いた。その洋館は、長い歴史を持ち、数々の怪奇現象が報告されている場所だった。興味を持った葉羽は、すぐに彩由美に連絡を取り、彼女を誘った。

「彩由美、グレイマンションに行ってみないか?」

電話越しの彼女の声は、少し驚いた様子だった。「え?グレイマンション?あそこ、怖いって噂だよね。」

「でも、噂を確かめるのも面白そうじゃないか。俺たちの推理力を試すチャンスだ。」

「うーん、葉羽が行くなら私も行く!でも、怖いのは嫌だよ。」

彼女の心配をよそに、葉羽はワクワクした気持ちを抑えきれなかった。彼は推理小説の主人公のように、真実を求める冒険が待っていると感じていた。

数日後、彼らはグレイマンションの前に立った。外観は古びており、窓は埃をかぶっていて、まるで時が止まったかのようだった。周囲には木々が生い茂り、薄暗い雰囲気を醸し出している。葉羽は一瞬の躊躇を感じたが、すぐに気を取り直し、彩由美に微笑んだ。

「さあ、行こうか。」

彼はドアを開け、中に足を踏み入れた。冷たい空気が二人を包み込み、心臓が高鳴る。館内は薄暗く、ほこりが舞い上がっていた。壁には古い絵画がかかり、かつての栄華を物語っているようだった。葉羽はその一つ一つに目を向け、興味をそそられた。

「この絵、すごく古いね。」彩由美が指さす。

「うん、もしかしたら、この家の主が描かれたものかもしれない。」

二人は館内をゆっくりと歩きながら、様々な部屋を見て回った。その途中、葉羽は何か不気味な気配を感じた。まるで誰かに見られているような気がして、背筋がぞくりとした。

「ねえ、葉羽。ここ、なんだか怖いよ。」彩由美が不安そうに言った。

「大丈夫だよ、彩由美。俺がいるから。」彼は少し強気に答えたが、心の中では不安が渦巻いていた。

探索を続ける中で、葉羽は家族の失踪に関する古い新聞記事を見つけた。その記事には、「家族が謎の失踪を遂げた」と書かれており、失踪した家族の写真が掲載されていた。葉羽はその写真をじっと見つめ、何か引っかかるものを感じた。

「どうしたの?」彩由美が尋ねる。

「この家族、どこかで見たことがあるような気がする…。」

彼は記事を読み進め、次第にその家族の悲劇に引き込まれていった。記事には、失踪が起こる前に何か奇妙な現象があったことが記されていた。「時間の歪み」や「奇怪な影」、さらには「幽霊の目撃情報」まで。葉羽はその内容に興味を持ち、全てを記憶に留めることにした。

「ねえ、葉羽。この家、本当に呪われているのかな…?」彩由美が不安げに言う。

「分からない。でも、何かがあるはずだ。俺たちが解明しよう。」

その言葉を胸に、葉羽はさらに館の奥へと進んでいく。すると、突然、背後で大きな音が響いた。振り返ると、ドアが自動的に閉まった。二人は驚き、互いに目を見合わせた。

「今の音、何だったの?」彩由美の声は震えていた。

「多分、風だ。こんな古い家だから、音が響くのは普通だよ。」

しかし、葉羽自身も不安を感じていた。彼は何かが彼らを見守っているような気がしてならなかった。

その時、ふと目に留まったのは、小さな鏡が掛けられた壁だった。鏡の中には、二人の姿が映っていたが、その背後に奇妙な影が映り込んでいるように見えた。葉羽は思わずその鏡に近づき、じっくりと観察した。

「葉羽、見て!あの影、何かいるよ!」彩由美が叫んだ。

しかし、鏡を再び見ても、影は消えていた。葉羽はそのことに疑問を抱きつつも、心の奥底で何かが動き出す予感を感じていた。彼の探求心はますます高まり、謎を解くための意欲が湧いてきた。

「この家には、何か秘密が隠されている。俺たちが見つけなきゃならないんだ。」

彩由美は葉羽の言葉に頷き、二人は再び探索を続けることにした。彼らが未だ知らない「時間の歪み」と「視覚のトリック」が、彼らを待ち受けていることを。恐怖が徐々に彼らに迫りつつある中、物語は静かに動き出していた。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

時の呪縛

葉羽
ミステリー
山間の孤立した村にある古びた時計塔。かつてこの村は繁栄していたが、失踪事件が連続して発生したことで、村人たちは恐れを抱き、時計塔は放置されたままとなった。17歳の天才高校生・神藤葉羽は、友人に誘われてこの村を訪れることになる。そこで彼は、幼馴染の望月彩由美と共に、村の秘密に迫ることになる。 葉羽と彩由美は、失踪事件に関する不気味な噂を耳にし、時計塔に隠された真実を解明しようとする。しかし、時計塔の内部には、過去の記憶を呼び起こす仕掛けが待ち受けていた。彼らは、時間が歪み、過去の失踪者たちの幻影に直面する中で、次第に自らの心の奥底に潜む恐怖と向き合わせることになる。 果たして、彼らは村の呪いを解き明かし、失踪事件の真相に辿り着けるのか?そして、彼らの友情と恋心は試される。緊迫感あふれる謎解きと心理的恐怖が交錯する本格推理小説。

「鏡像のイデア」 難解な推理小説

葉羽
ミステリー
豪邸に一人暮らしする天才高校生、神藤葉羽(しんどう はね)。幼馴染の望月彩由美との平穏な日常は、一枚の奇妙な鏡によって破られる。鏡に映る自分は、確かに自分自身なのに、どこか異質な存在感を放っていた。やがて葉羽は、鏡像と現実が融合する禁断の現象、「鏡像融合」に巻き込まれていく。時を同じくして街では異形の存在が目撃され、空間に歪みが生じ始める。鏡像、異次元、そして幼馴染の少女。複雑に絡み合う謎を解き明かそうとする葉羽の前に、想像を絶する恐怖が待ち受けていた。

深淵の迷宮

葉羽
ミステリー
東京の豪邸に住む高校2年生の神藤葉羽は、天才的な頭脳を持ちながらも、推理小説の世界に没頭する日々を送っていた。彼の心の中には、幼馴染であり、恋愛漫画の大ファンである望月彩由美への淡い想いが秘められている。しかし、ある日、葉羽は謎のメッセージを受け取る。メッセージには、彼が憧れる推理小説のような事件が待ち受けていることが示唆されていた。 葉羽と彩由美は、廃墟と化した名家を訪れることに決めるが、そこには人間の心理を巧みに操る恐怖が潜んでいた。次々と襲いかかる心理的トラップ、そして、二人の間に生まれる不穏な空気。果たして彼らは真実に辿り着くことができるのか?葉羽は、自らの推理力を駆使しながら、恐怖の迷宮から脱出することを試みる。

量子迷宮の探偵譚

葉羽
ミステリー
天才高校生の神藤葉羽は、ある日突然、量子力学によって生み出された並行世界の迷宮に閉じ込められてしまう。幼馴染の望月彩由美と共に、彼らは迷宮からの脱出を目指すが、そこには恐ろしい謎と危険が待ち受けていた。葉羽の推理力と彩由美の直感が試される中、二人の関係も徐々に変化していく。果たして彼らは迷宮を脱出し、現実世界に戻ることができるのか?そして、この迷宮の真の目的とは?

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

法律なんてくそくらえ

ドルドレオン
ミステリー
小説 ミステリー

虹の橋とその番人 〜交通総務課・中山小雪の事件簿〜

ふるは ゆう
ミステリー
交通総務課の中山小雪はひょんなことから事件に関わることになってしまう・・・無駄なイケメン、サイバーセキュリティの赤羽涼との恋模様もからんで、さて、さて、その結末やいかに?

嘘つきカウンセラーの饒舌推理

真木ハヌイ
ミステリー
身近な心の問題をテーマにした連作短編。六章構成。狡猾で奇妙なカウンセラーの男が、カウンセリングを通じて相談者たちの心の悩みの正体を解き明かしていく。ただ、それで必ずしも相談者が満足する結果になるとは限らないようで……?(カクヨムにも掲載しています)

処理中です...