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15章

逆転のシナリオ

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暗闇の中、葉羽は腕の傷の痛みをこらえながら、息を潜めた。真犯人は、まだ劇場内に潜んでいる。そして、再び襲いかかってくるだろう。

絶体絶命の状況。しかし、葉羽は諦めていなかった。彼は、最後の賭けに出ることを決意した。

葉羽は、事前に仕掛けていた罠を発動させた。

それは、プロジェクションマッピングと音響効果を組み合わせた、巧妙な罠だった。

葉羽は、あらかじめ劇場内に複数の小型プロジェクターとスピーカーを設置しておいた。そして、それらを制御するプログラムを組み、特定の条件下で自動的に作動するように設定していたのだ。

葉羽が仕掛けた罠は、こうだった。

まず、劇場内の照明が消えると、プロジェクターが作動し、壁や床、天井に様々な映像を投影する。映像は、現実の風景と見分けがつかないほどリアルなものだった。

そして、音響効果によって、様々な音が発生する。人の声、物音、そして、環境音。それらの音は、現実の音と区別がつかないほど精巧に作られていた。

つまり、葉羽は、プロジェクションマッピングと音響効果を使って、偽物の現実を作り出したのだ。

真犯人は、この偽物の現実に騙され、自分の正体を暴かれることになるだろう。

葉羽の予想通り、真犯人は罠に嵌った。

暗闇の中、真犯人は、偽物の現実に翻弄され、パニックに陥った。彼は、現実と虚構の区別がつかなくなり、錯乱状態に陥った。

その時、葉羽は、真犯人に最後の質問を投げかけた。

「あなたは…なぜ、烏丸先生を殺したのですか?」

葉羽の問いかけに、真犯人は、震える声で答えた。

「私は…私は…」

真犯人は、言葉を詰まらせた。

そして、ついに真犯人の正体が明らかになった。

それは、意外な人物だった。

真犯人は、灰崎硝子だった。

灰崎硝子は、烏丸の姪であり、遺産相続人だった。彼女は、烏丸の遺産を狙い、彼を殺害したのだ。

灰崎硝子は、涙を流しながら、犯行の動機と経緯を語り始めた。

彼女は、幼い頃から烏丸に虐待を受けていたという。烏丸は、彼女を人形のように扱い、彼女の心を深く傷つけていたのだ。

灰崎硝子は、烏丸への復讐心から、彼を殺害することを決意した。彼女は、劇場に仕掛けられたトリック装置を利用し、完全犯罪を成し遂げようとしたのだ。

灰崎硝子の告白は、劇場内にいる全員に衝撃を与えた。誰もが、彼女が真犯人だとは想像もしていなかったのだ。

葉羽は、灰崎硝子に近づき、静かに言った。

「あなたは…深淵を覗き込みすぎたのです」

葉羽の言葉に、灰崎硝子は、絶望的な表情で頷いた。

全ての謎が解き明かされ、真実は明らかになった。

しかし、物語はまだ終わらない。

劇場の舞台上では、最後の推理劇が展開されていた。

プロジェクションマッピングと音響効果によって作り出された、錯覚と現実が交錯する空間。

葉羽は、その中心に立ち、物語の結末を見届けるのだった。
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