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1章
開演前の悪夢
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春の柔らかな日差しが教室の窓から差し込み、黒板に書かれた数式を淡く照らしている。微かに漂うチョークの粉の匂い、生徒たちの囁き声、ページを捲る音。神藤葉羽は窓際の席で、教科書に視線を落としながらも、意識は別の場所に漂っていた。
「ねえ、葉羽君。今日の放課後、一緒に帰らない?」
隣席の望月彩由美が、小さな声で話しかけてきた。その声に、葉羽は現実に引き戻される。彼女の顔は、春の日差しを受けてほんのりと桜色に染まっている。
「ああ、彩由美か。構わないが…どうしたんだ、改まって」
葉羽は教科書から目を離さずに答えた。彩由美は、彼の素っ気ない態度にもめげず、にこりと笑う。
「最近、一緒に帰ってくれなかったから。何か考え事?」
「まあな…少し、気になることがあってね」
葉羽は視線を窓の外に向けた。校庭では、サッカー部の生徒たちが元気な声を上げながらボールを追っている。平和で穏やかな日常。しかし、彼の心には、拭い去れない違和感が渦巻いていた。
「気になること? 何? 試験のことなら心配しなくても大丈夫だよ。葉羽君なら、いつも学年トップじゃない」
彩由美は心配そうに葉羽の顔を覗き込む。彼女の言葉に、葉羽は苦笑した。
「試験のことじゃない。最近、妙な夢ばかり見るんだ。暗い地下室で、何かが蠢いているような…」
「地下室? 怖い夢だね…」
彩由美は身震いするように呟いた。葉羽は、彼女の不安そうな表情を見て、少し後悔した。夢の話などするべきではなかったかもしれない。
「心配するな。ただの夢だ。それより、今日は何か予定があるのか?」
「うん、放課後に本屋さんに行こうと思って。新しい漫画が出たから」
「そうか…」
葉羽は短く答えると、再び教科書に視線を落とした。彩由美は、彼の様子を窺っていたが、何も言わずに自分の席に戻った。
放課後、葉羽は彩由美と共に学校を出た。校門を出たところで、彩由美は「ちょっと待ってて」と言って、近くのコンビニエンスストアに駆け込んだ。葉羽は一人、校門の前に立ち尽くす。
その時、一通の封筒がポストに投函されるのが目に入った。封筒には、見覚えのある紋章が刻印されていた。烏丸蔵人の個人紋章だ。葉羽は、自分の胸が高鳴るのを感じた。
烏丸蔵人は、著名な劇作家であり、葉羽が敬愛する人物の一人だ。彼が主催する演劇は、常に斬新な演出と深遠なテーマ性で観客を魅了してきた。その烏丸から、葉羽宛に手紙が届いたのだ。一体、何が書かれているのだろうか。
彩由美が戻ってくると、葉羽は彼女に別れを告げ、急いで自宅へと向かった。自宅に着くと、葉羽は早速封筒を開けた。中には、一枚の招待状と手紙が入っていた。
招待状には、烏丸が新たにオープンする劇場「アビュッソ・テアトロ」で上演される没入型演劇「深淵への招待」の特別公演への招待が記されていた。手紙には、烏丸の直筆で葉羽への期待と激励の言葉が綴られていた。
「深淵への招待」…その題名に、葉羽は言いようのない不安を感じた。地下室の夢が脳裏をよぎる。しかし、同時に、好奇心を抑えることはできなかった。烏丸の新作を、誰よりも早く観ることができるのだ。
公演は三日後。葉羽は、その日を心待ちにするようになった。
公演当日、葉羽は指定された時間に「アビュッソ・テアトロ」を訪れた。古びた洋館を改装した劇場は、異様な雰囲気を纏っていた。蔦の絡まる石造りの外壁、重厚な木製の扉、ステンドグラスから漏れる妖しい光。葉羽は、劇場に足を踏み入れる前から、言い知れぬ圧迫感を感じていた。
受付で招待状を提示し、劇場内部へと案内される。中は薄暗く、ひんやりとした空気が漂っていた。壁には奇妙な絵画が飾られ、廊下の隅には等身大の人形が置かれている。人形は、まるでこちらを見ているかのように、不気味な微笑みを浮かべていた。
葉羽は、案内に従って地下へと続く階段を下りていった。階段は狭く、湿った空気がまとわりつく。壁に設置されたガス灯が、揺らめく光で足元を照らしていた。
階段を下りきると、そこは広々とした地下空間だった。舞台装置や照明機材が所狭しと置かれ、多くのスタッフが行き来している。しかし、そこには奇妙な静寂が支配していた。誰もが口を噤み、緊張した面持ちで作業を続けている。
葉羽は、劇場スタッフに案内され、観客席へと向かった。観客席は、舞台を囲むように円形に配置されていた。座席は古びた木製で、背もたれには奇妙な文様が彫り込まれている。座席に腰を下ろすと、まるで何かに拘束されているかのような錯覚に陥った。
開演までまだ時間があったため、葉羽は劇場内を観察することにした。舞台は、巨大な鳥籠のような構造をしており、鉄格子で覆われている。舞台中央には、古井戸のような穴が開いており、底の見えない暗闇が広がっていた。
葉羽が舞台を見つめていると、背後から声をかけられた。
「ようこそ、神藤葉羽君。烏丸先生が君を招待したがっていた」
振り返ると、そこに立っていたのは、この劇場の演出家である白鳥奏だった。白鳥は、冷静沈着な雰囲気を持つ長身の男性で、銀縁の眼鏡をかけている。
「白鳥さん…お久しぶりです。烏丸先生は、お元気ですか?」
葉羽は白鳥に挨拶をした。白鳥は、無表情のまま頷いた。
「ああ、先生は元気だ。今は最終リハーサルの準備をしている。君には、この劇場の設計にも興味があると聞いていたが…」
「ええ、少しだけ。この劇場は…独特な雰囲気がありますね」
葉羽は言葉を選びながら答えた。白鳥は、薄く笑みを浮かべた。
「そうだろう? この劇場は、烏丸先生の理想を具現化したものだ。観客は、劇場に足を踏み入れた瞬間から、演劇の一部となる。現実と虚構の境界が曖昧になる、特別な空間だ」
白鳥の言葉に、葉羽は背筋が寒くなるのを感じた。この劇場は、ただの演劇空間ではない。何か、別の目的があるのではないか…。
「ところで、先生は君に会うのを楽しみにしておられた。案内しよう」
白鳥はそう言うと、葉羽を促して地下室の奥へと進んでいった。奥に進むにつれて、空気はより冷たく、重くなっていった。壁に設置されたガス灯の光も届かず、暗闇が深くなっていく。
「烏丸先生は、どこに?」
葉羽は不安を抑えながら尋ねた。白鳥は、立ち止まり、暗闇の奥を指差した。
「あそこだ。先生は、最終リハーサルの準備をしている」
白鳥が指差した方向には、小さな扉があった。扉は、重厚な鉄製で、錆び付いている。扉の隙間から、かすかに光が漏れていた。
「さあ、どうぞ」
白鳥に促され、葉羽は恐る恐る扉に近づいた。扉に手をかけ、ゆっくりと押し開ける。
扉の向こうは、小さな部屋だった。部屋の中央には、古びた机が置かれ、その上に蝋燭が灯されていた。蝋燭の光に照らされて、部屋全体が妖しく揺らめいている。
部屋の奥には、人影があった。その人物は、机に向かって座り、何かを書き付けているようだった。
「烏丸先生…?」
葉羽は、声をかけた。しかし、返事はない。
葉羽は、ゆっくりと部屋の中へと足を踏み入れた。蝋燭の光が、人影の背中を照らし出す。
その時、葉羽は異様な気配を感じた。何かが、おかしい。
人影は、全く動かない。まるで、彫像のように。
葉羽は、不安を覚えながら、人影に近づいた。そして、肩に手をかけた。
「…先生?」
次の瞬間、人影はゆっくりと椅子ごとこちらを向いた。
そこにいたのは、烏丸蔵人だった
「ねえ、葉羽君。今日の放課後、一緒に帰らない?」
隣席の望月彩由美が、小さな声で話しかけてきた。その声に、葉羽は現実に引き戻される。彼女の顔は、春の日差しを受けてほんのりと桜色に染まっている。
「ああ、彩由美か。構わないが…どうしたんだ、改まって」
葉羽は教科書から目を離さずに答えた。彩由美は、彼の素っ気ない態度にもめげず、にこりと笑う。
「最近、一緒に帰ってくれなかったから。何か考え事?」
「まあな…少し、気になることがあってね」
葉羽は視線を窓の外に向けた。校庭では、サッカー部の生徒たちが元気な声を上げながらボールを追っている。平和で穏やかな日常。しかし、彼の心には、拭い去れない違和感が渦巻いていた。
「気になること? 何? 試験のことなら心配しなくても大丈夫だよ。葉羽君なら、いつも学年トップじゃない」
彩由美は心配そうに葉羽の顔を覗き込む。彼女の言葉に、葉羽は苦笑した。
「試験のことじゃない。最近、妙な夢ばかり見るんだ。暗い地下室で、何かが蠢いているような…」
「地下室? 怖い夢だね…」
彩由美は身震いするように呟いた。葉羽は、彼女の不安そうな表情を見て、少し後悔した。夢の話などするべきではなかったかもしれない。
「心配するな。ただの夢だ。それより、今日は何か予定があるのか?」
「うん、放課後に本屋さんに行こうと思って。新しい漫画が出たから」
「そうか…」
葉羽は短く答えると、再び教科書に視線を落とした。彩由美は、彼の様子を窺っていたが、何も言わずに自分の席に戻った。
放課後、葉羽は彩由美と共に学校を出た。校門を出たところで、彩由美は「ちょっと待ってて」と言って、近くのコンビニエンスストアに駆け込んだ。葉羽は一人、校門の前に立ち尽くす。
その時、一通の封筒がポストに投函されるのが目に入った。封筒には、見覚えのある紋章が刻印されていた。烏丸蔵人の個人紋章だ。葉羽は、自分の胸が高鳴るのを感じた。
烏丸蔵人は、著名な劇作家であり、葉羽が敬愛する人物の一人だ。彼が主催する演劇は、常に斬新な演出と深遠なテーマ性で観客を魅了してきた。その烏丸から、葉羽宛に手紙が届いたのだ。一体、何が書かれているのだろうか。
彩由美が戻ってくると、葉羽は彼女に別れを告げ、急いで自宅へと向かった。自宅に着くと、葉羽は早速封筒を開けた。中には、一枚の招待状と手紙が入っていた。
招待状には、烏丸が新たにオープンする劇場「アビュッソ・テアトロ」で上演される没入型演劇「深淵への招待」の特別公演への招待が記されていた。手紙には、烏丸の直筆で葉羽への期待と激励の言葉が綴られていた。
「深淵への招待」…その題名に、葉羽は言いようのない不安を感じた。地下室の夢が脳裏をよぎる。しかし、同時に、好奇心を抑えることはできなかった。烏丸の新作を、誰よりも早く観ることができるのだ。
公演は三日後。葉羽は、その日を心待ちにするようになった。
公演当日、葉羽は指定された時間に「アビュッソ・テアトロ」を訪れた。古びた洋館を改装した劇場は、異様な雰囲気を纏っていた。蔦の絡まる石造りの外壁、重厚な木製の扉、ステンドグラスから漏れる妖しい光。葉羽は、劇場に足を踏み入れる前から、言い知れぬ圧迫感を感じていた。
受付で招待状を提示し、劇場内部へと案内される。中は薄暗く、ひんやりとした空気が漂っていた。壁には奇妙な絵画が飾られ、廊下の隅には等身大の人形が置かれている。人形は、まるでこちらを見ているかのように、不気味な微笑みを浮かべていた。
葉羽は、案内に従って地下へと続く階段を下りていった。階段は狭く、湿った空気がまとわりつく。壁に設置されたガス灯が、揺らめく光で足元を照らしていた。
階段を下りきると、そこは広々とした地下空間だった。舞台装置や照明機材が所狭しと置かれ、多くのスタッフが行き来している。しかし、そこには奇妙な静寂が支配していた。誰もが口を噤み、緊張した面持ちで作業を続けている。
葉羽は、劇場スタッフに案内され、観客席へと向かった。観客席は、舞台を囲むように円形に配置されていた。座席は古びた木製で、背もたれには奇妙な文様が彫り込まれている。座席に腰を下ろすと、まるで何かに拘束されているかのような錯覚に陥った。
開演までまだ時間があったため、葉羽は劇場内を観察することにした。舞台は、巨大な鳥籠のような構造をしており、鉄格子で覆われている。舞台中央には、古井戸のような穴が開いており、底の見えない暗闇が広がっていた。
葉羽が舞台を見つめていると、背後から声をかけられた。
「ようこそ、神藤葉羽君。烏丸先生が君を招待したがっていた」
振り返ると、そこに立っていたのは、この劇場の演出家である白鳥奏だった。白鳥は、冷静沈着な雰囲気を持つ長身の男性で、銀縁の眼鏡をかけている。
「白鳥さん…お久しぶりです。烏丸先生は、お元気ですか?」
葉羽は白鳥に挨拶をした。白鳥は、無表情のまま頷いた。
「ああ、先生は元気だ。今は最終リハーサルの準備をしている。君には、この劇場の設計にも興味があると聞いていたが…」
「ええ、少しだけ。この劇場は…独特な雰囲気がありますね」
葉羽は言葉を選びながら答えた。白鳥は、薄く笑みを浮かべた。
「そうだろう? この劇場は、烏丸先生の理想を具現化したものだ。観客は、劇場に足を踏み入れた瞬間から、演劇の一部となる。現実と虚構の境界が曖昧になる、特別な空間だ」
白鳥の言葉に、葉羽は背筋が寒くなるのを感じた。この劇場は、ただの演劇空間ではない。何か、別の目的があるのではないか…。
「ところで、先生は君に会うのを楽しみにしておられた。案内しよう」
白鳥はそう言うと、葉羽を促して地下室の奥へと進んでいった。奥に進むにつれて、空気はより冷たく、重くなっていった。壁に設置されたガス灯の光も届かず、暗闇が深くなっていく。
「烏丸先生は、どこに?」
葉羽は不安を抑えながら尋ねた。白鳥は、立ち止まり、暗闇の奥を指差した。
「あそこだ。先生は、最終リハーサルの準備をしている」
白鳥が指差した方向には、小さな扉があった。扉は、重厚な鉄製で、錆び付いている。扉の隙間から、かすかに光が漏れていた。
「さあ、どうぞ」
白鳥に促され、葉羽は恐る恐る扉に近づいた。扉に手をかけ、ゆっくりと押し開ける。
扉の向こうは、小さな部屋だった。部屋の中央には、古びた机が置かれ、その上に蝋燭が灯されていた。蝋燭の光に照らされて、部屋全体が妖しく揺らめいている。
部屋の奥には、人影があった。その人物は、机に向かって座り、何かを書き付けているようだった。
「烏丸先生…?」
葉羽は、声をかけた。しかし、返事はない。
葉羽は、ゆっくりと部屋の中へと足を踏み入れた。蝋燭の光が、人影の背中を照らし出す。
その時、葉羽は異様な気配を感じた。何かが、おかしい。
人影は、全く動かない。まるで、彫像のように。
葉羽は、不安を覚えながら、人影に近づいた。そして、肩に手をかけた。
「…先生?」
次の瞬間、人影はゆっくりと椅子ごとこちらを向いた。
そこにいたのは、烏丸蔵人だった
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