声の響く洋館

葉羽

文字の大きさ
上 下
9 / 11
9章

真実の扉

しおりを挟む
神藤葉羽は、洋館の静寂に包まれながら、再び日記を手に取った。失踪した友人たちの声、そして過去の住人たちの悲劇を解決するために必要な鍵を見つけ出すため、彼はページをめくる手を急がせた。彩由美は彼の隣で、心配そうに周囲を見渡しながらも、彼を支えるように静かに待っていた。

「鍵についての記述があったはず…」葉羽は日記に目を凝らした。彼は過去の住人がどのようにこの家に囚われ、どのように声に導かれたのかを解き明かそうとしていた。

やがて、彼は一つのページに目を止めた。そこには、鍵が隠されている場所についての記録があった。

**「家の中心にある大きな時計の中に、鍵が隠されている。」**

「時計の中に鍵がある?」葉羽はつぶやいた。「それなら、あの古い時計を探しに行こう!」

「でも、あの時計はどこにあるの?」彩由美は心配そうに尋ねた。

「家の中心にあるということだから、リビングのどこかにあるはずだ。急ごう!」葉羽は決意を持って立ち上がり、リビングルームに向かって足を進めた。

二人は急ぎ足でリビングへ戻り、部屋の中心にある古い時計の姿を確認した。時計は大きく、装飾が施されているが、年月の経過とともに色あせ、埃まみれになっていた。

「これが…その時計?」彩由美は目を輝かせた。

「そうだ、これが鍵の隠されている場所だ。」葉羽は時計に近づき、静かにその表面を手でなぞった。動かすと、時計の針が静かに回り、かすかな音を立てる。

「どうやって開けるの?」彩由美が尋ねる。

「まずは、どこかに隠し扉があるかもしれない。何か動かせる部分がないか、探してみよう。」葉羽は時計をじっくりと見つめ、周囲を探り始めた。

すると、時計の背面に小さなネジがあるのを見つけた。「ここに何かあるかもしれない。ネジを回してみるよ。」葉羽はネジを回し始めた。

すると、突然、時計がきしむ音を立てて動き、背面が開いた。中には、古びた鍵が隠されているのが見えた。

「見て!鍵だ!」葉羽は興奮して叫んだ。

彩由美もその光景に目を輝かせた。「本当にあったんだ…!」

葉羽は鍵を手に取り、しっかりと握りしめた。「これで、あの扉を開けられる!」

「でも、開けたらどうなるの?」彩由美は不安そうに言った。「何か恐ろしいことが待っているかもしれない。」

「それでも、俺たちは真実を知る必要がある。過去の声を解放するためには、恐れを乗り越えなければならないんだ。」葉羽は決意を固め、どっしりとした気持ちでリビングを後にした。

二人は、あの大きな扉の前に戻った。葉羽は鍵を扉の鍵穴に差し込み、静かに回した。カチッという音とともに、扉がゆっくりと開いた。

「行こう。」葉羽は彩由美を振り返り、彼女の手を優しく引いた。二人は扉を通り抜け、暗い部屋の中に足を踏み入れた。

部屋の中は薄暗く、ほこりが舞っていた。葉羽は懐中電灯を照らし、周囲を見渡した。壁には古い写真が掛けられており、それはかつてこの家に住んでいた人々の姿を映し出していた。

「この部屋、何か特別な感じがする…」彩由美は不安そうに言った。

「確かに。ここに何かが隠されている。過去の住人たちの思いが残っているのかもしれない。」葉羽は部屋の中央に進み、何か手がかりを探し始めた。

その時、ふと耳にした声が彼の心を引き裂いた。「助けて…」

「また、声が…」葉羽は驚き、彩由美の方を見た。

「どこから聞こえるの?」彩由美は恐れを抱きながら尋ねた。

「声の正体を知るためには、ここにあるものを探さないと。」葉羽は周囲を探り続けた。

やがて、彼は壁の一部が他の部分と異なることに気づいた。「ここ、何かが隠されているかもしれない。」葉羽はその部分に手を当て、押してみた。

すると、壁がゆっくりと開き、その奥に隠された小さな部屋が現れた。そこには、古い日記や手紙が散らばっている。

「これ、何だろう…」葉羽はその中から一冊の日記を拾い上げた。

「それ、何が書いてあるの?」彩由美は興味津々で尋ねる。

葉羽は日記を開き、ページをめくり始めた。そこには、家族の一人が書いた思いが綴られていた。

**「私は声を聞く。助けを求める声。だが、私はその声に導かれてしまった。逃げようとしても、逃げられない。」**

「やっぱり、声はこの家の悲劇と関係があるんだ…」葉羽はつぶやいた。

「この家族も、声に囚われてしまったの?」彩由美は不安そうに言った。

「そうだ。彼らも、声に引き寄せられ、永遠にこの家に囚われている。俺たちが真実を知ることで、彼らを解放する手助けができるかもしれない。」葉羽は日記を読み進めた。

ページをめくるごとに、過去の悲劇が明らかになっていく。失踪した友人たちの声が、この家族の未練と深く結びついていることが分かってきた。

「ここには、過去の住人たちが解放されるための手がかりがある。」葉羽は日記を手にし、決意を新たにした。「この声の正体を明らかにし、彼らを解放しよう。」

「私も手伝うよ、葉羽くん。」彩由美は勇気を振り絞り、彼のそばに立った。「一緒に真実を見つけよう。」

「ありがとう、彩由美。二人で力を合わせれば、きっと真実にたどり着ける。」葉羽は微笑み、再び部屋の中を探索し始めた。

果たして、彼らはどのような真実に辿り着くのか。そして、過去の悲劇を解消するために何をしなければならないのか。葉羽はその先に待ち受ける運命に、期待と不安を胸に抱きながら進むのだった。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『量子の檻 -永遠の観測者-』

葉羽
ミステリー
【あらすじ】 天才高校生の神藤葉羽は、ある日、量子物理学者・霧島誠一教授の不可解な死亡事件に巻き込まれる。完全密室で発見された教授の遺体。そして、研究所に残された謎めいた研究ノート。 幼なじみの望月彩由美とともに真相を追う葉羽だが、事態は予想外の展開を見せ始める。二人の体に浮かび上がる不思議な模様。そして、現実世界に重なる別次元の存在。 やがて明らかになる衝撃的な真実―霧島教授の研究は、人類の存在を脅かす異次元生命体から世界を守るための「量子の檻」プロジェクトだった。 教授の死は自作自演。それは、次世代の守護者を選出するための壮大な実験だったのだ。 葉羽と彩由美は、互いへの想いと強い絆によって、人類と異次元存在の境界を守る「永遠の観測者」として選ばれる。二人の純粋な感情が、最強の量子バリアとなったのだ。 現代物理学の限界に挑戦する本格ミステリーでありながら、壮大なSFファンタジー、そしてピュアな青春ラブストーリーの要素も併せ持つ。「観測」と「愛」をテーマに、科学と感情の境界を探る新しい形の本格推理小説。

霧崎時計塔の裂け目

葉羽
ミステリー
高校2年生で天才的な推理力を誇る神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、異常な霧に包まれた街で次々と起こる不可解な失踪事件に直面する。街はまるで時間が狂い始めたかのように歪んでいき、時計が逆行する、記憶が消えるなど、現実離れした現象が続発していた。 転校生・霧崎璃久の登場を機に、街はさらに不気味な雰囲気を漂わせ、二人は彼が何かを隠していると感じ始める。調査を進める中で、霧崎は実は「時間を操る一族」の最後の生き残りであり、街全体が時間の裂け目に飲み込まれつつあることを告白する。 全ての鍵は、街の中心にそびえる古い時計塔にあった。振り子時計と「時の墓」が、街の時間を支配し、崩壊を招こうとしていることを知った葉羽たちは、街を救うために命を懸けて真実に挑む。霧崎の犠牲を避けるべく、葉羽は自らの推理力を駆使して時間の歪みを解消する方法を見つけ出すが、その過程でさらなる謎が明らかに――。 果たして、葉羽は時間の裂け目を封じ、街を救うことができるのか?時間と命が交錯する究極の選択を迫られる二人の運命は――。

天井裏の囁き姫

葉羽
ミステリー
東京の名門私立高校「帝都学園」で、天井裏の囁き姫という都市伝説が囁かれていた。ある放課後、幼なじみの望月彩由美が音楽室で不気味な声を聞き、神藤葉羽に相談する。その直後、音楽教師・五十嵐咲子が天井裏で死亡。警察は事故死と判断するが、葉羽は違和感を覚える。

双極の鏡

葉羽
ミステリー
神藤葉羽は、高校2年生にして天才的な頭脳を持つ少年。彼は推理小説を読み漁る日々を送っていたが、ある日、幼馴染の望月彩由美からの突然の依頼を受ける。彼女の友人が密室で発見された死体となり、周囲は不可解な状況に包まれていた。葉羽は、彼女の優しさに惹かれつつも、事件の真相を解明することに心血を注ぐ。 事件の背後には、視覚的な錯覚を利用した巧妙なトリックが隠されており、密室の真実を解き明かすために葉羽は思考を巡らせる。彼と彩由美の絆が深まる中、恐怖と謎が交錯する不気味な空間で、彼は人間の心の闇にも触れることになる。果たして、葉羽は真実を見抜くことができるのか。

怪奇事件捜査File1首なしライダー編(科学)

揚惇命
ミステリー
これは、主人公の出雲美和が怪奇課として、都市伝説を基に巻き起こる奇妙な事件に対処する物語である。怪奇課とは、昨今の奇妙な事件に対処するために警察組織が新しく設立した怪奇事件特別捜査課のこと。巻き起こる事件の数々、それらは、果たして、怪異の仕業か?それとも誰かの作為的なものなのか?捜査を元に解決していく物語。 File1首なしライダー編は完結しました。 ※アルファポリス様では、科学的解決を展開します。ホラー解決をお読みになりたい方はカクヨム様で展開するので、そちらも合わせてお読み頂けると幸いです。捜査編終了から1週間後に解決編を展開する予定です。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

先生、それ、事件じゃありません

菱沼あゆ
ミステリー
女子高生の夏巳(なつみ)が道で出会ったイケメン探偵、蒲生桂(がもう かつら)。 探偵として実績を上げないとクビになるという桂は、なんでもかんでも事件にしようとするが……。 長閑な萩の町で、桂と夏巳が日常の謎(?)を解決する。 ご当地ミステリー。

処理中です...