「鏡像のイデア」 難解な推理小説

15章

虚像の彼方

「鏡の世界」。それは、人々の間で囁かれる都市伝説のようなものだった。この世界は、実は巨大な鏡の中に作られた虚像の世界であり、真の世界は鏡の向こう側に存在する。そんな突拍子もない話だが、葉羽は、この噂が真実である可能性を無視することができなかった。

記憶の断片、再構築された世界の違和感、そして異世界での出来事。これらの点と点が繋がり、一つの仮説を形成していく。葉羽は、鏡の世界の謎を解き明かすことが、全ての謎を解く鍵となると確信していた。

彼は、再び瓏琅教授を訪ね、鏡の世界の噂について相談した。教授は、その噂を既に知っていた。そして、教授自身も、鏡の世界の存在を信じているようだった。

「神藤くん、君は…異世界で…時を操る力を使った…その代償として…君は…大切な記憶を失った…そして…世界は…再構築された…私は…それが…鏡の世界の力によるものだと考えている…」

教授の言葉は、葉羽の仮説を裏付けるものだった。彼は、鏡の世界の力によって、記憶を失い、世界が再構築されたのだとしたら、鏡の世界の謎を解き明かすことで、失われた記憶を取り戻し、真の世界へと辿り着けるかもしれない。

葉羽は、鏡の世界の謎を解く手がかりを探すため、街をくまなく調査した。図書館で古い文献を読み漁り、博物館で古代の鏡を調べ、そして、鏡の世界の噂を知る人々に話を聞いた。

そしてついに、彼は一つの手がかりを発見した。それは、街外れの森の奥深くにある、古びた神社に伝わる伝説だった。

伝説によると、その神社には、異世界と繋がる「鏡の門」が存在するという。そして、その門を開くことができるのは、「鏡の巫女」と呼ばれる特別な力を持った女性だけだという。

葉羽は、藁にもすがる思いで、その神社を訪れた。神社は、深い森に囲まれ、人里離れた場所にひっそりと佇んでいた。長い年月を経た石段を登り、鳥居をくぐると、そこは静寂に包まれた神聖な空間だった。

神社の本殿で、葉羽は巫女と出会った。彼女は、白い着物に身を包み、神秘的な雰囲気を漂わせていた。葉羽は、彼女こそが伝説の「鏡の巫女」であることを確信した。

葉羽は、巫女に鏡の世界の伝説について尋ねた。巫女は、静かに頷き、語り始めた。

「この世界は…虚像です…真の世界は…鏡の向こう側にあります…鏡の門を開き…真の世界へ行くことができます…しかし…それは…危険な旅です…覚悟は…できていますか…？」

巫女の言葉は、葉羽の心を揺さぶった。彼は、真の世界へ行くことを決意した。彼は、失われた記憶を取り戻し、そして、この世界の真実に辿り着きたいと思っていた.

巫女は、鏡の門を開くための儀式を始めた. 彼女は、古びた鏡の前に立ち、神秘的な呪文を唱え始めた。

鏡の表面が光り輝き、まるで水面のように波打ち始めた. そして、鏡の中に、渦が出現した。それは、真の世界へと繋がる扉だった.

「さあ…行きなさい…真の世界が…あなたを待っています…」

巫女は、葉羽に言った。葉羽は、深呼吸をして、鏡の門へと足を踏み入れた。

渦の中は、眩い光で満ちていた。葉羽は、光に包まれながら、異次元空間へと旅立っていった.

彼が辿り着いたのは、美しく輝く世界だった。そこは、現実世界とも、鏡像迷宮とも、異世界とも異なる、全く新しい世界だった。

葉羽は、この世界こそが「真の世界」であることを確信した. そして、彼は、この世界で、失われた記憶を取り戻した。

彼は、自分が時を操る力を使った代償として、記憶を失ったことを思い出した。そして、彼は、自分が世界を再構築したことを思い出した。

葉羽は、鏡の世界の力を使い、理想の世界を創造したのだ。しかし、それは、真の世界ではなかった。それは、葉羽の願望が作り出した、虚像の世界だった。

葉羽は、真の世界で、彩由美と再会した. 彼女は、葉羽の記憶が戻ったことを喜び、彼を強く抱きしめた。

二人は、手を取り合い、真の世界を歩き始めた。葉羽は、もう二度と、虚像の世界には戻らないと決意した. 彼は、彩由美と共に、真の世界で生きていくことを決意した。

そして、二人は、真の世界の夜明けを見つめながら、新たな未来へと歩み始めた. 虚像の彼方で、真の世界が始まっていた.