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51.巻き添え
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「今日は雅楽代さんはいらっしゃらないんですね。」
「雪野くんが着いてますからご安心ください。」
棘がチクリとしたけど、雅楽代さんは私を送り出した。
雅楽代さんから貰った親指サイズのお守りをスーツの胸ポケットに仕舞った私は、帝国ホテルに来た。
今日は帝国ホテルで会議の後会食をする事になっている。
控え室代わりのスイートルームで、私は緊張で幾度となく髪を整えていた。
「明さんはその間どうするの?」
「隣の会議室で待機してる。」
「じゃあ安心だね。」
「体調が悪くなったら直ぐに呼んでや。」
「うん。」
部屋には明さんと高辻さんも待機していた。
開始の10分前の事だった。
訪ねて来た水無瀬さんは開口一番に言った。
「私の為に動かしている事を全て止めてください。」
「えっ・・・」
酷く寝不足なのを、いつもより濃い色のサングラスで水無瀬さんは隠していた。
「な、なんでですか!?」
「総理がご自身で動かない限り私の願いは叶わない。ですから、総理の機嫌を取る必要があるんです。神凪さんの行動を総理はご不快に思われていますから、直ちに止めて頂きたい。」
「総理が頷かなくたって周りが」
「貴女は政治を分かっていない!」
水無瀬さんが取り乱したのも、大声を出したのも初めての事だった。
「貴女は政府の要請に従っていればいいんです。今回の会議も、全ての依頼を受けていただければ丸く収まります。」
「政府の要求には底が無い。巫女様の政治利用に黙ってない国もぎょうさんある。このまま行けばどうなるか、わかってますよね。」
「それでも私にはこれしか方法が無い。」
「・・・わかりました。」
「・・・お気持ちは嬉しく思います。」
「水無瀬さん・・・?」
酷く追い詰められた人の顔だった。次の声を掛ける前に、水無瀬さんは部屋を出てしまった。
「水無瀬さん・・・」
「水無瀬さんがあんなに取り乱すなんて・・・」
「楓さん、ほんまにやめるん?」
「うん。水無瀬さんに言われたから。」
「そうか・・・それなら電話を」
突如鼓膜を強く揺らす程の爆発音と大きな揺れを感じた。
「何・・・!?」
「神凪さんこっちに!」
窓際に向かった私を、高辻さんは入口側に引き戻した。
近くのビルの上層階から煙が上がっていた。
「テロ・・・!!」
「一原タワービルでテロとみられる爆発が発生!!」
高辻さんはインカムに向かって叫んだ。
明さんは私達の荷物を掻き集めて、私を更に下がらせた。
「逃げよう。絶対に狙いは楓さんや。」
「私が狙いなのに、関係ない人達を殺したの・・・?」
アメリカで起きたテロ事件を思い出して体が震えた。
「今雪野さんが向かっています。雪野さんが到着次第避難しましょう。」
「このホテルにまで爆弾が仕掛けられてるかもしれへんやろ!」
「それは有り得ません。警備部が隅々まで確認しています。」
また爆発音がしてビルが揺れた。音はさっきよりも近かった。
「まさか別のビルも!?」
「雪野くんが着いてますからご安心ください。」
棘がチクリとしたけど、雅楽代さんは私を送り出した。
雅楽代さんから貰った親指サイズのお守りをスーツの胸ポケットに仕舞った私は、帝国ホテルに来た。
今日は帝国ホテルで会議の後会食をする事になっている。
控え室代わりのスイートルームで、私は緊張で幾度となく髪を整えていた。
「明さんはその間どうするの?」
「隣の会議室で待機してる。」
「じゃあ安心だね。」
「体調が悪くなったら直ぐに呼んでや。」
「うん。」
部屋には明さんと高辻さんも待機していた。
開始の10分前の事だった。
訪ねて来た水無瀬さんは開口一番に言った。
「私の為に動かしている事を全て止めてください。」
「えっ・・・」
酷く寝不足なのを、いつもより濃い色のサングラスで水無瀬さんは隠していた。
「な、なんでですか!?」
「総理がご自身で動かない限り私の願いは叶わない。ですから、総理の機嫌を取る必要があるんです。神凪さんの行動を総理はご不快に思われていますから、直ちに止めて頂きたい。」
「総理が頷かなくたって周りが」
「貴女は政治を分かっていない!」
水無瀬さんが取り乱したのも、大声を出したのも初めての事だった。
「貴女は政府の要請に従っていればいいんです。今回の会議も、全ての依頼を受けていただければ丸く収まります。」
「政府の要求には底が無い。巫女様の政治利用に黙ってない国もぎょうさんある。このまま行けばどうなるか、わかってますよね。」
「それでも私にはこれしか方法が無い。」
「・・・わかりました。」
「・・・お気持ちは嬉しく思います。」
「水無瀬さん・・・?」
酷く追い詰められた人の顔だった。次の声を掛ける前に、水無瀬さんは部屋を出てしまった。
「水無瀬さん・・・」
「水無瀬さんがあんなに取り乱すなんて・・・」
「楓さん、ほんまにやめるん?」
「うん。水無瀬さんに言われたから。」
「そうか・・・それなら電話を」
突如鼓膜を強く揺らす程の爆発音と大きな揺れを感じた。
「何・・・!?」
「神凪さんこっちに!」
窓際に向かった私を、高辻さんは入口側に引き戻した。
近くのビルの上層階から煙が上がっていた。
「テロ・・・!!」
「一原タワービルでテロとみられる爆発が発生!!」
高辻さんはインカムに向かって叫んだ。
明さんは私達の荷物を掻き集めて、私を更に下がらせた。
「逃げよう。絶対に狙いは楓さんや。」
「私が狙いなのに、関係ない人達を殺したの・・・?」
アメリカで起きたテロ事件を思い出して体が震えた。
「今雪野さんが向かっています。雪野さんが到着次第避難しましょう。」
「このホテルにまで爆弾が仕掛けられてるかもしれへんやろ!」
「それは有り得ません。警備部が隅々まで確認しています。」
また爆発音がしてビルが揺れた。音はさっきよりも近かった。
「まさか別のビルも!?」
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