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茨の道の第1歩

36.救国の魔女の言い伝え

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「呪いの件に話を戻しますが、この国に救国の魔女の言い伝えがあることはご存知ですか?」

「救国とは、国を救うという意味ですか?」

「ええ。異世界から現れし創造の魔女が国を救う、というものです。」

「創造は作る方ですよね。」

「ええ。今、私の目の前にいらっしゃいます。」

「私か...」

神様が救えと言うのだから、何かしら伝説でも残ってないかと思っていたけど、まさかそんなダイレクトな言い伝えがあったなんて。

「それを知っていて先程のお願いをされたのだと思っていたのですが...」

「味方になってもらおうと思っただけです。」

「今すぐ知らせましょうか?」

「いいえ。私はまだまだ未熟です。味方になってもらう代わりに受ける束縛を考えると、まだ時期尚早しょうそうなので、追い掛けられるくらいが丁度良いです。」

「わかりました。コノエ様、帝国は救国の魔女が現れる時を待ち望んでいます。」

「救国の魔女にその呪いを解いてほしいと。」

「はい。ですから、強引な手を使う可能性がありますし、思われているより探し出されるまで時間は無いでしょう。それと、こちらは言うまでもないと思いますが、魔管にはくれぐれもお気を付けを。」

「はい。」

「対魔管のレジスタンスがいますが、彼らには慎重に接してください。彼らは手段を選ばない。」

私のように考えている人達がいるのか。聞く限り関わらない方が良さそうだけど。

「ご助言ありがとうございます。沢山おまけを頂きましたが、追加が必要ですか?」

「まさか。呪いのことは、ここが田舎だから耳に入らないだけです。後どれだけおまけが必要か、震え上がる程釣り合いません。」

「ではもう1つ、お願いを聞いていただけませんか?」

「内容によります。どのようなお願いですか?」

「私に依頼を出してくだ さい。」

面白い、と言いたげに、ギルドマスターの口角は少し上がった。

「ギルドの設備と職員の働きやすい環境をより良くする、という仕事の依頼です。」

「クルミア村でしたことと同じことを我がギルドでもしたいんですね。」

「はい。既に私の考えうる限りでは用意が出来ています。」

「では、すぐに手続きをして、取り掛かっていただきましょう。」

「ありがとうございます。私が作った物には再現性が...誰がやっても同じものが作れます。ですので、他のギルドにも無償で広めていただけませんか。」

「承知しました。コノエ様がお作りになった物が良ければ、あっと言う間に広がることでしょう。」

早く広まれば広まる程、誰が私の情報を持っているのか特定が難しくなる。この返事は、私のその目論見に協力する、という事だ。

私は立ち上がり、深く礼をした。

「素性のわからない私の要望を聞いていただき、誠にありがとうございます。」

「頭を上げてください。先程職員から、コノエ様の実績と人柄は聞いて、信用に足る方だと判断しました。それで十分です。」

「では早速」

「私からも一つ、頼みたいことがあります。」

「はい。」

ギルドマスターはわざわざ立ち上がって頭を下げた。

「皇子を呪いから救っていただけませんか。」

「神様が解けと言った呪いが何なのかわかりませんが、皇子の呪いが関係しているなら善処します。」

とてもじゃないけど、安請負はできなかった。
例え神様にそのための力を授けられていても、魂の一生に関わることを、軽くは扱えない。
この世界に来て初めて、私は自分に課せられた使命の重みを感じた。

その後、私はギルドで、ギルドマスター立ち会いの元、プレゼンを行って、その日のうちに作業に取り掛かった。
 
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