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試験に向けて
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冒険者組合を後にして、ココとククリに連れられ商店街へとやってきた。
「まずは服が必要だね」
「この服ではマズいんですか? 割と頑丈で動き易いんですけど」
「不変の島で生活していて一つのほつれも無い時点でそんなのはわかり切っているんだけど、問題はこの世界の素材じゃないってことなんだよね。センリは変に目立ちたくないんだろうなって思ってたんだけど?」
「……たしかに。そうですね。あまり転移してきたというのを吹聴する気もありませんし、目立たないに越したことはありません。郷に入っては郷に従えとも言いますし」
「その例えはよくわかんないけど。あ、それと敬語も要らないよ~。この世界じゃあ貴族様と話すときくらいにしか丁寧な言葉を使わないし、それ以外だと商人とか? だから、敬称も要らないし気軽に話すほうが馴染むかもね」
「それは……まぁ、どっちでもいいんだけど、それだとココは?」
「私のは癖みたいなものなので気になさらなくても大丈夫です」
長命なエルフだからか、それともココ自身が高貴な出の可能性もあるが本人たちが話さないのなら気にする理由もない。
「なるほど。じゃあ、とりあえず服屋か」
連れられてきた服屋には量産品ではない服が並んでいる。麻っぽい触り心地だが、それにしては強度がありそうだ。
「これはなんの素材を使ってるんだ?」
「魔蜘蛛っていう魔獣が出す蜘蛛の糸かな? こっち側は普通の人が買う用の安い服で、向こうが冒険者とか傭兵用の服だから見に行こっか」
蜘蛛の魔獣の畜産をして糸を生産しているのか。蚕から絹を作り出しているようなものだな。
「魔獣の素材は割と使われるのか?」
「普通の服なら麻に魔蜘蛛の糸を混ぜたものが多いね~。うちらが着てるのは鉄の糸とかオリハルコンの糸を織り込んだ強度の高い服で、そもそもの値段が高いから買える人も限られてるんだよね」
「鉄の糸はまぁわかるけど、オリハルコンの糸? それも魔獣の素材なのか?」
「鉄蜘蛛から鉄の糸が取れるし、オリハルコン蜘蛛からオリハルコンの糸が取れるね」
一気に知らない世界のファンタジー感が前面に出てきたな。
「なるほど。……で、どういうのがいいんだ?」
種類も多いし、どういう服が冒険者に向いているのかわからない。バンジョーたちは割と自由な格好をしていたが、フクダイは盾役だからか革鎧を身に付けていた。ココはぴっちりとしたラバーっぽいスーツの上にズボンとゆったりした上着を羽織り、ククリは七分丈のズボンにお腹の出た胸元部分だけの服に上着を羽織っている。
男物はさて置くとして、女物は肌面積の多い服が並んでいる。ビキニアーマーとか、実在しているんだな。
「こういう布面積が少ない服だと強度も何も無い気がするな」
「それは加護の効果を高めるためですね。男性にはあまり関係ありませんが、女性の場合は肌の露出が多いと何故か加護の効果が高まるので、結果的に強度が下がるとも言いにくいんです」
「加護は身体強化がメインなのか?」
「そうですね。訓練所では加護の強化も学べます。まぁ、戦闘に使えるほどの身体強化が使える者はあまり多くありませんが。あと、これをどうですか?」
ココが持ってきた服を受け取った。
厚めだが硬くはないズボンと、長袖のぴっちりとしたインナーとヘンリーネックのシャツ。それと筒状のボディバッグはポーチの代用かな。俺の持っているバッグだとデカすぎるし、これくらいが丁度いい。
「じゃあ、これにしようか」
「あとは武器も持ってたほうがいいね~。冒険者と傭兵は割と見た目の装備で舐められがちだし」
「俺が作った木刀とか伐採用の鉈じゃダメなのか?」
「木剣は訓練用だし、鉈は武器として認識されないから微妙かも」
「なるほど。……なら、それらしいのを新しく作ったほうが早そうだな。他に必要なものは?」
「あとは……魔石でしょうか」
「でもセンリには魔力が無いんだから使えないんじゃない? 生活魔石を使うにもちょっとの魔力は必要だしね」
「生活魔石?」
「魔物から取れる魔石を魔石加工師が加工したものだね。火の魔石なら火が点くし、水の魔石なら水が出るし、光の魔石なら明かりが点く。うちらは小型の持ち運び用の生活魔石を持ち歩いているけど……宿で試してみようか」
服とバッグを買って宿へ。
「ここは冒険者御用達の宿屋です。冒険者免許を見せれば融通してくださりますし、各国に支店があるので資格を取れたら重宝すると思いますよ」
肩書きの強さだな。さっきの服屋も二人に対して腰が低そうにしていたし、それほどまでにこれまでの冒険者の功績が大きいということだろう。
二つ取った部屋の一つに集まると、ククリが取り出した魔石をベッドの上に並べた。
「赤いのが火の魔石で、魔力を込めると火が点くけど魔力を込めた本人は熱くないし引火もしない。こっちの青いのが水の魔石で、魔力を込めると水が出てくるから容器に入れると一杯になるまで水が溜まる。で、こっちの黄色っぽいのが光の魔石で、魔力を込めると光り出す。というか、魔術師の塔で似たようなの使ってなかった?」
「あ~、あれは……簡単に言えば昼間の明かりを吸収して夜に使えるっていう俺のいた世界の道具だな。魔力とかは必要ない」
ソーラーパネルとか蓄電とかの説明が面倒だし、まぁ間違ったことは言ってない。
「とりあえず試してみたほうが早そうですかね」
渡された火の魔石を指で抓む。
「……で、どうやって使うんだ?」
「何も起きないですか? ちょっと失礼します」そう言ってココが手を重ねてきた。「……これは……たしかに、センリさんには魔力を感じませんね」
「まぁ、そもそもの体のつくりが違うことを思えば当然だな。魔石が使えないとしても火は起こせるし、明かりも付けられるし、水もどうにかなる。他に困ることはあるか?」
「生活魔石で出来る範囲なら無いかなぁ……魔石を埋め込んだ魔道具も使えないけど、武器ならセンリが作った物のほうが強い――というか希少だし、大丈夫じゃない?」
「問題ないならそれでいいか。で、明日の実技試験なんだが何をするか知っているか?」
「試験の内容は試験官によって変わるので難しいですが……フィズナ山脈であれば魔物狩りや素材採集、サバイバルという可能性もあります」
「魔物や素材に関しては知識が無いからなぁ。クラウンって人は知り合いなんだろ? 予想は付くか?」
「ん~……そもそも今までの実技試験は試験官とか魔物との一対一で強さを確認するものだったから、今回みたいなのは初めてなんだよねぇ」
俺が参加するから急遽試験内容を変えたってことは無いだろう。どちらかと言えば今の戦争状態を加味してのものだと思うが、そこら辺の事情は冒険者になってからでいい。
「そういえば新しい武器を作ると言っていましたよね? 作っているのを見学していてもよろしいですか?」
「もちろん。俺の荷物もココに運んでもらっているし」
「んじゃあ、うちは今のうちにご飯でも買ってこようかな」
ククリが買い物に行き、ココには竹と木片を取り出してもらった。
木刀では訓練用感があるからダメだということは、木材感が無いものを作ればいい。この世界の遠距離攻撃が弓か魔法ならば、接近戦武器として槍が優秀なのは間違いない。センケツに渡したような槍が作れなくも無いが、問題は向かうのが山脈――つまり、山の中ということだ。長物を振り回すには適さないし、常に手に持っていないといけないのもリスクがある。慣れない土地というか、山歩きでは両手が空いているに越したことない。
だとすれば、作るものは決まった。
「よし、竹光だな」
「たけみつ? とは、なんですか?」
「この世界では両刃の剣が標準的な武器だと思うが、俺のいた世界――国では片刃の剣が基本なんだ。それを刀と言って、竹でその刀を模して作った物を竹光と呼ぶ。たぶん、見た目的には普通の武器っぽくなると思う」
竹を割って刀の形に整えていく。日本刀らしく刃に角度を付けて、柄は木片を使って別で作る。差し込む穴を掘るのが大変だが、木も竹も丈夫だからどれだけ薄くしても変に力を込めなければ壊れることは無い。
木の柄に竹の刀身を嵌めて楔を打ち余計な部分を切り落とす。木片で作った鍔を嵌めて刀身の根元から柄を縄で結ぶ。これでとりあえずは完成だが、そのまま持ち歩くわけにはいかない。さすがに鞘を作るのは難しいから何か代用できるものは……布か?
頭に巻いている手拭いの予備で刀身を包み、その周りに島で作ったロープを巻き付ける。不変の島の物は意識しなければ切ったり曲げたりできないから、俺自身がこれを鞘だと思っている間はロープが解けることも無い。ついでにロープで腰に固定することも出来るし一石二鳥だ。
「……これは……たしかに武器ですね」
「まぁ、あくまでも見た目だから使うかどうかは微妙だけど」
おそらくこの竹光でも人は殺せる。だが、異世界に転移したからといってその辺りの倫理観を失っているわけでも無い。動物は生きるために狩るし食べるが、それは地球でも同じこと。人は当然、仮に人型の魔物がいたとしても……たぶん、俺には殺せない。まぁ、今のところはこの世界における役割もわかっていないし、しばらくは血生臭いことに関わらないようにしたいが、そうもいかないんだろう。
「ご飯買ってきたよ~」
帰ってきたククリは、野菜とチーズを挟んだパンをココに、肉と野菜とチーズが挟まった硬めのパンと俺とククリで、それぞれに葡萄酒を渡した。
「代金は?」
「今回は貸しとくよ。先のことを考えたら恩を売っとくのも手だと思ってね~」
「俺としては島からこの街へ、しかも冒険者になるための渡りまでつけてもらっただけでも返し切れない恩だと思っているけどな」
パンは硬いが野菜の水分と溢れ出る肉汁で程よく柔らかく、チーズの塩気がよく合う。肉は牛肉っぽいが、なんの肉かは聞かないでおこう。
とはいえ、食文化の水準はそれなりだな。味の薄さは気になるが地域的なものかもしれないし、街中には屋台も多く出ていた。魚料理も目に付いたし、冒険者試験が終わったらのんびり食べ歩きでもしようかな。
食事もそこそこに、明日の準備をして今日は眠るとしよう。
「まずは服が必要だね」
「この服ではマズいんですか? 割と頑丈で動き易いんですけど」
「不変の島で生活していて一つのほつれも無い時点でそんなのはわかり切っているんだけど、問題はこの世界の素材じゃないってことなんだよね。センリは変に目立ちたくないんだろうなって思ってたんだけど?」
「……たしかに。そうですね。あまり転移してきたというのを吹聴する気もありませんし、目立たないに越したことはありません。郷に入っては郷に従えとも言いますし」
「その例えはよくわかんないけど。あ、それと敬語も要らないよ~。この世界じゃあ貴族様と話すときくらいにしか丁寧な言葉を使わないし、それ以外だと商人とか? だから、敬称も要らないし気軽に話すほうが馴染むかもね」
「それは……まぁ、どっちでもいいんだけど、それだとココは?」
「私のは癖みたいなものなので気になさらなくても大丈夫です」
長命なエルフだからか、それともココ自身が高貴な出の可能性もあるが本人たちが話さないのなら気にする理由もない。
「なるほど。じゃあ、とりあえず服屋か」
連れられてきた服屋には量産品ではない服が並んでいる。麻っぽい触り心地だが、それにしては強度がありそうだ。
「これはなんの素材を使ってるんだ?」
「魔蜘蛛っていう魔獣が出す蜘蛛の糸かな? こっち側は普通の人が買う用の安い服で、向こうが冒険者とか傭兵用の服だから見に行こっか」
蜘蛛の魔獣の畜産をして糸を生産しているのか。蚕から絹を作り出しているようなものだな。
「魔獣の素材は割と使われるのか?」
「普通の服なら麻に魔蜘蛛の糸を混ぜたものが多いね~。うちらが着てるのは鉄の糸とかオリハルコンの糸を織り込んだ強度の高い服で、そもそもの値段が高いから買える人も限られてるんだよね」
「鉄の糸はまぁわかるけど、オリハルコンの糸? それも魔獣の素材なのか?」
「鉄蜘蛛から鉄の糸が取れるし、オリハルコン蜘蛛からオリハルコンの糸が取れるね」
一気に知らない世界のファンタジー感が前面に出てきたな。
「なるほど。……で、どういうのがいいんだ?」
種類も多いし、どういう服が冒険者に向いているのかわからない。バンジョーたちは割と自由な格好をしていたが、フクダイは盾役だからか革鎧を身に付けていた。ココはぴっちりとしたラバーっぽいスーツの上にズボンとゆったりした上着を羽織り、ククリは七分丈のズボンにお腹の出た胸元部分だけの服に上着を羽織っている。
男物はさて置くとして、女物は肌面積の多い服が並んでいる。ビキニアーマーとか、実在しているんだな。
「こういう布面積が少ない服だと強度も何も無い気がするな」
「それは加護の効果を高めるためですね。男性にはあまり関係ありませんが、女性の場合は肌の露出が多いと何故か加護の効果が高まるので、結果的に強度が下がるとも言いにくいんです」
「加護は身体強化がメインなのか?」
「そうですね。訓練所では加護の強化も学べます。まぁ、戦闘に使えるほどの身体強化が使える者はあまり多くありませんが。あと、これをどうですか?」
ココが持ってきた服を受け取った。
厚めだが硬くはないズボンと、長袖のぴっちりとしたインナーとヘンリーネックのシャツ。それと筒状のボディバッグはポーチの代用かな。俺の持っているバッグだとデカすぎるし、これくらいが丁度いい。
「じゃあ、これにしようか」
「あとは武器も持ってたほうがいいね~。冒険者と傭兵は割と見た目の装備で舐められがちだし」
「俺が作った木刀とか伐採用の鉈じゃダメなのか?」
「木剣は訓練用だし、鉈は武器として認識されないから微妙かも」
「なるほど。……なら、それらしいのを新しく作ったほうが早そうだな。他に必要なものは?」
「あとは……魔石でしょうか」
「でもセンリには魔力が無いんだから使えないんじゃない? 生活魔石を使うにもちょっとの魔力は必要だしね」
「生活魔石?」
「魔物から取れる魔石を魔石加工師が加工したものだね。火の魔石なら火が点くし、水の魔石なら水が出るし、光の魔石なら明かりが点く。うちらは小型の持ち運び用の生活魔石を持ち歩いているけど……宿で試してみようか」
服とバッグを買って宿へ。
「ここは冒険者御用達の宿屋です。冒険者免許を見せれば融通してくださりますし、各国に支店があるので資格を取れたら重宝すると思いますよ」
肩書きの強さだな。さっきの服屋も二人に対して腰が低そうにしていたし、それほどまでにこれまでの冒険者の功績が大きいということだろう。
二つ取った部屋の一つに集まると、ククリが取り出した魔石をベッドの上に並べた。
「赤いのが火の魔石で、魔力を込めると火が点くけど魔力を込めた本人は熱くないし引火もしない。こっちの青いのが水の魔石で、魔力を込めると水が出てくるから容器に入れると一杯になるまで水が溜まる。で、こっちの黄色っぽいのが光の魔石で、魔力を込めると光り出す。というか、魔術師の塔で似たようなの使ってなかった?」
「あ~、あれは……簡単に言えば昼間の明かりを吸収して夜に使えるっていう俺のいた世界の道具だな。魔力とかは必要ない」
ソーラーパネルとか蓄電とかの説明が面倒だし、まぁ間違ったことは言ってない。
「とりあえず試してみたほうが早そうですかね」
渡された火の魔石を指で抓む。
「……で、どうやって使うんだ?」
「何も起きないですか? ちょっと失礼します」そう言ってココが手を重ねてきた。「……これは……たしかに、センリさんには魔力を感じませんね」
「まぁ、そもそもの体のつくりが違うことを思えば当然だな。魔石が使えないとしても火は起こせるし、明かりも付けられるし、水もどうにかなる。他に困ることはあるか?」
「生活魔石で出来る範囲なら無いかなぁ……魔石を埋め込んだ魔道具も使えないけど、武器ならセンリが作った物のほうが強い――というか希少だし、大丈夫じゃない?」
「問題ないならそれでいいか。で、明日の実技試験なんだが何をするか知っているか?」
「試験の内容は試験官によって変わるので難しいですが……フィズナ山脈であれば魔物狩りや素材採集、サバイバルという可能性もあります」
「魔物や素材に関しては知識が無いからなぁ。クラウンって人は知り合いなんだろ? 予想は付くか?」
「ん~……そもそも今までの実技試験は試験官とか魔物との一対一で強さを確認するものだったから、今回みたいなのは初めてなんだよねぇ」
俺が参加するから急遽試験内容を変えたってことは無いだろう。どちらかと言えば今の戦争状態を加味してのものだと思うが、そこら辺の事情は冒険者になってからでいい。
「そういえば新しい武器を作ると言っていましたよね? 作っているのを見学していてもよろしいですか?」
「もちろん。俺の荷物もココに運んでもらっているし」
「んじゃあ、うちは今のうちにご飯でも買ってこようかな」
ククリが買い物に行き、ココには竹と木片を取り出してもらった。
木刀では訓練用感があるからダメだということは、木材感が無いものを作ればいい。この世界の遠距離攻撃が弓か魔法ならば、接近戦武器として槍が優秀なのは間違いない。センケツに渡したような槍が作れなくも無いが、問題は向かうのが山脈――つまり、山の中ということだ。長物を振り回すには適さないし、常に手に持っていないといけないのもリスクがある。慣れない土地というか、山歩きでは両手が空いているに越したことない。
だとすれば、作るものは決まった。
「よし、竹光だな」
「たけみつ? とは、なんですか?」
「この世界では両刃の剣が標準的な武器だと思うが、俺のいた世界――国では片刃の剣が基本なんだ。それを刀と言って、竹でその刀を模して作った物を竹光と呼ぶ。たぶん、見た目的には普通の武器っぽくなると思う」
竹を割って刀の形に整えていく。日本刀らしく刃に角度を付けて、柄は木片を使って別で作る。差し込む穴を掘るのが大変だが、木も竹も丈夫だからどれだけ薄くしても変に力を込めなければ壊れることは無い。
木の柄に竹の刀身を嵌めて楔を打ち余計な部分を切り落とす。木片で作った鍔を嵌めて刀身の根元から柄を縄で結ぶ。これでとりあえずは完成だが、そのまま持ち歩くわけにはいかない。さすがに鞘を作るのは難しいから何か代用できるものは……布か?
頭に巻いている手拭いの予備で刀身を包み、その周りに島で作ったロープを巻き付ける。不変の島の物は意識しなければ切ったり曲げたりできないから、俺自身がこれを鞘だと思っている間はロープが解けることも無い。ついでにロープで腰に固定することも出来るし一石二鳥だ。
「……これは……たしかに武器ですね」
「まぁ、あくまでも見た目だから使うかどうかは微妙だけど」
おそらくこの竹光でも人は殺せる。だが、異世界に転移したからといってその辺りの倫理観を失っているわけでも無い。動物は生きるために狩るし食べるが、それは地球でも同じこと。人は当然、仮に人型の魔物がいたとしても……たぶん、俺には殺せない。まぁ、今のところはこの世界における役割もわかっていないし、しばらくは血生臭いことに関わらないようにしたいが、そうもいかないんだろう。
「ご飯買ってきたよ~」
帰ってきたククリは、野菜とチーズを挟んだパンをココに、肉と野菜とチーズが挟まった硬めのパンと俺とククリで、それぞれに葡萄酒を渡した。
「代金は?」
「今回は貸しとくよ。先のことを考えたら恩を売っとくのも手だと思ってね~」
「俺としては島からこの街へ、しかも冒険者になるための渡りまでつけてもらっただけでも返し切れない恩だと思っているけどな」
パンは硬いが野菜の水分と溢れ出る肉汁で程よく柔らかく、チーズの塩気がよく合う。肉は牛肉っぽいが、なんの肉かは聞かないでおこう。
とはいえ、食文化の水準はそれなりだな。味の薄さは気になるが地域的なものかもしれないし、街中には屋台も多く出ていた。魚料理も目に付いたし、冒険者試験が終わったらのんびり食べ歩きでもしようかな。
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