再会ロマンス～幼なじみの甘い溺愛～

対決、そしてこれからもずっと

７

「まさか男？」

正直に言うべきなんだろうかと思案していたら、斉藤さんはフッと表情を緩めた。

「まぁいいや。ナツキさんとゆっくり話がしたかったんだ。行こうか」

そう言うと、ベンチに座っていた私の左の手首を掴んで強引に引っ張った。

「痛っ」

「あまり手荒な真似はしたくないんだ。叫んだり逃げようなんて考えは捨てて、おとなしくついてきて。余計なことをしたら、何をするか分からないよ」

斉藤さんは掴んでいた腕にグッと力を込め、私は痛みで顔を歪めた。
その力強さに私は逃げることも出来ず、誰かに助けを求めることも出来ない。
私は恐怖に震えながら斉藤さんについていくしかなかった。

駅の裏側に回り、斉藤さんは無言で歩く。
着いた場所は駅から少し離れた人通りの少ないコインパーキング。
今、ここで車に乗せられることは絶対に避けないといけない。
私は思いきって口を開いた。

「斉藤さん、どこに行くんですか？」

「君と二人きりになれるところ」

「私、約束があるんです」

「そのことだけど、今日はキャンセルしてもらって」

「それは無理です。どうしてこんなことを……」

「全部君が悪いんだろ！」

急に声を張り上げられて身体が竦んだ。
私が悪いってどういうこと？
意味が分からない。

「僕に黙ってあの惣菜屋を辞めたよね。突然辞めたと言われて絶望した僕の気持ちが君に分かるか？」

睨み付けるような目で私を見てくる。

「それも今日で終わりだ。やっと君に再会出来たんだから。君が黙っていなくなったことは許してあげる。これからはずっと一緒だよ。さぁ、車に乗って」

さっきとは打って変わって優しい声色で話して助手席のドアを開け、私に乗るように催促してきた。
身の危険を感じて私は必死に抵抗した。

「嫌です」

掴まれている手を振りほどこうとしたけど、斉藤さんはニヤリと口の端をつり上げる。

「無駄な抵抗だよ。君と僕とでは力の差があり過ぎる」

掴んでいた手にさらに力を入れてきて、爪が皮膚に食い込んだ。
とにかく逃げ出さないといけない。
私は掴まれていない反対側の手に持っていたバッグを斉藤さんに向かって力いっぱい振り上げると、ガツッと鈍い音がした。

「うっ」

バッグが斉藤さんの顔面に直撃すると足元がふらつき、彼に多少のダメージを与えることが出来た。
その影響で掴まれた腕が解放されたので、咄嗟に開いていた車のドアを閉めた。
ふと視界に入った私の左手首は赤くなり、爪跡までついている。

「こっちがおとなしくしていれば調子に乗って」

斉藤さんは痛みで顔を押さえながら舌打ちする。
今が逃げるチャンスなのに恐怖で足が竦んでしまい、それが叶わない。
せっかく解放されたのに……。
もうダメだと諦めかけた瞬間、ふわりと後ろから抱きしめられた。