上 下
94 / 115
愛を確かめ合う

しおりを挟む
「店の予約が平日だったから、服だけは違った雰囲気で食事が出来たらいいなと思ったんだ。気に入ってくれたらいいけど、どう?」

「すごく可愛い。よく私の好みが分かったねと思うぐらい」

ワンピースに視線を移し、照れながら口を開く。

「そうか、それはよかった。きっと、美桜に似合うだろうなと思って選んだから」

「ありがとう」

こんなワンピース、持っていなかったのですごく嬉しかった。
テツは私を甘やかしすぎていると思う。
なにかテツに返せれたらいいんだけど……。

「そろそろ行こうか」

テツが立ち上がり、私の横に置いていた紙袋を右手で掴んで左手を差し出してきた。
私も立ち上がってその手を握り、反対側の手でバッグを持って歩き出す。
こうしてテツと手を繋ぐのが自然にできるようになっている私がいた。

エレベーターに乗り込み、着いた先は最上階のスカイラウンジのイタリアンレストラン、『ミルジュ』。

「予約していた鳴海です」

「鳴海さまですね。お待ちしておりました。こちらにどうぞ」

係りの人に案内されたテーブル席は座りながらにして夜景を見ることができる。
しかもピアノの生演奏が聴ける贅沢な空間だ。

ノンアルコールのスパークリングワインで乾杯し、前菜を食べる。
真鯛のカルパッチョ、生ハムと季節の彩り野菜サラダ、オマール海老のトマトソースパスタを食べ進める。
牛肉の赤ワイン煮込みまで食べるとお腹がいっぱいになってくる。
だけど、最後の自家製の桃のジェラートが出てきて私は普通にスプーンですくって食べていた。
ミルクベースのジェラートに桃の果肉が混ざっている。

「美味しい」

その美味しさをテツと共有したくて正面を向くと、目を細めて私を見つめていた。

「な、なに?」

「いや、食べている姿も可愛いなと思って」

テツは照れた様子もなく、当たり前のようにそんな言葉を口にするので私は顔を赤くする。

「そうだ、これ」

テツはリボンのついた長細い箱をテーブルの上に置いた。

「私に?」

「ああ。開けてみて」

私はそれを受け取ると、リボンをほどき箱を開けた。
その中には、ピンクゴールドの桜をモチーフにしたネックレスが入っていた。

「可愛い」

「気に入った?」

「うん」

「美桜と住み始めてから考えていたんだけど、何か俺の選んだものを身に着けてもらいたかったんだ。だから、知り合いのジュエリーデザイナーに協力してもらってオーダーメイドで作ったんだ」

「オーダーメイドなの?」

「ああ。出来上がるのが今日で、早く渡したくて仕事終わりに取りに行っていたんだ。平日で美桜にはバタバタさせてしまったけど」

予約を平日にしたのはそんな理由だったんだ。
でも、なんの記念日でもないのにプレゼントをもらってもいいのかな。
それにワンピースや靴も買ってもらっているのに。

テツは立ち上がり、私の横に来ると箱の中からネックレスを手に取った。
背後に回り、私の首にネックレスをかけてくれた。
目線を下に向けると、私の胸元で桜のネックレスがキラリと輝いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

シングルマザーになったら執着されています。

金柑乃実
恋愛
佐山咲良はアメリカで勉強する日本人。 同じ大学で学ぶ2歳上の先輩、神川拓海に出会い、恋に落ちる。 初めての大好きな人に、芽生えた大切な命。 幸せに浸る彼女の元に現れたのは、神川拓海の母親だった。 彼女の言葉により、咲良は大好きな人のもとを去ることを決意する。 新たに出会う人々と愛娘に支えられ、彼女は成長していく。 しかし彼は、諦めてはいなかった。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

今更だけど、もう離さない〜再会した元カレは大会社のCEO〜

瀬崎由美
恋愛
1才半の息子のいる瑞希は携帯電話のキャリアショップに勤めるシングルマザー。 いつものように保育園に迎えに行くと、2年前に音信不通となっていた元彼が。 帰国したばかりの彼は亡き祖父の後継者となって、大会社のCEOに就任していた。 ずっと連絡出来なかったことを謝罪され、これからは守らせて下さいと求婚され戸惑う瑞希。   ★第17回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました。

契約書は婚姻届

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」 突然、降って湧いた結婚の話。 しかも、父親の工場と引き替えに。 「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」 突きつけられる契約書という名の婚姻届。 父親の工場を救えるのは自分ひとり。 「わかりました。 あなたと結婚します」 はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!? 若園朋香、26歳 ごくごく普通の、町工場の社長の娘 × 押部尚一郎、36歳 日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司 さらに 自分もグループ会社のひとつの社長 さらに ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡 そして 極度の溺愛体質?? ****** 表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています

朱音ゆうひ
恋愛
恋人に浮気された果絵は、弁護士・颯斗に契約結婚を持ちかけられる。 颯斗は美男子で超ハイスペックだが、冷血弁護士と呼ばれている。 結婚してみると超一方的な溺愛が始まり…… 「俺は君のことを愛すが、愛されなくても構わない」 冷血サイコパス弁護士x健気ワーキング大人女子が契約結婚を元に両片想いになり、最終的に両想いになるストーリーです。 別サイトにも投稿しています(https://www.berrys-cafe.jp/book/n1726839)

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

処理中です...