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素直に気持ちを伝える

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「そうか、足りないものは……。水上副社長、さっきの案に和も取り入れてもらってもいいですか?現代的でスタイリッシュないいデザインでしたが、あれに和のテイストを取り入れたらどうなるか見てみたいです」

「なるほど、和ですか。分かりました。洋風をベースに和風の要素も取り入れて考えてみます」

「そうしてもらえると助かります」

副社長と上村社長は真剣に話し合っている。
私はその場に佇み、どうしたらいいのか思案していたら上村社長が優しく声を来てきた。

「美桜さん、あなたの助言のお陰でいいものが出来そうです。ね、水上副社長」

上村社長は嬉しそうに言って副社長に視線を向けた。

「いえ、私は何もしていないですけど……お役に立てたのならよかったです」

頭にはてなマークを浮かべながら答える。
チラリと副社長を見ると、自信に満ちた表情で口を開いた。

「上村社長のご期待に応えれるようなデザインを仕上げたいと思います」

「楽しみにしています。じゃあ行こうか」

上村社長は部下の人を引き連れて事務所を出た。
私は会釈して見送った。

それにしてもすごい偶然だったな。
人との縁や繋がりは本当に大事なんだと気づかされる。

安子さん元気にしてるかな、なんて考えながら会議室の片づけを始めた。
コーヒーカップを下げ、テーブルを布巾で拭いてアルコール消毒する。
給湯室でコップを洗い、食器乾燥機の中に入れた。
片付けが終わり、自分の席に戻ろうとしたら副社長に呼び止められた。

「美桜ちゃん、さっきはありがとう」

「えっ?私、何もしてませんけど」

「上村社長と知り合いだったんだな」

「知り合いというか上村社長は何度もお店にお弁当とか買いに来てくれていたので顔を覚えていたんです。社長の奥さんのお義母さんとはよく話をしていたので、まさかそんな繋がりがあるなんて知らなくて驚きましたが」

何度かお店に通ってくれた人の顔は覚えるけど、見たことがある程度だ。
だから上村社長も見たことがある部類だった。

「そうか。でも、美桜ちゃんのお陰で方向性が決まったからな。これで俺も満足してもらえるデザインを提案できそうだ」

本当に何もしていないんだけどな、と思いながらも副社長の仕事が進みそうでよかった。

「ということで、今日の歓送迎会、しっかり盛り上げるからね」

副社長はそう言って笑い、半個室のスペースへ向かい手に持っていたノートパソコンを起動させていた。
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