雫物語~鳳凰戦型~

くろぷり

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騎士への道

神話の世界へ3

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「あの……あなた様達は、その女性を襲っていられるのですか? 私には、その様に見えないのですけど……」

「あなた……一体、どこから出て来たの? 私が、こんなに接近を許すなんて……」

突然……何も無いところから瞬間移動でもしてきた様に現れた女性に驚きながらも、智美は美羽を庇うように剣を構える。

「ですよね……やっぱり、守っている様にしか見えないわ。ごめんなさい、確実に勘違いでしたね」

純白の修道服に見を包んだ女性が、智美の答も聞かずに白騎士に止まるように大声を上げた。

しかし……

一度振り上げた剣は、収める事が出来ない。

エアの剣とカリバーンは、二回・三回とぶつかり合い、少し離れて再び激突する。

「おい、アンタのツレが止まれって言ってんぞ! 何だかよく分かんねぇけど、今謝れば許してやるよ!」

「外道相手に、謝る口は持ち合わせていないんでね! お前達が女性を解放するまで、止まるつもりはない!」

叫んだガラードの横から、槍が鋭く突き出された。

「ちっ、2対1か……だが、どんな不利な条件だろうが、自分の信念は貫く! それが、本物の騎士のあるべき姿だ!」

絵美の天沼矛を巨大な白い盾で防いだガラードは、地面を蹴って距離をとる。

「しかし……外道共にしては、腕が立つ。多少、傷つくのは覚悟しなきゃいけないな……」

カリバーンの鞘を撫でたガラードは、特攻するかの如く航太に迫った。

「ちっ! 面倒臭いな! 人間相手に本気で戦いたくないんだが……仕方ねぇ!」

「うん、そうだね。正面より、背後を気をつけた方がいいかも!」

ポヨヨーン

突然、背後から振り下ろされた金砕棒が、航太の後頭部を守るように展開した水の球体によって弾かれる。

そして正面から襲いかかるガラードのカリバーンを、絵美は天沼矛で防ぐ。

「私達の事を外道とか言っておいて化け物に不意打ちさせるなんて、あなたもなかなかね! ちょっとオコかも!」

「ミーちゃん! もー手を抜く必要ないでしゅよ~! 必殺、ファイナルウォータースラッシュをお見舞いするでしゅよ~。シュババババーン!」

絵美の肩の上で白い羽を剣に見立てて振る仕種をするガーゴに、一瞬全員の時間が止まる。

「ちげぇ! なんか、後ろから鈍器で襲われた気分だぞ! 絵美がいなきゃ死んでたぜ!」

背後に感じる巨大な影から距離をとった航太は、エアの剣を構え……そして、驚く。

敵の顔があるであろう場所は、鍛えられた筋肉質の胸が見える。

更に、恐る恐る視線を上に上げると、3メートルはあるであろう巨体の顔が見えた。

「なんてこった……神話の世界にゃ、妖怪もいるのか? これ、一つ目小僧だろ?」

「いや、航ちゃん……一つ目小僧なんて失礼だよ。一つ目巨人なんだし……」

いや、そこかよ! と、絵美に突っ込もうとした航太の視線に、驚いているガラードの表情が映った。

「奴も知らなかった……って事なのか? まぁいい。化け物相手に手加減なしだ! 絵美、そっちの男は任せた!」

「はーい。でも、誤解なんだよねー。誤解を解いた方が早くない?」

一つ目の巨人の相手をする事しかない航太を見ながら、絵美は溜息をつく。

「ミーしゃん! 今こそ、超必殺ファイナルウォータースラッシュメガドライブアタックを放つでしゅよ~」

「はぁ……なんか必殺技の名前にゲーム機入っちゃってるし……その技がどんな技かも分からないし……ついでに、白い騎士さんも戦う気が失せちゃったみたいだし……どーしよ」

天沼矛を地面に突き刺して考え込む絵美を見て、ガラードは慌てる。

「おい、マックミーナ族の戦士相手に、1人で戦わせるつもりか? せめて共闘して、こちらの生存率を上げるんだ!」

「んー……航ちゃんなら、大丈夫じゃないかな? 巨人1匹相手ぐらい、問題ないよ。パワータイプなら、余計にね」

絵美の言葉を聞きながらも、カリバーンを構えて一つ目の巨人を攻撃しようとするガラード。

が……その視線の先では、驚きの光景が広がっていた。

1体でも、各国騎士団の中隊ぐらい滅ぼす力があると言われるマックミーナ族。

そのマックミーナ族の巨大な身体から繰り出される金砕棒が、航太の身体を叩く直前であらぬ方向に軌道を変える。

まるで強い風に煽られて、無理矢理軌道を変えられているかのようだ。

勝負は一瞬だった……金砕棒の軌道を変えられ、バランスの崩した一つ目の巨人の首が飛ぶ。

防ぐ事すら許されない、疾風の如き風の刃……

「強い……この者達は、何者なんだ……」

呟いたガラードの頬を、爽やかな風が摺り抜けていった……
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