107 / 222
ロンスヴォの戦い
戦いの後
しおりを挟む「うわぁぁぁぁ!!」
腕を縛られているガヌロンは、裂けていく大地から間一髪逃れた。
転がりながら、ロキとビューレイストの方へ向かっていく。
テューネの放った一撃は、尽くロンスヴォの大地を裂いた。
その亀裂は、オルフェやテューネのいるベルヘイム側と、ロキやビューレイストのいるヨトゥン側とに綺麗に割ける。
「デュランダルの第3形態でも、この程度か…………皇の目を発動していないから分からんが…………レンヴァル村の大地を吹き飛ばせる程の力は無いかもな…………」
テューネの一撃は、ロンスヴォの大地を裂いた。
この程度…………と言われるような、弱い一撃ではない。
しかし、ロキもビューレイストも、やや不満な表情を浮かべている。
「やはり…………デュランダルの持ち主をテューネにする為に、ランカストを殺す為の私の策に乗っかったな!!」
ロキとビューレイストの言葉と表情を見て、ガヌロンは叫んだ。
「で??もし、そうだとして、貴様は我々に何をして欲しいんだ??そもそも、この状況…………ここで全員を殺して、ベルヘイム遠征軍をクロウ・クルワッハの部隊と挟撃すれば、貴様達の全滅は免れない。有利なのはコチラなのだが??」
そう……………
たとえガヌロンが言っている事が正しくても、現状で有利なのはロキの方だ。
まだ、ガヌロンの言っている事に証拠があり、大義名分でもあれば命を投げうってでも、戦ってもいいのかもしれない。
しかし、その証拠は何も無い…………
ビューレイストの言うとおり、ロキ側に有利な状況であるにも関わらず、ガヌロンの身柄を引き渡し、自軍に戻る事を許してくれている。
オルフェは、ロキとガヌロンは結託していた……………若しくは、ガヌロンの計画を見抜いて利用していたと考えていた。
ただ、そう思っていても、現状ではロキの提案に乗るしかない…………そして、その提案事態が自らの無実を証明するような提案でもある。
実際に現場にいない総大将であるアルパスターや国王陛下では、ガヌロンよりロキを信じてしまうだろう。
「ロキ殿…………ガヌロンとランカストの身柄は、ベルヘイム軍に持ち帰りたい。そして、我々全員がヨトゥン領外に出るまで危害を加えないと約束してほしい」
オルフェの提案に、ロキは頷く。
「今回の一件は、何が本当なのか…………判断は難しいが、その要求を飲む事で信用してもらうしかない。それと、ガヌロンと条約を結んだ件…………ベルヘイム軍を後ろから攻撃しないというのは、まだ生きていると思ってくれ」
ロキの言葉に、オルフェは素直に感謝した。
今のベルヘイム軍の目標は、姫を奪還する事…………ロキの部隊は、当面の敵ではない。
「では、ガヌロンをそちらに投げるぞ。受け取れ!!」
ビューレイストはガヌロンの襟首を掴むと、勢いよく投げつけた。
「ぐはぁ!!」
ガヌロンの身体は、ロキ軍とベルヘイム軍を分けている裂け目を通り越し、地面に叩きつけられる。
「くそっ!!ロキの奴めっ!!おい、オルフェ、奴が関わっていたのは分かるだろ!!私は騙されていただけだ!!直ぐに部隊を率いて、ロキと一戦交えるぞ!!」
「ガヌロン……………ロキの事は置いといても、少なくとも貴様はランカスト殺しの首謀者だ。その罪は償わせるぞ!!」
オルフェは、ガヌロンを睨んだ。
その傍らで、テューネがデュランダルを構える。
今にもガヌロンに斬りかかりそうな勢いだ。
「テューネ、気持ちは分かるわ…………でも、今はやめなさい。アルパスター将軍が、うまく裁いてくれるわ」
そんなテューネに、ゼークが優しく声をかける。
「分かってる…………ソフィーア様も言ってた…………ガヌロンを操ってる黒幕がいる…………それがロキかどうか分からないけど…………その黒幕だけは許さない。だけど今は……………」
そう言うと、テューネはデュランダルを鞘に戻した。
そこに、智美が亀裂を超えてゼークの近くに寄って来る。
「智美!!良かった!!無事だった……………ロキに変な事されてないよね??」
「大丈夫だよー。ロキさんは紳士だったし、凄く良くしてもらっちゃった。でも、私が捕虜になったせいで、なんだか大変な事になっちゃったね…………」
智美は、倒れているランカストと、縛られているガヌロンに視線を移しながら、複雑な表情を浮かべた。
「そんな…………智美のせいじゃないよ。ガヌロンはランカストを恨んでいた…………遅かれ早かれ、起こっていた事かもしれない。止めれなかった私達の力不足だよ…………」
そう言って肩を落とすゼークの言葉に、オルフェが頷く。
「そうだな…………俺達の力不足だ。ガヌロンの策を事前に気付いてれば、今回の事は食い止められていたかもしれない。だから…………もっと強くならないとな…………」
その言葉の重みに、ゼークと智美は気が引き締まった………
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
二位関りをん
恋愛
ナターシャは皇太子の妃だったが、数々の悪逆な行為が皇帝と皇太子にバレて火あぶりの刑となった。
処刑後、農民の娘に転生した彼女は山の中をさまよっていると、狼男のリークと出会う。
口数は少ないが親切なリークとのほのぼのスローライフを満喫するナターシャだったが、ナターシャへかつての皇太子で今は皇帝に即位したキムの魔の手が迫り来る…
※表紙はaiartで生成したものを使用しています。
パーティーから追い出された劣等賢者ですが、最強パーティーを育てて勇者を世界から追い出そうと思います。
遥 かずら
ファンタジー
全知全能の智者として勇者を支え、強く育て上げて来たと自負する賢者アクセリ。心の中では不満を抱えながらも、PTに貢献をして来た。
そんな中、気弱な勇者ベナークは魔王討伐後に態度が一変。女魔導士に命じ、重力呪詛系転移魔法を賢者に使用させる。
裏切りに気付いた賢者は怒りを覚えるも、世界のどこかに転移させられてしまう。呪詛により能力全てが弱くなっていたことに憤慨するも一人ではどうにも出来ないことを知る。
自分と似たあぶれ者に助けられたことをきっかけとし、勇者に復讐をすることを目的に動き始めるのだった。
勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。
朱本来未
ファンタジー
魔術師の大家であるレッドグレイヴ家に生を受けたヒイロは、15歳を迎えて受けた成人の儀で盗賊の天職を授けられた。
天職が王家からの心象が悪い盗賊になってしまったヒイロは、廃嫡されてレッドグレイヴ領からの追放されることとなった。
ヒイロは以前から魔術師以外の天職に可能性を感じていたこともあり、追放処分を抵抗することなく受け入れ、レッドグレイヴ領から出奔するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる