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レンヴァル村の戦い
不死身の最後
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「ぐっ………………おっ……………」
迫り来るエアの剣で身体を斬り刻まれるスリヴァルディだが、斬られたところから治癒されていく。
スリヴァルディの恐ろしさは、剣技でも力強さでもない。
防御を気にせずに攻撃に専念出来る為フェイントの類が全く通用せず、倒したと思っても、その瞬間に攻撃され、気の休まらない戦いが続く事である。
しかし………………
フードの被った男の斬撃は、スリヴァルディに攻撃する余裕を全く与えない。
腕が治癒した瞬間に斬り落とされ、頭を身体も同じように…………修復された場所から斬り落とされていく。
(このままでは………………身動きが取れない……………)
スリヴァルディは頭が修復される度に、周りの情報が少しだけ入って来る。
その間だけで、自分の兵達が確実に減らされているのが分かった。
フェルグスのカラドボルグから放たれる稲妻と剣撃により、ヨトゥン兵達は逃げ惑う事しか出来ない。
(くそっ……………フェルグスめ…………こちらが足止めされている間に、好き勝手やりやがって………………)
スリヴァルディは唇を噛み締めるが、その瞬間にまた斬り落とされる。
一瞬……………隙をついたスリヴァルディは、高速で動き回るエアの剣の軌道に自らのバスタード・ソードを滑り込ませ、剣先を微妙にずらす。
その影響で斬り落とされずに済んだ右足で、大きく後方に飛ぶ。
「ふぅ……………少しヒヤヒヤさせられましたが、もう貴方の間合いには入りませんよ……………それより、凰の目……………バロールに、カラドボルグより良い手土産が出来ました!!」
飛んでる間に身体の治癒を終えたスリヴァルディは、余裕を取り戻していた。
「そうですか………………だとすれば、ここのヨトゥン兵達は全員殺さなければいけなくなりますね……………やむを得ないですが……………」
フードを被った男は、少し悲しそうな表情を浮かべる。
その瞳は、赤から更に深い赤に変化していく。
そして、その背中に炎の羽根が生えたかのように見えた……………次の瞬間、その場所に火の粉のみを残し、身体は間合いを開いた筈のスリヴァルディの懐にまで移動している。
「な………………瞬間移動……………か?速過ぎる……………」
フードを被った男の動きは、もはやスリヴァルディの眼で追えるスピードでは無かった。
再び、高速の剣撃を浴びせられるスリヴァルディ……………
先程と違うのは、治癒する速度が若干落ちた程度だった……………しかし、スリヴァルディは焦りを覚える。
回復しても、ダメージが抜け切らないのだ。
(まさか……………これが、凰の目の力だとでも言うのですか……………このままでは……………………)
脱出を試みるスリヴァルディだが、風の力を利用し高速で動くエアの剣を捉える事が出来ない。
そして、その剣速は徐々にスピードを増していく。
更には、スリヴァルディを斬る度に鎌鼬が産み出される。
その鎌鼬は、ヨトゥン兵のみを斬り裂いていき、村人達に触れても何事も無かったかのように素通りしていく。
敵将と一騎打ちしながら、周りの敵兵を薙ぎ払っていく姿は圧巻だった。
一騎当千…………………そう呼ぶに相応しい姿が、そこにはある。
フェルグスもカラドボルグの動きを止め、暫し見つめてしまう程であった。
(こんな…………こんな馬鹿な事が…………だが、ロキの奴は思惑が外れたな。切り札は人間側が持っている……………と、言う事ですね……………ざまあみろ………………だ……………)
薄れていく意識の中で、ロキの悔しがる表情を思い描いたスリヴァルディは、嵐のような斬撃の中でほくそ笑む。
生き残れる可能性は無い……………スリヴァルディは生きる事を諦め、暴風のような斬撃の嵐に身を委ねる。
斬撃を受け始めて数分後、不死身のスリヴァルディは、ついに息を引き取った……………
迫り来るエアの剣で身体を斬り刻まれるスリヴァルディだが、斬られたところから治癒されていく。
スリヴァルディの恐ろしさは、剣技でも力強さでもない。
防御を気にせずに攻撃に専念出来る為フェイントの類が全く通用せず、倒したと思っても、その瞬間に攻撃され、気の休まらない戦いが続く事である。
しかし………………
フードの被った男の斬撃は、スリヴァルディに攻撃する余裕を全く与えない。
腕が治癒した瞬間に斬り落とされ、頭を身体も同じように…………修復された場所から斬り落とされていく。
(このままでは………………身動きが取れない……………)
スリヴァルディは頭が修復される度に、周りの情報が少しだけ入って来る。
その間だけで、自分の兵達が確実に減らされているのが分かった。
フェルグスのカラドボルグから放たれる稲妻と剣撃により、ヨトゥン兵達は逃げ惑う事しか出来ない。
(くそっ……………フェルグスめ…………こちらが足止めされている間に、好き勝手やりやがって………………)
スリヴァルディは唇を噛み締めるが、その瞬間にまた斬り落とされる。
一瞬……………隙をついたスリヴァルディは、高速で動き回るエアの剣の軌道に自らのバスタード・ソードを滑り込ませ、剣先を微妙にずらす。
その影響で斬り落とされずに済んだ右足で、大きく後方に飛ぶ。
「ふぅ……………少しヒヤヒヤさせられましたが、もう貴方の間合いには入りませんよ……………それより、凰の目……………バロールに、カラドボルグより良い手土産が出来ました!!」
飛んでる間に身体の治癒を終えたスリヴァルディは、余裕を取り戻していた。
「そうですか………………だとすれば、ここのヨトゥン兵達は全員殺さなければいけなくなりますね……………やむを得ないですが……………」
フードを被った男は、少し悲しそうな表情を浮かべる。
その瞳は、赤から更に深い赤に変化していく。
そして、その背中に炎の羽根が生えたかのように見えた……………次の瞬間、その場所に火の粉のみを残し、身体は間合いを開いた筈のスリヴァルディの懐にまで移動している。
「な………………瞬間移動……………か?速過ぎる……………」
フードを被った男の動きは、もはやスリヴァルディの眼で追えるスピードでは無かった。
再び、高速の剣撃を浴びせられるスリヴァルディ……………
先程と違うのは、治癒する速度が若干落ちた程度だった……………しかし、スリヴァルディは焦りを覚える。
回復しても、ダメージが抜け切らないのだ。
(まさか……………これが、凰の目の力だとでも言うのですか……………このままでは……………………)
脱出を試みるスリヴァルディだが、風の力を利用し高速で動くエアの剣を捉える事が出来ない。
そして、その剣速は徐々にスピードを増していく。
更には、スリヴァルディを斬る度に鎌鼬が産み出される。
その鎌鼬は、ヨトゥン兵のみを斬り裂いていき、村人達に触れても何事も無かったかのように素通りしていく。
敵将と一騎打ちしながら、周りの敵兵を薙ぎ払っていく姿は圧巻だった。
一騎当千…………………そう呼ぶに相応しい姿が、そこにはある。
フェルグスもカラドボルグの動きを止め、暫し見つめてしまう程であった。
(こんな…………こんな馬鹿な事が…………だが、ロキの奴は思惑が外れたな。切り札は人間側が持っている……………と、言う事ですね……………ざまあみろ………………だ……………)
薄れていく意識の中で、ロキの悔しがる表情を思い描いたスリヴァルディは、嵐のような斬撃の中でほくそ笑む。
生き残れる可能性は無い……………スリヴァルディは生きる事を諦め、暴風のような斬撃の嵐に身を委ねる。
斬撃を受け始めて数分後、不死身のスリヴァルディは、ついに息を引き取った……………
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