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恐怖の炎とムスペルの騎士
炎の落ちた跡
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ドォォォォォォンン!!
航太達3人の目の前で、この世の終わりのような爆音が響き渡り、数秒後に凄まじい熱風が吹き荒れる。
「絵美!!水の盾を!!」
目の前の出来事に唖然とし時間の止まっていた絵美だったが、航太の声で我に返り【天沼矛】を回転させ、水の盾を形成したため3人とも火傷は免れた。
しかし、超巨大の炎の塊の威力は、ランカスト軍の全てを焼き払うに充分だった。
炎の塊が地面に着弾し、その熱量は全ての物…………ランカスト軍本隊を焼き尽くすまで、3人は目を見開いて、その光景を見続けるしかなかった………
消火をしよう…………そう思わせる材料が無いぐらい、その炎の範囲、威力は桁が違った。
その炎に焼かれた場所に、どんな生命も残されない………口にはしないが、そんな絶望の空気が3人の間に流れている。
いや………口にする事も出来ないぐらい、視線の先にある惨状が衝撃的過ぎて、その光景を微動だにせず見ている事しか出来なかった。
火が鎮静化し始めて、ようやく航太の時間が動きだし、その惨状を受け止める余裕が少しだけ心に生まれる。
我に返った航太は周囲を見渡すと、横にいるランカストは未だ放心状態で、ただ立ち尽くしていた。
自分の部下を失ったランカストの心の悲しみは、自分の比ではないのだろう………航太はそう思うと、この攻撃を仕掛けたガイエンに対し、無性に腹が立った。
自分の両親が人によって殺された………だから、人を恨んでいる………それは分かる。
だが…………
「ガイエン!!!」
航太は、怒りの咆哮を上げた。
周囲の熱で、喉が痛く乾いていたが、叫ばずにはいられなかった。
ユラユラ揺れる視線の中で、炎の塊が落ちる前にガイエンの立っていた場所を見るが、そこにはもはや誰もいなかった。
必死に航太達を守ってた絵美が、航太の咆哮の中でようやく【天沼矛】の動きを止め、ペタっと地面に座り込んだ。
その瞳には涙が溜まっており、「信じられない………」言葉は無くとも、その表情が物語っていた。
「ちくしょおぉぉ!!!!!」
天を仰いで、航太が更に叫ぶ。
周囲の熱量に負けないぐらいの、心の底から湧き出る怒りの叫びだった。
その叫びでランカストも我に返り、力無く立ち上がる。
その弱々しさに、先程までの力強さは微塵も感じられない。
「航太………ひょっとしたら生き残ってる兵がいるかもしれん………助けに行くぞ」
ランカストも、絶望的なのは分かっているだろう。
しかし、弱々しくも一歩一歩、惨劇の現場に向かうランカストに、航太と絵美は黙って付いて行くしかなかった。
(智美がいれば、水の防御が使えて、こうまでならなかったかもしれないのに………皮肉なもんだな………)
巨大な火球に巻き込まれた兵の中には、シェルクードを中心に智美の捜索に否定的だった兵が何人もいた。
航太は、そんな事を思わず考えていた………
航太達3人の目の前で、この世の終わりのような爆音が響き渡り、数秒後に凄まじい熱風が吹き荒れる。
「絵美!!水の盾を!!」
目の前の出来事に唖然とし時間の止まっていた絵美だったが、航太の声で我に返り【天沼矛】を回転させ、水の盾を形成したため3人とも火傷は免れた。
しかし、超巨大の炎の塊の威力は、ランカスト軍の全てを焼き払うに充分だった。
炎の塊が地面に着弾し、その熱量は全ての物…………ランカスト軍本隊を焼き尽くすまで、3人は目を見開いて、その光景を見続けるしかなかった………
消火をしよう…………そう思わせる材料が無いぐらい、その炎の範囲、威力は桁が違った。
その炎に焼かれた場所に、どんな生命も残されない………口にはしないが、そんな絶望の空気が3人の間に流れている。
いや………口にする事も出来ないぐらい、視線の先にある惨状が衝撃的過ぎて、その光景を微動だにせず見ている事しか出来なかった。
火が鎮静化し始めて、ようやく航太の時間が動きだし、その惨状を受け止める余裕が少しだけ心に生まれる。
我に返った航太は周囲を見渡すと、横にいるランカストは未だ放心状態で、ただ立ち尽くしていた。
自分の部下を失ったランカストの心の悲しみは、自分の比ではないのだろう………航太はそう思うと、この攻撃を仕掛けたガイエンに対し、無性に腹が立った。
自分の両親が人によって殺された………だから、人を恨んでいる………それは分かる。
だが…………
「ガイエン!!!」
航太は、怒りの咆哮を上げた。
周囲の熱で、喉が痛く乾いていたが、叫ばずにはいられなかった。
ユラユラ揺れる視線の中で、炎の塊が落ちる前にガイエンの立っていた場所を見るが、そこにはもはや誰もいなかった。
必死に航太達を守ってた絵美が、航太の咆哮の中でようやく【天沼矛】の動きを止め、ペタっと地面に座り込んだ。
その瞳には涙が溜まっており、「信じられない………」言葉は無くとも、その表情が物語っていた。
「ちくしょおぉぉ!!!!!」
天を仰いで、航太が更に叫ぶ。
周囲の熱量に負けないぐらいの、心の底から湧き出る怒りの叫びだった。
その叫びでランカストも我に返り、力無く立ち上がる。
その弱々しさに、先程までの力強さは微塵も感じられない。
「航太………ひょっとしたら生き残ってる兵がいるかもしれん………助けに行くぞ」
ランカストも、絶望的なのは分かっているだろう。
しかし、弱々しくも一歩一歩、惨劇の現場に向かうランカストに、航太と絵美は黙って付いて行くしかなかった。
(智美がいれば、水の防御が使えて、こうまでならなかったかもしれないのに………皮肉なもんだな………)
巨大な火球に巻き込まれた兵の中には、シェルクードを中心に智美の捜索に否定的だった兵が何人もいた。
航太は、そんな事を思わず考えていた………
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