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スラハト解放戦
スラハト解放戦4
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「ランカスト様、ソフィーア様……そのお力を、デュランダルにお貸し下さい……お2人が愛したベルヘイムの為に、私は全ての力を使います!!」
崩れた城壁の少し上まで飛んだテューネの瞳は、綺麗な蒼に染まっている。
「やああぁぁぁぁ!!」
叫びながらデュランダルを振り上げたテューネの視線は、崩れた城壁の頂点を捉えた。
小さな身体に宿る全ての力をデュランダルに乗せ、降下するタイミングに合わせて、その刀身を崩れた城壁に向けて振り下ろす。
「はああぁぁぁぁっ!!」
ガァァァァァァァ!!
降下する勢いと自分の体重をデュランダルに乗せた力で、崩れた城壁を斬り裂いていく。
「ま………まじかよ!!すげぇ!!」
航太は感嘆の声を上げ、思わず見惚れしまう。
デュランダルと皇の目の力で城壁は真っ二つになっていくが、テューネの落下スピードも凄まじく、ブレーキをかけてる様子もない。
テューネの身体が地面に近付くにつれ、航太の額に冷や汗が流れる。
「着地は……やっぱりノープランかよ!!智美、水のクッション!!」
「もーやってるよ!!」
智美は水の球を、テューネの着地地点に作り出す。
ポヨヨン
今の状況に全く合わない、緊張感のない音が鳴る。
急降下してきたテューネは水球でワンバウンドし、トランポリンで飛ぶように軽く浮いた後、綺麗な長い髪を乱しながら地面に着地した。
「テューネちゃん、大丈夫??怪我は無い??」
「はい……智美様……ありがとうございました。きっと何とかしてくれるって、信じていました」
乱れた髪を整えながら、智美に向けてテューネは柔らかな笑顔を見せる。
崩れた城壁には、人が2人程度なら横に並んで歩けるくらいの隙間が出来ていた。
デュランダルが斬り裂いたその隙間から、崩れた城壁が塞いでいた熱風が漏れ出して来る。
「あっち!!この熱さはヤバい……早く中の人を救出しないと!!」
「この隙間を通って、外に出るんだ!!早く!!」
航太の声に頷いたオルフェは、大声で城壁内の人々に指示を送った。
その声に呼応して、城壁の近くまで逃げていたスラハトの住人達が隙間から流れ出てくる。
「焦らないで!!列を守った方が、スムーズに出れるから!!」
智美は大声で、慌てて隙間から出ようとするスラハトの住人達を誘導していく。
それでも熱さから逃れるように人が隙間に集まり、混乱が起き始めていた。
「あー、もぅ!!気持ちは分かるケド、順番は守って!!」
絵美も智美に協力して、混乱する人々を誘導をし始める。
「ふぅ……」
その様子を見ながら、オルフェは安堵の表情を浮かべた。
「ふぅ……じゃないですよ!!智美の機転がなければ、ヤバかった……テューネを殺す気ですか!!」
航太がオルフェに、食ってかかる。
「だが、テューネは無事だろ。お前達なら何とかしてくれるって、信じてたからな!!」
オルフェの言葉からは、強い信頼が伝わってきた。
「いや……けど、ノープラン過ぎますよ……」
オルフェの言葉は嬉しかったが、航太にはその行動が不思議でならない。
自分の命より、他人の命を守ろうとするオルフェやテューネの行動が……
「航太……オレとテューネは、お前達を信じてた。一刻を争うあの場面で、全てを考えている時間は無かった。だが、絶対に助けてくれるって信じていたから、テューネは躊躇い無く飛べたんだ」
オルフェの言葉を鵜呑みに出来る程、航太は馬鹿では無かった……恐らく、テューネは死を覚悟して飛んだんだろう……だが、オルフェとテューネが少しでも自分達を信じてくれていたなら、それは嬉しい事だった。
何とも言えない表情を浮かべる航太の肩をオルフェは叩き、そして空気を胸に吸い込んだ。
「人は、自分の欠点を仲間に補ってもらえる。そして、お互いの長所を活かし合う事が出来る。1人1人は小さな存在だが、力を合わせれば……信頼し合えれば、その力は神だろうがヨトゥンだろうが越えられるさ!!こんな悲劇だって、救える命は救ってみせる!!」
「航太様……それに智美様も絵美様も、私を救う方法が無かったら……それでもきっと、その身を犠牲にしても助けようとしてくれたと思います。その結果、私が助からなくても……でも、皆さんがそういう心の持ち主だから、私は躊躇いなく飛べたんです」
燃えるスラハトを見つめるオルフェとテューネの瞳には、強い意思の色が伺える。
「ありがとうテューネ……そうだな……そんな信頼になら、応えられる人間にならねーとな!!」
ルナを見捨てている航太には、テューネの言葉が胸に突き刺さった。
しかし、直ぐに考えを改める……テューネの言葉に恥じない人間にならないと……
(オレは、ルナを見捨てている……けど、今助けられる命は諦める必要はねぇ!!呆けてる暇はねー、やってやる!!)
航太の瞳もオルフェやテューネと同じ、決意を持った色になった……
崩れた城壁の少し上まで飛んだテューネの瞳は、綺麗な蒼に染まっている。
「やああぁぁぁぁ!!」
叫びながらデュランダルを振り上げたテューネの視線は、崩れた城壁の頂点を捉えた。
小さな身体に宿る全ての力をデュランダルに乗せ、降下するタイミングに合わせて、その刀身を崩れた城壁に向けて振り下ろす。
「はああぁぁぁぁっ!!」
ガァァァァァァァ!!
降下する勢いと自分の体重をデュランダルに乗せた力で、崩れた城壁を斬り裂いていく。
「ま………まじかよ!!すげぇ!!」
航太は感嘆の声を上げ、思わず見惚れしまう。
デュランダルと皇の目の力で城壁は真っ二つになっていくが、テューネの落下スピードも凄まじく、ブレーキをかけてる様子もない。
テューネの身体が地面に近付くにつれ、航太の額に冷や汗が流れる。
「着地は……やっぱりノープランかよ!!智美、水のクッション!!」
「もーやってるよ!!」
智美は水の球を、テューネの着地地点に作り出す。
ポヨヨン
今の状況に全く合わない、緊張感のない音が鳴る。
急降下してきたテューネは水球でワンバウンドし、トランポリンで飛ぶように軽く浮いた後、綺麗な長い髪を乱しながら地面に着地した。
「テューネちゃん、大丈夫??怪我は無い??」
「はい……智美様……ありがとうございました。きっと何とかしてくれるって、信じていました」
乱れた髪を整えながら、智美に向けてテューネは柔らかな笑顔を見せる。
崩れた城壁には、人が2人程度なら横に並んで歩けるくらいの隙間が出来ていた。
デュランダルが斬り裂いたその隙間から、崩れた城壁が塞いでいた熱風が漏れ出して来る。
「あっち!!この熱さはヤバい……早く中の人を救出しないと!!」
「この隙間を通って、外に出るんだ!!早く!!」
航太の声に頷いたオルフェは、大声で城壁内の人々に指示を送った。
その声に呼応して、城壁の近くまで逃げていたスラハトの住人達が隙間から流れ出てくる。
「焦らないで!!列を守った方が、スムーズに出れるから!!」
智美は大声で、慌てて隙間から出ようとするスラハトの住人達を誘導していく。
それでも熱さから逃れるように人が隙間に集まり、混乱が起き始めていた。
「あー、もぅ!!気持ちは分かるケド、順番は守って!!」
絵美も智美に協力して、混乱する人々を誘導をし始める。
「ふぅ……」
その様子を見ながら、オルフェは安堵の表情を浮かべた。
「ふぅ……じゃないですよ!!智美の機転がなければ、ヤバかった……テューネを殺す気ですか!!」
航太がオルフェに、食ってかかる。
「だが、テューネは無事だろ。お前達なら何とかしてくれるって、信じてたからな!!」
オルフェの言葉からは、強い信頼が伝わってきた。
「いや……けど、ノープラン過ぎますよ……」
オルフェの言葉は嬉しかったが、航太にはその行動が不思議でならない。
自分の命より、他人の命を守ろうとするオルフェやテューネの行動が……
「航太……オレとテューネは、お前達を信じてた。一刻を争うあの場面で、全てを考えている時間は無かった。だが、絶対に助けてくれるって信じていたから、テューネは躊躇い無く飛べたんだ」
オルフェの言葉を鵜呑みに出来る程、航太は馬鹿では無かった……恐らく、テューネは死を覚悟して飛んだんだろう……だが、オルフェとテューネが少しでも自分達を信じてくれていたなら、それは嬉しい事だった。
何とも言えない表情を浮かべる航太の肩をオルフェは叩き、そして空気を胸に吸い込んだ。
「人は、自分の欠点を仲間に補ってもらえる。そして、お互いの長所を活かし合う事が出来る。1人1人は小さな存在だが、力を合わせれば……信頼し合えれば、その力は神だろうがヨトゥンだろうが越えられるさ!!こんな悲劇だって、救える命は救ってみせる!!」
「航太様……それに智美様も絵美様も、私を救う方法が無かったら……それでもきっと、その身を犠牲にしても助けようとしてくれたと思います。その結果、私が助からなくても……でも、皆さんがそういう心の持ち主だから、私は躊躇いなく飛べたんです」
燃えるスラハトを見つめるオルフェとテューネの瞳には、強い意思の色が伺える。
「ありがとうテューネ……そうだな……そんな信頼になら、応えられる人間にならねーとな!!」
ルナを見捨てている航太には、テューネの言葉が胸に突き刺さった。
しかし、直ぐに考えを改める……テューネの言葉に恥じない人間にならないと……
(オレは、ルナを見捨てている……けど、今助けられる命は諦める必要はねぇ!!呆けてる暇はねー、やってやる!!)
航太の瞳もオルフェやテューネと同じ、決意を持った色になった……
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