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孤独な旅立ち
魔眼に抗える者
しおりを挟むネイアの葬儀の後、アルパスターは航太を呼び出していた。
航太がアルパスターのテントを訪れた頃には日は落ち、空にはプラネタリウムのような星空が幻想的な空間を作り出している。
「入りますよー」
航太がテントに入ると、アルパスターとユングヴィ王子がコナハト城を中心とした地図を見ながら話し合っているところだった。
「話って何ですかね??作戦会議ですか??」
航太が2人に聞くとアルパスターが立ち上がり、城下街スラハトからコナハト城へ続く地図を航太を航太の方に向ける。
「航太、今度の戦いは攻城戦になる。お前ならどうする??」
アルパスターの言葉を聞くまでもなく、航太は暫くジッと地図を見た。
城下街スラハトからコナハト城へ続く道は、堀に架かる広く長い橋だけである。
コナハト城への入口は、その橋を渡った所にある正門と、左右にある小さな入口のみ……………
「正面の橋を全軍で渡ったら、バロールの魔眼の餌食ですね……………全滅する可能性もある…………」
その構造を見て、航太は頭を抱えた。
「気づいたか……………コナハト城の正面からは、この橋が一望できるように設計されている。航太の言う通り、ここに全軍を集めたら全滅は免れないだろう…………」
アルパスターは地図を指差しながら、コナハト城の正面から見える橋の見え方を説明する。
「しかし、左右の入口は小さいし、何より堀を越えなければならない。こちらに部隊を集中させても、1度に城内に侵入出来るのが数人ではヨトゥン兵の餌食になるだけで効果的な攻撃にはならないだろう。そもそも姫救出の部隊を送り込まれる事は敵も用心してるだろうから、当然部隊を配置しているだろうしな…………」
ユングヴィ王子の言葉に、航太の考えは八方塞がりになった。
「左右の入口も駄目、正面も駄目……………じゃあ、どうすればいいんだ??」
航太は顎に手をやりながら、地図を真剣に眺める。
「バロールの動きを封じるしかない……………魔眼を使えない状況を作り出せば…………」
どう考えても、正面の橋に主力の部隊を配置しないと話にならない…………前回の戦闘のように、バロールが戦闘に集中しなくてはいけない状態にあり、魔眼が使えない状況を作り出せれば…………そう思い、航太は呟く。
「やはり、それしか方法はないだろう。誰がバロールの相手にするかだが………………」
アルパスターはそこまで言って、続きを促すように航太に視線を向けた。
「それは……………王子しかいないだろ!!魔眼で見られても耐えれる人じゃないと話にならない。王子なら、バロール相手に互角に戦える。前回の戦いでも、それは証明済みだからな」
航太の答えに耳を傾けていたアルパスターは、ユングヴィ王子と視線を合わせる。
「それは…………難しいだろう。私がバロールの魔眼に耐えれる唯一の存在という事はヨトゥン側に知られているし、私の動きは常に見られて警戒されている。バロールに辿り着く前に、ヨトゥン兵に囲まれて終わるだろうな」
魔眼封じをしなければ、ベルヘイム軍は膨大な被害を被る……………それはバロール陣営も考えているだろうから、ユンクヴィ王子の言う通り、その対策はとっていると考えるのが妥当だろう。
「あと可能性があるとしたら、皇の目のテューネさんだけだろ??ケド、バロールの強さを考えたら…………」
バロールと互角ぐらいには戦えないと、結局は魔眼を使われてしまう。
テューネには悪いが、正直バロールに戦いを挑むレベルにはないと航太は思った。
そうすると……………航太は頭を抱えながら、色々な想定で考えても答がでない。
「航太の考えは間違っていない。誰かがバロールを抑えなければ、城の中から魔眼を使われて全滅だ…………元々この遠征軍は、多くの犠牲者を出す事を想定したものだったんだがな…………」
最後の方は一人言のように呟いたアルパスターは、神槍ブリューナクを手にとった。
「煮詰まった時は、考えても答が出ないだろ??体を動かして気分転換でもするか??」
「まぁ…………そうっスね。確かに考えてても答は出なそうだし、少し運動でもしますか!!」
颯爽と外へ飛び出す航太の後に続いて、アルパスターとユンクヴィ王子もテントを出る。
見上げた夜空は時間が経つにつれ星の輝きが増していき、幻想的な空間を演出していく。
「航太……………最近、剣術の腕が増しているそうじゃないか。今日は、オレと王子の2人を相手にしてみるか?」
ユングヴィ王子と示し合わせたかのように隣に立ったアルパスターは、航太と対峙する。
「2人が相手??勝てる訳ないでしょ!!ケド、いい訓練になりそうだ!!」
アルパスターの言うように、航太は自分でも力が増しているのが分かっていた。
ベルヘイム軍最強の2人に、今の力がどれだけ通用するか……………航太は少しの自信と期待を胸に、エアの剣を構える。
エアの剣に反応するように…………航太の背中を押すように、柔らかな風が一瞬流れた…………
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