上 下
12 / 45
2章:王国でのパーティー

12話:王子様の不安

しおりを挟む
━エタンセル王国、エタンセル城の一室。

「父上、お呼びでしょうか?」
「よく来たなルイス。」


白髭が生えた厳格な立ち振る舞いのエタンセル王国の国王、エタンセル四世。
そのすぐそばには黒髪赤目の美少年、エタンセル王国のルイス王子がいた。

エタンセル四世がルイス王子を見つめ、真面目な顔つきで話し始める。


「ルイス。パーティーの準備は順調か?」
「はい。私のお披露目とのこと順調に準備を進めております。」
「そうか。」
「…何かご心配な事がございますでしょうか?」


神妙な顔をしたエタンセル四世が椅子に座る。
立派な白髭を触りながらルイス王子に向かい説明をし始める。


「大きなパーティーの際、私はいつも招待している男がいるだろう?」
「はい。あの元勇者様の…。」
「あぁ。ユウヤ殿だ。」
「ですが元勇者様は地元で結婚されたとお聞きしました。」
「その結婚相手が問題なんだ。」
「結婚相手、ですか?」

「…元魔王のアビスだ。」

「っな!元魔王のアビスって歴代で最強と言われたあの魔王ですか!?勇者によって倒されたと聞いておりましたが!?」

「表向きはな…。」
「なぜそのような事に!?」
「まぁ色々問題のある勇者だったからな…。色々あるんだ。色々。」
「父上なぜそんな遠い目を…?」
「兎に角その二人の間に一人娘がいるんだ。確か名をサクラといったか?」
「一人娘…。」
「お前と近い年だ。今後の事もあるからなその娘も招待する事にした。」
「勇者と魔王の子を…招待…。」

「ルイス、今回はお前のお披露目も兼ねている。だから貴族たちは必ずお前の婚約者にと自分の娘を紹介してくるだろう。」
「はい。」
「婚約者争いは水面下で行われるが、その時にサクラ嬢が巻き込まれないとも限らん。そんなことになれば…。」

「サクラ嬢の機嫌を損ねて、魔王アビスが飛んでくる…。」

「そのうえ勇者の怒りも買う。アイツの人脈と力は恐ろしいものだ。私も気を付けてみるが、気軽に手はだせん。その為にもルイス、お前に動いてもらいたんだ。」
そう言うと国王はルイスの肩に手を置き、不安そうなルイスに優しい目をして口を開いた。
「酷だということは分かっている。だが、私は信じているぞ。」

「…はい。拝命いたしました。父上。」

不安げな足取りでルイス王子は部屋を出ていく。
その後ろ姿を見送ると、国王はベットに寝転び考え込むように眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は

だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。 私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。 そのまま卒業と思いきや…? 「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑) 全10話+エピローグとなります。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...