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第41笑『笑いの場に捧げる鎮魂歌』
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「きーみがー、うまれたー、日のことー、おぼえてますかー♪」
私は少しでも自分の想いを伝えようとアカペラで歌い始めた。
驚くほど澄んだ声が出た。
いけると思った。
そう、『全てを救う』為に。
自分でも思ってもみないほど澄んだ声音が出た。
コントなのに何故か歌う私。
でも、そうなってしまった。
『全てを救いたい』と思ったとき、自然と声が、歌が出ていたのだ。
何故だろう?
気付いた私。
そう
既存の笑いを創る必要はない。
もちろん笑いを取りにいく必要も無いし、張り合う必要も無い。
私が行った行為の結果、場が笑いで満たされればいいだけ。
笑いとは本来、自然に生まれるものなのだ。
だから、私は自分の衝動に従おう。
そして場を自然な笑いで満たそう。
そう
『やさしい笑い』で。
『覚えていますか?』――あなたが生まれた時の両親の笑顔
ヒトが世界に出てくる時に見る世界で初めての笑顔。
初めに体験する『笑い』それはとても尊いモノ。
歌に込めた想いをピエロ君とブー子が表現する。
慈愛に満ちた笑顔を湛えた夫婦を完璧に演じきる。
『覚えていますか?』――初めて友達を作った時のお互いのあの笑い。
友達ができたという不思議な高揚感があった。
でもばれるのが恥ずかしくて、お互い照れくさくてぎこちない笑みを返しあった。
歌に込めた想いをピエロ君と裏ピエロ君が表現する。
かつての親友のような抜群の連携で二人は初々しい青春の1ページをその場に留める。
『覚えていますか?』――初めて人を好きになった時のあのあたたかい気持ち、笑顔。
その人のことを考えるだけで心臓の鼓動が速くなる。
その人の笑顔を想像するだけで自然とこちらも笑顔になる。
そんな純粋な気持ち。
歌に込めた想いをブー子が表現する。
純粋度100パーセントの気持ち(おそらく自分のピエロ君への想いとかけてるんだろう)を全身からかもし出す。
私の歌に合わせてピエロ君とブー子が幸せな家庭を演じるというか作り出していく。
それとは打って変わってピエロ君と裏ピエロ君の友情、ソレにともなう、しょーもない笑い、お互いが友達だからこそ出来る化かしあい……あたたかな笑いの光景。
ヒトを想う時に、幸せを願う時に出るあたたかな気持ち、それが笑顔となって……笑いとしてこの世に定着する瞬間がある。
そして
場を私が包み込んでいる。
確かにその感覚がある。
そして私は。
「取り戻す……とりもどす……かつての笑いをとりもどす」
思わずあの総理大臣並みに願いを口ずさんでいた。
だがその効果はあったようだ。
場の住人達……観客の言葉が聞こえてくる。
いや、流れ込んでくる。
「そうだ」
「オレたちは」
「かつて」
「そういうじかんを」
「すごしてきたんだ」
本来の笑いとは何か?
その原点とは?
私は当たり前の問いに当たり前の笑顔で応える。
笑いって自然に、すぐ傍にあったんだよ。
もう、無理して笑いを作らなくてもいいんだよ。と。
全てのいじられ役に救済を!
そして安息を。
開き直って、ヤケになって、暴走する、かつていじられ役だった者達の魂……それら全ての魂、そして芸人の魂さえ救う。
そう、これはレクイエム。
全てのいじられ役へ……笑いの場に飲まれた者達に捧げる鎮魂歌だ。
「アハハハ」
「アハハ」
「ハハ……ちくしょう」
気付けば、笑いの場の住人達の仮面から涙が溢れ出していた。
かつての自分を振り返るように、かみしめるように、すすり泣きさえ伴った笑い声は静かに、ゆっくりと場を満たしていった。
だがそれでは飽き足らず、やがて。
カパ
カパ
カパ
カパ
笑いの場の住人達の仮面が外れていく。
そこには塗りつぶされた黒い闇しかなかったが、そこから間欠泉が噴出すように大量の涙が轟音と共に噴出してきた。
「わああああああーーーー!」
あっという間に劇場と言う名の空間は涙の海に浸されていく。
だがそれは心地良い感覚だった。
母の胎内で羊水に浸された胎児のように。
「……眠い」
私が逆らいようもないまどろみの中、ゆっくりと意識を失おうとしていたその時。
「俺は認めないぞーー!」
芸人が乗っ取っている大将の身体ごと、水面に、出ようとしていた。
そして両手で眠り姫のように穏やかな眠っているオツボネ様をまさにお姫様抱っこして格好でバタ足の推力だけでぐんぐんと進んでいく。
それを知っても尚、抗えない眠気に耐え切れず、私が瞼を閉じようとしたその時。
「しっかりしろ」
裏ピエロ君に頬を張られ、目が覚めた私は裏ピエロ君に手を引かれて、共に芸人を追って水面へと向った。
私は少しでも自分の想いを伝えようとアカペラで歌い始めた。
驚くほど澄んだ声が出た。
いけると思った。
そう、『全てを救う』為に。
自分でも思ってもみないほど澄んだ声音が出た。
コントなのに何故か歌う私。
でも、そうなってしまった。
『全てを救いたい』と思ったとき、自然と声が、歌が出ていたのだ。
何故だろう?
気付いた私。
そう
既存の笑いを創る必要はない。
もちろん笑いを取りにいく必要も無いし、張り合う必要も無い。
私が行った行為の結果、場が笑いで満たされればいいだけ。
笑いとは本来、自然に生まれるものなのだ。
だから、私は自分の衝動に従おう。
そして場を自然な笑いで満たそう。
そう
『やさしい笑い』で。
『覚えていますか?』――あなたが生まれた時の両親の笑顔
ヒトが世界に出てくる時に見る世界で初めての笑顔。
初めに体験する『笑い』それはとても尊いモノ。
歌に込めた想いをピエロ君とブー子が表現する。
慈愛に満ちた笑顔を湛えた夫婦を完璧に演じきる。
『覚えていますか?』――初めて友達を作った時のお互いのあの笑い。
友達ができたという不思議な高揚感があった。
でもばれるのが恥ずかしくて、お互い照れくさくてぎこちない笑みを返しあった。
歌に込めた想いをピエロ君と裏ピエロ君が表現する。
かつての親友のような抜群の連携で二人は初々しい青春の1ページをその場に留める。
『覚えていますか?』――初めて人を好きになった時のあのあたたかい気持ち、笑顔。
その人のことを考えるだけで心臓の鼓動が速くなる。
その人の笑顔を想像するだけで自然とこちらも笑顔になる。
そんな純粋な気持ち。
歌に込めた想いをブー子が表現する。
純粋度100パーセントの気持ち(おそらく自分のピエロ君への想いとかけてるんだろう)を全身からかもし出す。
私の歌に合わせてピエロ君とブー子が幸せな家庭を演じるというか作り出していく。
それとは打って変わってピエロ君と裏ピエロ君の友情、ソレにともなう、しょーもない笑い、お互いが友達だからこそ出来る化かしあい……あたたかな笑いの光景。
ヒトを想う時に、幸せを願う時に出るあたたかな気持ち、それが笑顔となって……笑いとしてこの世に定着する瞬間がある。
そして
場を私が包み込んでいる。
確かにその感覚がある。
そして私は。
「取り戻す……とりもどす……かつての笑いをとりもどす」
思わずあの総理大臣並みに願いを口ずさんでいた。
だがその効果はあったようだ。
場の住人達……観客の言葉が聞こえてくる。
いや、流れ込んでくる。
「そうだ」
「オレたちは」
「かつて」
「そういうじかんを」
「すごしてきたんだ」
本来の笑いとは何か?
その原点とは?
私は当たり前の問いに当たり前の笑顔で応える。
笑いって自然に、すぐ傍にあったんだよ。
もう、無理して笑いを作らなくてもいいんだよ。と。
全てのいじられ役に救済を!
そして安息を。
開き直って、ヤケになって、暴走する、かつていじられ役だった者達の魂……それら全ての魂、そして芸人の魂さえ救う。
そう、これはレクイエム。
全てのいじられ役へ……笑いの場に飲まれた者達に捧げる鎮魂歌だ。
「アハハハ」
「アハハ」
「ハハ……ちくしょう」
気付けば、笑いの場の住人達の仮面から涙が溢れ出していた。
かつての自分を振り返るように、かみしめるように、すすり泣きさえ伴った笑い声は静かに、ゆっくりと場を満たしていった。
だがそれでは飽き足らず、やがて。
カパ
カパ
カパ
カパ
笑いの場の住人達の仮面が外れていく。
そこには塗りつぶされた黒い闇しかなかったが、そこから間欠泉が噴出すように大量の涙が轟音と共に噴出してきた。
「わああああああーーーー!」
あっという間に劇場と言う名の空間は涙の海に浸されていく。
だがそれは心地良い感覚だった。
母の胎内で羊水に浸された胎児のように。
「……眠い」
私が逆らいようもないまどろみの中、ゆっくりと意識を失おうとしていたその時。
「俺は認めないぞーー!」
芸人が乗っ取っている大将の身体ごと、水面に、出ようとしていた。
そして両手で眠り姫のように穏やかな眠っているオツボネ様をまさにお姫様抱っこして格好でバタ足の推力だけでぐんぐんと進んでいく。
それを知っても尚、抗えない眠気に耐え切れず、私が瞼を閉じようとしたその時。
「しっかりしろ」
裏ピエロ君に頬を張られ、目が覚めた私は裏ピエロ君に手を引かれて、共に芸人を追って水面へと向った。
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