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第117話 N数=1
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「おーい、起きろ。死神が迎えにきたぞ。お前には研究に付き合ってもらうんだ」
そう叫びながら、横で寝ているアホ金髪へと大鎌を振り下ろす。
「ぐはぁー。痛い、痛いイタイいたいっ」
さきほどの組長と同じように腕を刈り取っただけなんだけどな。
腕を抑えながら暴れまくるアホ金髪。
もう少し痛み耐性をつけるといい。
と、思いつつも、俺は痛み耐性ゼロだからね。基本的に攻撃を受けない反面、食らうと弱い。
だが、考えてみてほしい。痛みに強くなろうとするとしよう。
さぁー、どうする。わざわざ相手の攻撃を当たるようにする?自傷行為をする?
すべて却下だ。これまでの人生、骨折や捻挫ぐらいは経験しているが、ナイフでの刺し傷などはもちろん経験したことがない。
しかも、受けたくない。だれが痛みの耐性をつけるために、喜んでナイフに突っ込んで行くのか。
もしかしたら、貴族教育であるのかもしれないが、俺はしないと決めた。
だから、外に出る時はいつも神様印のローブを着ていたい。ミランダさんに言ったことがあるが本当にお守りみたいなものへとなっている。
「ほら、回復ポーションだ」
「うっ」
肩を抑えながら痛みに悶えているあほ金髪にポーションを渡す。それをすかさず飲み干すアホ金髪。
ほぉー、切断面からの流血はとまり、かさぶたができるように、切断面はふさがれていく。
興味深いな。下級ポーションではそれぐらいの治癒能力か。
ではここで上級ポーションを飲むとどうなる?
「くそが、下級ポーション使っちまったらなおらないだろーが」
あほ金髪はポーションを渡してあげた俺に文句を言ってくる。
こいつのあほの上限はどこなのだろうか?
もちろんだが治す気など毛頭ない。これは研究なのだ。
俺たち天使の楽園の唯一といっていいほどの弱みは回復だ。ティナが成長していけばいつか問題ではなくなるのかもしれないが、その回復役のティナが怪我するとそれはまた問題が発生する。
その弱みを俺が放置しておくわけはなく、いろいろ調べてはいたが、やはり本や人から聞くものは情報なだけで、確証があるものではない。
考えてみて欲しい。使用しようとした用途で治癒が足りない場合。それはこの世界では死に直結するかもしれないんだ。
今、目の前で起きた現象がその例ともいえる。
今は腕を生やそうとしたが、使用したのは下級ポーション。そうすると止血、表面上の怪我は治癒し初期治療は終了したと思えるが。これは大間違い。
腕を生やすなら上級ポーションを初めに使わないと、効き目がわるくなるということが本に書いてあった。
「ほら、上級ポーションだ。一本金貨三枚だ。感謝しながら使うんだぞ」
あほ金髪はポーションを受け取るとすかさず飲み干す。
そうすると、みるみると腕が盛り上げり、細胞増殖するかのように腕を形成していく。
だが、それは手首あたりまで増えると止まり、手首がない腕で終了となった。
これが上級ポーションの限界か、はたまた下級ポーションと併用したための弊害か。
「もう一回な」
俺は観察し終え、あほ金髪が文句を言ってくる前に、さきほどの切断と寸分たがわぬように再度、腕を刈り取る。
「あぁぁぁぁぁーー」
キンと頭に響く叫びをするあほ金髪。
黙らせたいが、これも研究のため。被験者の感想は大切なんだ。
「ほら上級だぞ」
渡されるがまますぐに飲み干すあほ金髪。これが毒とかだったらどうするつもりなんだろうか。
さきほどと同じように腕が盛り上がり、形成されていくが、今度は腕と手すべての形成に成功している。
本の情報はあっていたようだ。では今度は飲み干すのとふりかけるバージョンを比べてみたい。
無言であほ金髪の腕を刈り取る。三回目となるとなれたものだ。一ミリもずらしてはいないよ。
「ほら、今度は切断面に振りかけてくれ」
あほは動揺しているのかそのまま言われた通り腕に振りかける。
おおー、さきほどよりも早く腕、手の形成が成功したな。
やはり経口投与だと他の部位に回復が回されているのだろうな。
振りかける方が、局所的に回復ができる。これはいいデータだ。使う相手が飲めない状況でも、回復はできるということだな。
それにしてもこのあほはいい被検体だ。
日本ではありえないような研究。それに文句を言わず付き合ってくれるとはどこまであほなんだか。
そんなに腕は大事か?あともうすこしの命なのに……
「ほい、ほい、ほいっ」
次は両腕を刈り取り、片足を膝ぐらいで切断する。
声が枯れたのだろうか。あほ金髪は声にもならない苦痛の音を発するだけ。
渡した上級ポーションを飲み干すと。まず足部分が回復していき、そのあと両腕の回復が始まった。
どのような回復経路か知らないが、これも情報通り。どうも下半身の怪我は上半身よりも回復の優先度は高いらしい。
おっ?左腕が肘で回復が止まっているな。
あほ金髪は太っているわけではなく、身長も高すぎるということもない。
一般的な成人男性のデータということでいいだろう。
ということは上級のポーション一個ではここが限界というわけかな?
ふむ。まあーこんなもんだろうな。
ポーションは回復魔法と違い、使用者の体力にも影響されるらしい。
体力が少ない人はポーションの効き目が悪くなると情報にはあった。
だからこそ、ポーションは緊急用。回復魔法士がいない時の回復手段ではあるが、あまりにも状態が悪い時は使用しないほうがよく、回復魔法士に見てもらった方がいいことがあるそうだ。
詳しくどんな違いがあるかはわからないが、やはり道具は道具。この世界でも人間様に見てもらった方がいいことは変わりないか。
「はぁはぁはぁ、この俺様をだ「おやすみ」」
よし。研究終了。サンプル数が一つしかないが、一般的な成人男性のデータがあれば、あとは感覚的なものでいいだろう。
当面は俺とティナの場合、あほ金髪よりも少ない量で効果を発揮するだろうし。
もうモルモットには用はない。
やはり研究は素晴らしい。論文などを読んで手にする知識も必要だが、それが必ずしも正しいというわけではないからね。
地球でもすごく評価されている論文でさえ、数年後には覆されることがあるんだ。
この世界ではネットなどなく知識の共有というものがすこぶる難しい。だからこそ本などの知識は重要なのだが、それが正しいともいいずらい。
こうやって自ら体を動かして、知識を広げていくことが重要なんだよ。
最後あほ金髪がなんか言っていたが、もう興味もないので、そのまま首を刈り取ってやった。
知らないだろうが、あほに付き合う時間は俺にはないのだよ。
今も表世界ではクレーター状態、深夜ではあるが、それを多くの人に知られない方がいい。そしてここからが一番の理由だが、うちの天使が今日は寝ずに待っていると言っていたんだ。
だからこそ、俺は今日早く、一刻も早く、ラキシエール伯爵家へと戻り、天使を抱擁しなくてはならないのだ。
お仕事頑張ってね。そう言った天使の笑顔とすこしだけ表れた寂しさの表情。
あの天使の表情が忘れられないんだ。
この気持ちはわかるよな?世の子持ちの親諸君。
そういうことでソラ・カゲヤマ、今日は直帰させてもらいます。
影世界へと入れた土地すべてを霧で包み、表世界へと送還する。
「よし、問題はあるだろうが、元はと言えばシルベスターファミリーとカイルとかいうやつのせいだ。そこらへんはやってもらおう。テト帰るぞ。いざ参らん。天使の元へ」
「にゃー」
風を纏い、暗闇が支配する世界を颯爽と走しりさる死神と黒猫。
その一人と一匹の頭の中には天使の笑顔しか存在しないことを誰も知らない。
そう叫びながら、横で寝ているアホ金髪へと大鎌を振り下ろす。
「ぐはぁー。痛い、痛いイタイいたいっ」
さきほどの組長と同じように腕を刈り取っただけなんだけどな。
腕を抑えながら暴れまくるアホ金髪。
もう少し痛み耐性をつけるといい。
と、思いつつも、俺は痛み耐性ゼロだからね。基本的に攻撃を受けない反面、食らうと弱い。
だが、考えてみてほしい。痛みに強くなろうとするとしよう。
さぁー、どうする。わざわざ相手の攻撃を当たるようにする?自傷行為をする?
すべて却下だ。これまでの人生、骨折や捻挫ぐらいは経験しているが、ナイフでの刺し傷などはもちろん経験したことがない。
しかも、受けたくない。だれが痛みの耐性をつけるために、喜んでナイフに突っ込んで行くのか。
もしかしたら、貴族教育であるのかもしれないが、俺はしないと決めた。
だから、外に出る時はいつも神様印のローブを着ていたい。ミランダさんに言ったことがあるが本当にお守りみたいなものへとなっている。
「ほら、回復ポーションだ」
「うっ」
肩を抑えながら痛みに悶えているあほ金髪にポーションを渡す。それをすかさず飲み干すアホ金髪。
ほぉー、切断面からの流血はとまり、かさぶたができるように、切断面はふさがれていく。
興味深いな。下級ポーションではそれぐらいの治癒能力か。
ではここで上級ポーションを飲むとどうなる?
「くそが、下級ポーション使っちまったらなおらないだろーが」
あほ金髪はポーションを渡してあげた俺に文句を言ってくる。
こいつのあほの上限はどこなのだろうか?
もちろんだが治す気など毛頭ない。これは研究なのだ。
俺たち天使の楽園の唯一といっていいほどの弱みは回復だ。ティナが成長していけばいつか問題ではなくなるのかもしれないが、その回復役のティナが怪我するとそれはまた問題が発生する。
その弱みを俺が放置しておくわけはなく、いろいろ調べてはいたが、やはり本や人から聞くものは情報なだけで、確証があるものではない。
考えてみて欲しい。使用しようとした用途で治癒が足りない場合。それはこの世界では死に直結するかもしれないんだ。
今、目の前で起きた現象がその例ともいえる。
今は腕を生やそうとしたが、使用したのは下級ポーション。そうすると止血、表面上の怪我は治癒し初期治療は終了したと思えるが。これは大間違い。
腕を生やすなら上級ポーションを初めに使わないと、効き目がわるくなるということが本に書いてあった。
「ほら、上級ポーションだ。一本金貨三枚だ。感謝しながら使うんだぞ」
あほ金髪はポーションを受け取るとすかさず飲み干す。
そうすると、みるみると腕が盛り上げり、細胞増殖するかのように腕を形成していく。
だが、それは手首あたりまで増えると止まり、手首がない腕で終了となった。
これが上級ポーションの限界か、はたまた下級ポーションと併用したための弊害か。
「もう一回な」
俺は観察し終え、あほ金髪が文句を言ってくる前に、さきほどの切断と寸分たがわぬように再度、腕を刈り取る。
「あぁぁぁぁぁーー」
キンと頭に響く叫びをするあほ金髪。
黙らせたいが、これも研究のため。被験者の感想は大切なんだ。
「ほら上級だぞ」
渡されるがまますぐに飲み干すあほ金髪。これが毒とかだったらどうするつもりなんだろうか。
さきほどと同じように腕が盛り上がり、形成されていくが、今度は腕と手すべての形成に成功している。
本の情報はあっていたようだ。では今度は飲み干すのとふりかけるバージョンを比べてみたい。
無言であほ金髪の腕を刈り取る。三回目となるとなれたものだ。一ミリもずらしてはいないよ。
「ほら、今度は切断面に振りかけてくれ」
あほは動揺しているのかそのまま言われた通り腕に振りかける。
おおー、さきほどよりも早く腕、手の形成が成功したな。
やはり経口投与だと他の部位に回復が回されているのだろうな。
振りかける方が、局所的に回復ができる。これはいいデータだ。使う相手が飲めない状況でも、回復はできるということだな。
それにしてもこのあほはいい被検体だ。
日本ではありえないような研究。それに文句を言わず付き合ってくれるとはどこまであほなんだか。
そんなに腕は大事か?あともうすこしの命なのに……
「ほい、ほい、ほいっ」
次は両腕を刈り取り、片足を膝ぐらいで切断する。
声が枯れたのだろうか。あほ金髪は声にもならない苦痛の音を発するだけ。
渡した上級ポーションを飲み干すと。まず足部分が回復していき、そのあと両腕の回復が始まった。
どのような回復経路か知らないが、これも情報通り。どうも下半身の怪我は上半身よりも回復の優先度は高いらしい。
おっ?左腕が肘で回復が止まっているな。
あほ金髪は太っているわけではなく、身長も高すぎるということもない。
一般的な成人男性のデータということでいいだろう。
ということは上級のポーション一個ではここが限界というわけかな?
ふむ。まあーこんなもんだろうな。
ポーションは回復魔法と違い、使用者の体力にも影響されるらしい。
体力が少ない人はポーションの効き目が悪くなると情報にはあった。
だからこそ、ポーションは緊急用。回復魔法士がいない時の回復手段ではあるが、あまりにも状態が悪い時は使用しないほうがよく、回復魔法士に見てもらった方がいいことがあるそうだ。
詳しくどんな違いがあるかはわからないが、やはり道具は道具。この世界でも人間様に見てもらった方がいいことは変わりないか。
「はぁはぁはぁ、この俺様をだ「おやすみ」」
よし。研究終了。サンプル数が一つしかないが、一般的な成人男性のデータがあれば、あとは感覚的なものでいいだろう。
当面は俺とティナの場合、あほ金髪よりも少ない量で効果を発揮するだろうし。
もうモルモットには用はない。
やはり研究は素晴らしい。論文などを読んで手にする知識も必要だが、それが必ずしも正しいというわけではないからね。
地球でもすごく評価されている論文でさえ、数年後には覆されることがあるんだ。
この世界ではネットなどなく知識の共有というものがすこぶる難しい。だからこそ本などの知識は重要なのだが、それが正しいともいいずらい。
こうやって自ら体を動かして、知識を広げていくことが重要なんだよ。
最後あほ金髪がなんか言っていたが、もう興味もないので、そのまま首を刈り取ってやった。
知らないだろうが、あほに付き合う時間は俺にはないのだよ。
今も表世界ではクレーター状態、深夜ではあるが、それを多くの人に知られない方がいい。そしてここからが一番の理由だが、うちの天使が今日は寝ずに待っていると言っていたんだ。
だからこそ、俺は今日早く、一刻も早く、ラキシエール伯爵家へと戻り、天使を抱擁しなくてはならないのだ。
お仕事頑張ってね。そう言った天使の笑顔とすこしだけ表れた寂しさの表情。
あの天使の表情が忘れられないんだ。
この気持ちはわかるよな?世の子持ちの親諸君。
そういうことでソラ・カゲヤマ、今日は直帰させてもらいます。
影世界へと入れた土地すべてを霧で包み、表世界へと送還する。
「よし、問題はあるだろうが、元はと言えばシルベスターファミリーとカイルとかいうやつのせいだ。そこらへんはやってもらおう。テト帰るぞ。いざ参らん。天使の元へ」
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