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希輝と仲直りができて本当に良かった。
そう。それは本当に良かったんだけど、希輝のあの無自覚に口説くような態度はなんとかしてほしい。
いまだに熱をもった頬を冷えた手で冷まそうとするも、一向に冷めそうになく、ため息を吐いた。
「爽やか風をふかせながら、あんな優しい笑顔であんなことを言われて、落ちない人はいないだろ」
思い出すだけで心臓がばくばくと煩くなるから、大分まずい領域にまで来ている気がする。
前から時々心臓が早鐘を打ってしまうことはあったけど、このままいくと胸が高鳴るだけじゃすまなくなるに違いない。
深く溜息を吐いた俺に合わせるように、いつのまにか隣に来ていた友樹も溜息を吐いた。
「……いつのまに」
「聞いてくれ、紡久」
最近の友樹は、いつ見ても有頂天だったから、ここまで落ち込んでいるのは珍しい気がする。
勝手に俺の席の前に座り、再び溜息を吐いた友樹が、上目に俺を見た。
「俺、もしかしたらあの子と別れるかも」
「は?」
両手の指を絡ませたり掻いたりしながら、チラチラと俺を見る友樹の瞳が暗い。
友樹の指に絡まった赤い糸は相変わらず窓の外へと向かっている。
運命の相手は今の彼女ではないことを示していて、やっぱり赤い糸には抗えないのだと知り、複雑な気持ちになった。
「な、なんでだよ。付き合ったばかりじゃん」
「俺だってわかんねえよ。でも、相手が急に」
友樹の話を聞けば、そう思わせるような出来事は昨日の放課後に起きたらしい。
放課後に人気の少なくなった廊下で、日常になりつつあった彼女との逢瀬。
そんな中、突如現れた第三者の姿に、彼女の目が釘付けになり、そこから様子がおかしくなったとか。
希輝と仲直りができて本当に良かった。
そう。それは本当に良かったんだけど、希輝のあの無自覚に口説くような態度はなんとかしてほしい。
いまだに熱をもった頬を冷えた手で冷まそうとするも、一向に冷めそうになく、ため息を吐いた。
「爽やか風をふかせながら、あんな優しい笑顔であんなことを言われて、落ちない人はいないだろ」
思い出すだけで心臓がばくばくと煩くなるから、大分まずい領域にまで来ている気がする。
前から時々心臓が早鐘を打ってしまうことはあったけど、このままいくと胸が高鳴るだけじゃすまなくなるに違いない。
深く溜息を吐いた俺に合わせるように、いつのまにか隣に来ていた友樹も溜息を吐いた。
「……いつのまに」
「聞いてくれ、紡久」
最近の友樹は、いつ見ても有頂天だったから、ここまで落ち込んでいるのは珍しい気がする。
勝手に俺の席の前に座り、再び溜息を吐いた友樹が、上目に俺を見た。
「俺、もしかしたらあの子と別れるかも」
「は?」
両手の指を絡ませたり掻いたりしながら、チラチラと俺を見る友樹の瞳が暗い。
友樹の指に絡まった赤い糸は相変わらず窓の外へと向かっている。
運命の相手は今の彼女ではないことを示していて、やっぱり赤い糸には抗えないのだと知り、複雑な気持ちになった。
「な、なんでだよ。付き合ったばかりじゃん」
「俺だってわかんねえよ。でも、相手が急に」
友樹の話を聞けば、そう思わせるような出来事は昨日の放課後に起きたらしい。
放課後に人気の少なくなった廊下で、日常になりつつあった彼女との逢瀬。
そんな中、突如現れた第三者の姿に、彼女の目が釘付けになり、そこから様子がおかしくなったとか。
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