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「なんで無視するんだよ」
「……う」
相変わらず既読もついていない携帯画面を見せれば、希輝がばつが悪そうに視線を左右に泳がせた。
「俺も、何もない時なら未読でも気にしないけどさ。あんな風に怒って出ていった後にコレはどうかと思うんだけど」
「ぐ」
「せめて理由だけでも教えてくんない?」
携帯を再びズボンのポケットにいれて、じっと見つめれば、また希輝の視線が左右に泳いだ。
何を言えばいいのか本人も分からないのか、薄い唇が開いたり閉じたりする。
「……あーっと、君たち。チャイム鳴ったぞ?」
突然割り込んできた嗄れ声に、希輝と共にハッと視線を横にずらせば、次の授業担当の先生が立っていた。
気まずそうに眼鏡をくいっと上げて、脂汗を流す先生の姿を見て、何故か少し冷静になった気がする。
希輝の頬から手を離して距離を開ければ、希輝も戸惑いながらも俺から視線を落とした。
「引き留めてごめん。戻るわ」
きっと今は何を言っても、希輝の口から怒った理由を聞きだすことはできないだろう。
ふいっと背中を向けて、俺の教室に向かう先生の後を追うように足を一歩踏み出す。
「……っ、喧嘩の仕方が分からないんだよ!」
「……は?」
「お前の言葉にムカついた! 心底腹が立った! けど、この気持ちを伝える術が俺には分からない……!」
後ろから意味の分からない言葉を叫ばれて、驚きすぎて先生と一緒に振り返ってしまった。
去る俺の背中を見て咄嗟に出た言葉だったのか、茹でタコのような顔色で慌てたように俺を見る希輝がいた。
そばに先生がいた事に今更気づいたとでも言うかのように、益々顔を赤くさせた希輝が逃げるように自分の教室へと駆け込んでいく。
「け、喧嘩がしたいのかね?」
「いや、俺はしたくないです!」
チャイムが鳴った以上、希輝の教室まで追いかけるわけにも行かず、ただただ先生と一緒に首を傾げていた。
「……う」
相変わらず既読もついていない携帯画面を見せれば、希輝がばつが悪そうに視線を左右に泳がせた。
「俺も、何もない時なら未読でも気にしないけどさ。あんな風に怒って出ていった後にコレはどうかと思うんだけど」
「ぐ」
「せめて理由だけでも教えてくんない?」
携帯を再びズボンのポケットにいれて、じっと見つめれば、また希輝の視線が左右に泳いだ。
何を言えばいいのか本人も分からないのか、薄い唇が開いたり閉じたりする。
「……あーっと、君たち。チャイム鳴ったぞ?」
突然割り込んできた嗄れ声に、希輝と共にハッと視線を横にずらせば、次の授業担当の先生が立っていた。
気まずそうに眼鏡をくいっと上げて、脂汗を流す先生の姿を見て、何故か少し冷静になった気がする。
希輝の頬から手を離して距離を開ければ、希輝も戸惑いながらも俺から視線を落とした。
「引き留めてごめん。戻るわ」
きっと今は何を言っても、希輝の口から怒った理由を聞きだすことはできないだろう。
ふいっと背中を向けて、俺の教室に向かう先生の後を追うように足を一歩踏み出す。
「……っ、喧嘩の仕方が分からないんだよ!」
「……は?」
「お前の言葉にムカついた! 心底腹が立った! けど、この気持ちを伝える術が俺には分からない……!」
後ろから意味の分からない言葉を叫ばれて、驚きすぎて先生と一緒に振り返ってしまった。
去る俺の背中を見て咄嗟に出た言葉だったのか、茹でタコのような顔色で慌てたように俺を見る希輝がいた。
そばに先生がいた事に今更気づいたとでも言うかのように、益々顔を赤くさせた希輝が逃げるように自分の教室へと駆け込んでいく。
「け、喧嘩がしたいのかね?」
「いや、俺はしたくないです!」
チャイムが鳴った以上、希輝の教室まで追いかけるわけにも行かず、ただただ先生と一緒に首を傾げていた。
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