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「あの……その噂についてなんだけど」
「きゃっ! な、なによ」

 気の強そうな見た目とは裏腹に、急に近づいた俺にビビった女子が後退る。
 まさか話しかけただけで身を縮こまらせ、敵を見るような目で見られるとは思っていなかった。
 正直ショックがでかいけど、勇気を出すために唾をグッと飲み込む。

「希輝が俺に告白したって噂。あれ、逆なんだ」
「え……? 逆?」
「俺が希輝に告白して振られたんだ。じゃ、そういうことだから」

 驚きに目を瞠った女子を置いて、さっさと元の位置に戻る。
 彼女たちは噂話が好きみたいだから、きっと明日までには、この話を広め直してくれるだろう。
 何もなかったと弁明しても絶対に信じないだろうし、それだとつまらないと思われて何もしないに違いない。
 グッバイ、俺の青春。俺のせいでこうなったようなもんだし、せめてイケメンの人柱ぐらいにはなろう。

「紡久」
「お、希輝! 突然呼び出して悪いな」

 早足で駆けつけた希輝の表情が、心なしかげんなりとしていて、罪悪感を抱く。
 とりあえず、周りの好奇の視線から逃すために、希輝の手首を掴んで引っ張った。
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