14 / 56
14
しおりを挟む「……確かに、運命の赤い糸だとは思う」
小さな声で呟けば、雷に打たれたような表情を浮かべながら、希輝が俺を睨んだ。
この顔、絶対に俺が何かしたと思っているな。
どうしても誤解を解きたくて、音が聞こえるぐらい勢いよく、顔の前で手を振る。
「違うって! 俺も昨日突然見えるようになった被害者仲間だから!」
「俺の手を握って、俺の運命って呟いたよな」
「違う! いや、違くはないけど。そうじゃなくて」
益々疑いの色を濃くした希輝の視線に耐えられなくて、下唇をグッと噛んで俯いた。
美形への免疫がなさすぎて、ちょっとした表情も迫力があるから怯んじまう。
「俺も、この呪いをときたいと思ってる」
「……は?」
「信じないかもしんねーけど、俺は女子が好きなんだ!」
叫ぶように訴えれば、何故か廊下からキャーという甲高い叫び声が聞こえ、パタパタと走っていく音がした。
嫌な予感がして希輝を見れば、俺と同じように青ざめた顔が目の前にある。
「今の、もしかして」
「……聞かれたな。さっきまでは居なかった筈だから、今来たんだろう。多分、聞いたのも紡久の最後の言葉だけだろうな」
額に手を当てて深く息を吐いた希輝に、なんと言えばいいのか分からなくなる。
「おまえ、やっぱり絶対にワザとだろ」
「違うって!」
「外堀を埋めようとか、そういう……」
「なにいってんだ!」
凄まじい形相で一生懸命訴えるも、氷のような視線で俺を見る希輝には、もう何も届きそうにはなかった。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~
kurimomo
BL
俺がゲイだと自覚したのは、高校生の時だった。中学生までは女性と付き合っていたのだが、高校生になると、「なんか違うな」と感じ始めた。ネットで調べた結果、自分がいわゆるゲイなのではないかとの結論に至った。同級生や友人のことを好きになるも、それを伝える勇気が出なかった。
そうこうしているうちに、俺にはカミングアウトをする勇気がなく、こうして三十歳までゲイであることを隠しながら独身のままである。周りからはなぜ結婚しないのかと聞かれるが、その追及を気持ちを押し殺しながら躱していく日々。俺は幸せになれるのだろうか………。
そんな日々の中、襲われている女性を助けようとして、腹部を刺されてしまった。そして、同性婚が認められる、そんな幸せな世界への転生を祈り静かに息を引き取った。
気が付くと、病弱だが高スペックな身体、アース・ジーマルの体に転生した。病弱が理由で思うような生活は送れなかった。しかし、それには理由があって………。
それから、偶然一人の少年の出会った。一目見た瞬間から恋に落ちてしまった。その少年は、この国王子でそして、俺は側近になることができて………。
魔法と剣、そして貴族院など王道ファンタジーの中にBL要素を詰め込んだ作品となっております。R指定は本当の最後に書く予定なので、純粋にファンタジーの世界のBL恋愛(両片思い)を楽しみたい方向けの作品となっております。この様な作品でよければ、少しだけでも目を通していただければ幸いです。
GW明けからは、週末に投稿予定です。よろしくお願いいたします。
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く、が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる