上 下
19 / 28
空波遥の章

”あまりに周囲が目のやり場に困る服装と、後方の人の視界の妨げになるような被り物は禁止”って校則はあるそうです、一応

しおりを挟む
 朝の日差しに包まれた教室には、およそ30名ほどの生徒が着席していた。HR開始時刻ではあるが、少し離れた席とエアじゃれあいをしていたり、机の下で単語帳らしきものを捲っていたり、残り僅かのペットボトルを大急ぎで飲み干そうとしていたり。
 きっとこの時間、日本中の学校と呼ばれる場所で似たような光景が繰り広げられているに違いない。
 しかし、この養瑛学園2-Cの教室にはそれらと違う点が二つ。まず、担任教師について入ってきた、見知らぬ転校生であるオレに教室中がほぼ一斉に視線を向けてきたこと。

 そしてもう一点は・・・・・・。

 (・・・・・・何ここ)

 オレは唖然としてしまう。目に飛び込んでくる、異様な服装の彼ら彼女ら。
 多岐に渡りすぎていて一つ一つについて説明していたらキリがないが、とりあえず片っ端から挙げて行くと。

 大きなフリルのついた、床まで届きそうなたっぷりとした丈のドレスを着用している者。ネコ耳がついたカチューシャをつけてる者。明らかに医療目的ではないと見て取れる眼帯を装着している者。あっちを見れば原色をこれでもかと用いたぴっちりした何らかのコスチューム。こっちを見ればパステルカラーがふんだんに使われた、どこのお花畑から来たんですかと問いたくなるようなヒラヒラの衣装。
 そして頭に帽子だのでかくてゴツイ装飾品だの。そしてそして、各々の個性が爆発しているヘアスタイル―――例えばウィッグでないとありえないレベルのまっすぐツヤッツヤのストレートとか、左右ともに一糸乱れずにくるんっくるんに巻かれたツインテールとか。カラーバリエーションも実に豊か。―――とか。眼球をぐるりと回して一人一人見ているととても追いつかない。
 小脇にぬいぐるみを抱えてるやつまでいる。自由ってレベルじゃねえぞ。

 (・・・・・・オレ間違って服飾の学校に入っちゃった?)
 情報量の洪水にクラクラしているオレに、永沢先生が「いやあうちのクラスねえ、なんか知らないけど、毎日がファッションショーかいっ!って感じの子が集まっちゃってるんだよね~」と朗らかに言う。

 (個性派コーデ同士は引き合う性質でもあるのか?)

 「おしっ!みんな今日も見目麗しいな~!じゃっ、転校生を紹介するぞー」
 「いやいやいや待ってください、色々とおかしっ・・・・・・」
と、オレがうろたえたその時だった。

 「っっっっっっああ~~~~~~~!!!聡ーーーー!!!!」
 部屋中に響き渡る大声を上げて、セーラー服姿の生徒がジャンプしそうな勢いで立ち上がる。
 そちらに目を向けたオレの顔が一気にこわばる。
 「やっぱり同じクラスになったーーーー!!!なんかそんな気してたんだよねっ!!これって運命~?いやっほううぅぅ~~!!」

 服装が他と比べると地味だからすぐに存在に気づかなかった。
 今朝一悶着あった、空波遥。

 そいつが教室の一番後ろの席から、満面の笑みを振りまいていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

いろいろ疲れちゃった高校生の話

こじらせた処女
BL
父親が逮捕されて親が居なくなった高校生がとあるゲイカップルの養子に入るけれど、複雑な感情が渦巻いて、うまくできない話

クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男

湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です 閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします

ご飯中トイレに行ってはいけないと厳しく躾けられた中学生

こじらせた処女
BL
 志之(しの)は小さい頃、同じ園の友達の家でお漏らしをしてしまった。その出来事をきっかけに元々神経質な母の教育が常軌を逸して厳しくなってしまった。  特に、トイレに関するルールの中に、「ご飯中はトイレに行ってはいけない」というものがあった。端から見るとその異常さにはすぐに気づくのだが、その教育を半ば洗脳のような形で受けていた志之は、その異常さには気づかないまま、中学生になってしまった。  そんなある日、母方の祖母が病気をしてしまい、母は介護に向かわなくてはならなくなってしまう。父は単身赴任でおらず、その間未成年1人にするのは良くない。そう思った母親は就活も済ませ、暇になった大学生の兄、志貴(しき)を下宿先から呼び戻し、一緒に同居させる運びとなった。 志貴は高校生の時から寮生活を送っていたため、志之と兄弟関係にありながらも、長く一緒には居ない。そのため、2人の間にはどこかよそよそしさがあった。 同居生活が始まった、とある夕食中、志之はトイレを済ませるのを忘れたことに気がついて…?

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

処理中です...