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その後の話:未来の話をしよう
第25話 約束
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目の前に、美しすぎる一家がいる。父親の話によると、伯父と伯母、そしていとこなのだと言う。幼いいとこは一歩踏み出すと自己紹介をした。
「初めましてレシオアーク。僕の事は……、ハルと呼んで貰えれば結構だ」
容貌、服装、言葉遣い、全てが少年のそれであった。しかし自分は少年の姿が全て偽りだと、一目で見抜いていた。天性の勘でもいうべきだろうか。
「……僕? ハルって女の子だよな? それなのに僕って言うなんて変わってんな」
ハルと自己紹介した少年の顔が、一瞬にして真っ赤になったのを覚えている。その顔は、どこからどう見ても恥ずかしさに赤面する可愛らしい少女だった。
“ああ、そうだ……。俺はこの時に、ハルの事を……”
魔王一家は、しばらくエルザ城に滞在していた。その間、ひと時もハルと離れることなく、ずっと一緒に遊んでいた。
ハルも心を開き、誰にも話したことのない将来の不安を自分だけに話してくれた。
「僕は……、男の子の恰好をしないと、家族以外とまともに話すことが出来ないから……。こんな僕が、父のような立派な魔王になれると思わないんだ……」
整った顔を曇らせ、男装をした少女が呟く。唇を噛み、未来の不安を口にしている。しかし自分は、何故彼女がそれほど不安に思うのか分からなかった。
「何言ってんだよ。男の恰好と女の恰好で、お前言う事変わんのか? 考え方が変わんのか?」
「いや……、そんなことはないけれど……。でもみんなが……」
「ならいいじゃん。自分のやりやすい方法を選んで何が悪いんだよ。見た目なんて、関係ねえだろ。ハルはハルだよ」
みんなという単語を聞き、ハルにそのような不安を植え付ける周囲に怒りがわいた。ハルが悪いんじゃない、そう伝えたかった。
ハルは少し驚いた表情を浮かべ、何かに気づかされた様子で自分を見ている。不安そうに曇っていた表情に、次第と明るさが戻って来た。
本来彼女が持つ、優しい笑顔が蘇り、自分の言葉が彼女に元気を与えたことが、とても嬉しかった。
ハルは、嬉しそうに感謝を口にした。
「……ありがとう。君は優しいな。……ちょっと言葉遣いは怖いけど」
「……悪かったな。んじゃ、次会う時までに、もう少し言葉遣い怖くないようにしとくよ」
彼女が自分の口調に恐れを持っている事が、少しだけショックだった。いつもは他人の忠告など耳に入れないのだが、言葉遣いだけは気をつけようと思った。
表情が明るくなったハルだったが、次の瞬間には少し厳しい表情を浮かべ、自分のほうを向いていた。まだ何か不安があるのかと思ったが、青い瞳に宿る強い決意を見ると、そうではないらしい。
「でも僕は……、もうこの姿に頼りたくないんだ。だから……、僕が本来の姿で生活できるように協力してくれないか?」
「俺はその姿でもいいと思うんだけどよ……。まあハルがそこまで言うなら……」
ハルはハルのままでいいと思ったが、彼女が嬉しそうにしたから、納得のいかない自分の気持ちは気にしないことにした。
彼女が決めた事なのだ。それ以上、自分が口を出す権利はない。
「一番いいのは、出来るだけ元の姿でいる事なんだろうけど、いきなりじゃ無理だろ? だから……、一つ俺と約束しよう」
「……約束?」
「うん、それは……」
自分の提案を一言も聞き漏らさぬよう、ハルが近づく。期待に瞳を輝かせ、自分を見ている。
男装をしても隠しきれていない、少女らしさと美しさを間近で見せつけられ、頬が熱くなった。鼓動が早くなり、不自然に手のひらが汗ばんでくる。そんな気持ちを隠す為、近づきすぎるハルを押しとどめ、少しだけ距離を取った。
ハルは不思議そうに自分を見ていたが、素直に従うと、また期待に満ちた表情で自分を見ていた。
彼女が、ずっとここにいてくれたらいいのにと思っていた。
彼女が、ずっと笑顔でいてくれたらいいのにと思っていた。
彼女が、ずっと自分と共にいてくれたらいいのにと思っていた。
彼女と過ごした時間は、決して長くない。だけど、
“俺は……、ハルが大好きだった”
「初めましてレシオアーク。僕の事は……、ハルと呼んで貰えれば結構だ」
容貌、服装、言葉遣い、全てが少年のそれであった。しかし自分は少年の姿が全て偽りだと、一目で見抜いていた。天性の勘でもいうべきだろうか。
「……僕? ハルって女の子だよな? それなのに僕って言うなんて変わってんな」
ハルと自己紹介した少年の顔が、一瞬にして真っ赤になったのを覚えている。その顔は、どこからどう見ても恥ずかしさに赤面する可愛らしい少女だった。
“ああ、そうだ……。俺はこの時に、ハルの事を……”
魔王一家は、しばらくエルザ城に滞在していた。その間、ひと時もハルと離れることなく、ずっと一緒に遊んでいた。
ハルも心を開き、誰にも話したことのない将来の不安を自分だけに話してくれた。
「僕は……、男の子の恰好をしないと、家族以外とまともに話すことが出来ないから……。こんな僕が、父のような立派な魔王になれると思わないんだ……」
整った顔を曇らせ、男装をした少女が呟く。唇を噛み、未来の不安を口にしている。しかし自分は、何故彼女がそれほど不安に思うのか分からなかった。
「何言ってんだよ。男の恰好と女の恰好で、お前言う事変わんのか? 考え方が変わんのか?」
「いや……、そんなことはないけれど……。でもみんなが……」
「ならいいじゃん。自分のやりやすい方法を選んで何が悪いんだよ。見た目なんて、関係ねえだろ。ハルはハルだよ」
みんなという単語を聞き、ハルにそのような不安を植え付ける周囲に怒りがわいた。ハルが悪いんじゃない、そう伝えたかった。
ハルは少し驚いた表情を浮かべ、何かに気づかされた様子で自分を見ている。不安そうに曇っていた表情に、次第と明るさが戻って来た。
本来彼女が持つ、優しい笑顔が蘇り、自分の言葉が彼女に元気を与えたことが、とても嬉しかった。
ハルは、嬉しそうに感謝を口にした。
「……ありがとう。君は優しいな。……ちょっと言葉遣いは怖いけど」
「……悪かったな。んじゃ、次会う時までに、もう少し言葉遣い怖くないようにしとくよ」
彼女が自分の口調に恐れを持っている事が、少しだけショックだった。いつもは他人の忠告など耳に入れないのだが、言葉遣いだけは気をつけようと思った。
表情が明るくなったハルだったが、次の瞬間には少し厳しい表情を浮かべ、自分のほうを向いていた。まだ何か不安があるのかと思ったが、青い瞳に宿る強い決意を見ると、そうではないらしい。
「でも僕は……、もうこの姿に頼りたくないんだ。だから……、僕が本来の姿で生活できるように協力してくれないか?」
「俺はその姿でもいいと思うんだけどよ……。まあハルがそこまで言うなら……」
ハルはハルのままでいいと思ったが、彼女が嬉しそうにしたから、納得のいかない自分の気持ちは気にしないことにした。
彼女が決めた事なのだ。それ以上、自分が口を出す権利はない。
「一番いいのは、出来るだけ元の姿でいる事なんだろうけど、いきなりじゃ無理だろ? だから……、一つ俺と約束しよう」
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「うん、それは……」
自分の提案を一言も聞き漏らさぬよう、ハルが近づく。期待に瞳を輝かせ、自分を見ている。
男装をしても隠しきれていない、少女らしさと美しさを間近で見せつけられ、頬が熱くなった。鼓動が早くなり、不自然に手のひらが汗ばんでくる。そんな気持ちを隠す為、近づきすぎるハルを押しとどめ、少しだけ距離を取った。
ハルは不思議そうに自分を見ていたが、素直に従うと、また期待に満ちた表情で自分を見ていた。
彼女が、ずっとここにいてくれたらいいのにと思っていた。
彼女が、ずっと笑顔でいてくれたらいいのにと思っていた。
彼女が、ずっと自分と共にいてくれたらいいのにと思っていた。
彼女と過ごした時間は、決して長くない。だけど、
“俺は……、ハルが大好きだった”
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