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その後の話:暴走と妄想の狭間で
第2話 再会
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ミディは部屋で一人、寛いでいた。
太陽の光を取り入れるために大きく作られた窓に近づき、外の景色を見る。
視線の先には、緑豊かな魔界の大地が広がっていた。鳥達が列を作って、青い空を飛んでいるのが見える。
魔界に連れて来られて半月が経っていたが、特に変わった事はない。穏やかで平和な日々そのものである。
魔界についてプロトコルでは、
『暗い・怖い・変なの一杯』
という、お約束のマイナスイメージで語られているが、実際の所そうではない。
空には太陽が輝いているし、夜には星も月も出る。自然も豊かで、空気も綺麗だ。プロトコルと同じく四季もある。
魔族たちは、容姿が変わっているところと魔法を使うところを除けば、人間とさほど変わりない生活をしている。変な鍋で紫色のスープをかき混ぜている魔族など、一人もいない。
のどかな風景を見つめながら呟いた。
「ジェネが何故あんな魔王になったのか、分かる気がするわね」
こんな穏やかで平和な世界にいれば、誰だって優しく平和な心の持ち主になるだろう。この雰囲気の中で、誰からも恐れられる魔王になれ、という方が難しい。
ミディは小さく笑った。
それを証明するかのように、魔族たちは優しく気の良い者たちが多い。魔界に乗り込み、魔王を混乱に陥れた過去を持つミディでさえ、気持ちよく迎え入れてくれた。人間だからと言って、偏見の目で見る事もない。それどころか、
『ジェネラル様を鍛えてくださった恩人』
と、歓迎されていたりする。
被害を被ったジェネラルにしてみれば、複雑な心境だろうが……。
読みかけの本を読もうとテーブルに戻った時、ドアがノックされた。
何事かとミディは席を立ち、ドアを開ける。
現れた姿に、青い瞳が少し見開かれた。どこかで会った姿に、彼女は急いで記憶を探った。
「あら、あなたは……確か、あの時エクスと一緒にいた……」
「まあ! 覚えていて下さって光栄ですわ!」
そこには、大きな茶色の瞳を輝かせ、ミディを見つめる小柄な少女が立っていた。歳は、少年姿のジェネラルよりも下に見える。
本来、肩まであるだろう茶色の髪は、無理やり2つにまとめられている。
飾り気のない、しかし上質な布を使われた、光沢を放つ黒のワンピースと、白いエプロン。そして髪の毛が落ちない為に頭で結ばれたヘッドドレスといういでたちを見ると、彼女がこの城の女中だという事は一目瞭然だ。
「改めまして、ミディローズ様。私《わたくし》、ユニと申します。これからあなた様の侍女として、身の回りのお世話を担当させて頂く事になりました。どうぞよろしくお願い致します」
少女――ユニはスカートの裾を上げると、可愛らしくお辞儀をした。
太陽の光を取り入れるために大きく作られた窓に近づき、外の景色を見る。
視線の先には、緑豊かな魔界の大地が広がっていた。鳥達が列を作って、青い空を飛んでいるのが見える。
魔界に連れて来られて半月が経っていたが、特に変わった事はない。穏やかで平和な日々そのものである。
魔界についてプロトコルでは、
『暗い・怖い・変なの一杯』
という、お約束のマイナスイメージで語られているが、実際の所そうではない。
空には太陽が輝いているし、夜には星も月も出る。自然も豊かで、空気も綺麗だ。プロトコルと同じく四季もある。
魔族たちは、容姿が変わっているところと魔法を使うところを除けば、人間とさほど変わりない生活をしている。変な鍋で紫色のスープをかき混ぜている魔族など、一人もいない。
のどかな風景を見つめながら呟いた。
「ジェネが何故あんな魔王になったのか、分かる気がするわね」
こんな穏やかで平和な世界にいれば、誰だって優しく平和な心の持ち主になるだろう。この雰囲気の中で、誰からも恐れられる魔王になれ、という方が難しい。
ミディは小さく笑った。
それを証明するかのように、魔族たちは優しく気の良い者たちが多い。魔界に乗り込み、魔王を混乱に陥れた過去を持つミディでさえ、気持ちよく迎え入れてくれた。人間だからと言って、偏見の目で見る事もない。それどころか、
『ジェネラル様を鍛えてくださった恩人』
と、歓迎されていたりする。
被害を被ったジェネラルにしてみれば、複雑な心境だろうが……。
読みかけの本を読もうとテーブルに戻った時、ドアがノックされた。
何事かとミディは席を立ち、ドアを開ける。
現れた姿に、青い瞳が少し見開かれた。どこかで会った姿に、彼女は急いで記憶を探った。
「あら、あなたは……確か、あの時エクスと一緒にいた……」
「まあ! 覚えていて下さって光栄ですわ!」
そこには、大きな茶色の瞳を輝かせ、ミディを見つめる小柄な少女が立っていた。歳は、少年姿のジェネラルよりも下に見える。
本来、肩まであるだろう茶色の髪は、無理やり2つにまとめられている。
飾り気のない、しかし上質な布を使われた、光沢を放つ黒のワンピースと、白いエプロン。そして髪の毛が落ちない為に頭で結ばれたヘッドドレスといういでたちを見ると、彼女がこの城の女中だという事は一目瞭然だ。
「改めまして、ミディローズ様。私《わたくし》、ユニと申します。これからあなた様の侍女として、身の回りのお世話を担当させて頂く事になりました。どうぞよろしくお願い致します」
少女――ユニはスカートの裾を上げると、可愛らしくお辞儀をした。
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