立派な魔王になる方法

めぐめぐ

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第91話 噂

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 ジェネラルは、再びプロトコルへと旅立った。

 ミディが持っていた四大精霊の地図を使い、魔界からプロトコルに渡ると、早速エルザ城を目指す。

 ヌルの町で突然別れた為、旅の荷物は全てジェネラルが持っている。さらに別れ際に貰った金と、ミディローズ杯で手に入れた賞金があるので、旅に不自由はなかった。

 旅の途中、道が一緒になった商人たちと出会い、目的地が一緒という事で馬車に乗せて貰える事になった。

 道中、大きなトラブルもなく、スムーズに進んだ。

 そう、道中は。
 

*  *  *
 

「はっ……?」

 ジェネラルは、たった今聞いた言葉に耳を疑った。
 目の前には、彼の目を点にした元凶が、にこにこ笑いながら彼を見ている。
 
「だから、ミディ様のご結婚が決まったんだよ。これは、そのお祝いの為に開かれる祭りの商品だよ」

 そう言って、積んである大量の商品を叩く。
 馬車に大量の荷物が積んであるので、何故こんなにも量が多いのか尋ね、このような返事が返ってきたのである。

“ミディが、結婚を決めた……? 結婚相手を見つける為に、魔界に乗り込んできたミディが、どうして……!?”

 痛みのない衝撃が、少年の後頭部を打つ。
 聞き間違いでないと理解した時、ジェネラルの頭の中が一瞬、真っ白になった。

 少年の驚いた表情を見て、商人の片眉が上がった。

「まあ、驚くのも無理ないな。あれ程大騒ぎしていたミディ様が、ようやく御結婚を決めたのだから。私も初めて聞いた時、その場に飛び上がる勢いで驚いたよ」

 彼の驚きの理由を、そう理解したのだろう。
 ジェネラルの表情に、商人が笑う。

 話によると3月ほど前、急にエルザ王の病とミディの結婚の話が出たのだと言う。

 式は3月後。

 他の国々の事例を見ても非常に急な決定であり、関係者一同、式の準備に大忙しなのだという。

 動揺を隠し、声が震えそうになるのを抑えながら、ジェネラルは口を開いた。

「あっ、あの……。その結婚相手って、一体……」

「エルザ国大臣長兼相談役である、メディア・ティック様だよ」

 商人は、軽い調子で答えた。
 メディアと出会った時、只者ではないとは思ったが、実際はエルザ王国で王族の次に力を持つ人物だったと知り、ジェネラルは再び驚く。

「まあ、メディア様は素晴らしい方だから。安心して、エルザ王国の未来を任せられるよ。国を守るのに、武術が強い必要はないからね」 

 最後の一言に、ちらっとミディへの皮肉が込められていた。その部分には、ジェネラルも激しく同意するが……。

 商人の話を聞くと、メディアの経歴は凄いようだ。

 エルザ王国歴史上、25歳という最年少で大臣長兼相談役に就任。日々、王を支え、エルザ王国発展の為に力を尽くしている。

 そして城の中で唯一、あのミディに恐れ気もなく意見出来る、超貴重人物でもあった。

 だが、ジェネラルは思い出す。
 モジュールでメディアについて話す、ミディとアクノリッジたちの様子を。
 そして、メディアと再会したミディの表情を。

 ミディがメディアを良く思っていない事は、知っている。
 だからメディアと結婚すると決めたのが、信じられなかった。 

 メディアの素晴らしさを語っていた商人だったが、ふと少し表情が曇った。声のトーンが、一気に下がる。

「エルザ王も安心するんじゃないかな。病が重いらしいからね。そういう理由もあって、ミディ様も結婚を決めたって噂だよ」

「そう……ですか……」

 エルザ王が病気だという事は、もう民たちの間に広がっているらしい。

“ミディが結婚を決めるぐらいだから……、エルザ王の病気はかなり重いのかも……”

 それ程病が重いなら、ミディが慌ててエルザ城に戻ったのも、納得がいく。
 そんな大変な状況の中、ミディに会おうとする自分は、究極の我儘野郎かもしれない。

 彼の中で、一瞬気持ちが揺れる。

 しかし、

“我儘でも……ミディに会うって、決めたんだ……”

 エクスの言葉を思い出し、ジェネラルは決意を固めた。

 彼の目の前では、次々と景色が移り変わり、ミディのいる場所―エルザ城のある町ディートへ近づいていた。
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