立派な魔王になる方法

めぐめぐ

文字の大きさ
上 下
82 / 220

第81話 心配2

しおりを挟む
「……ミディ、連絡するという約束自体……、忘れてた……とか?」

「………………てへっ☆」

「てへっ☆ じゃな――――――い!!!」
 
 アクノリッジのまねをし、ぺろっと舌を出し、笑って誤魔化そうとするミディ。
 しかしそれが通用するほど、今のジェネラルは激甘ではない。

「ミディ……、もう呆れて物も言えないよ……」

 怒りに拳を震わせながら、先ほどとは違った小さな声でジェネラルが呟く。
 怒りメーターほぼMAXな状態である。

 が、ミディも負けてはいなかった。

「まあ、約束を破ったことは謝るわよ。でも、あなたがそんなにも心配するなんて、思ってもいなかったわ」

「心配するに決まってるじゃないか!!」

「そう? マージでの事件の時、あなたの言葉、

『ミディの心配なんて、するだけ損じゃないか』

これが、忘れられないんだけど?」

 彼女の言葉に、ジェネラルはうっと声を詰まらせた。

 マージでの事件――土地の権利証を巡り、ミディがオルタの屋敷に襲撃を掛けた事件の事である。

 敵の本拠地でジェネラルは、1人乗り込んだミディの心配をせず、逆に敵の心配をしたのだ。その事に突っ込んだミディに対し、ジェネラルが返した言葉が、これであった。

 ミディの恨みを込めた視線に、ジェネラルの怒りメーターが少し下がった。
 先ほどのミディのように、視線をあさっての方向に向けると、

「あの時は……、あの時だよ……」

 と歯切れ悪く呟いた。

 しかし、あの時からのことを考えると、ミディに対する気持ちは大きく変わったように思える。

 出会った当初は、無敵変人女という認識しかなかった。
 強力な力を持っている為、本気で心配もすることはなかったし、何があっても彼女なら何とかできると楽観していた事は否めない。

 だけど今回は違った。
 ミディの身が心配で、守護すべきフィードを残して探しに行った事が、彼の気持ちの変化を証明している。

「過去の事は置いといて、とっ、とにかく!」 
 
 話が自分の不利な流れに行きそうになるのを止める為、無理やり元に引き戻すジェネラル。そして話の主導権を戻そうと、再びテーブルを叩いた。 

「本当に心配したんだからね!! だって……」

 少しの空白。

 何かを言おうとしたのだが、その空白がジェネラルの記憶を奪った。

 一瞬疑問に思ったが、その記憶の穴を埋めるかのように、別の言葉が入った。そのときにはもう、忘れた言葉に対する疑問は欠片もなく消えていた。

「だって、状況が状況だったじゃないか。氾濫しかけの荒れた川に入るとか……。フィードさんだって、かなり心配してたんだよ? 自分が村に戻って、自分が生贄になるって言ってたくらいなんだから!」

「あ……、そうだったの……」

 そう言いながら両足を抱えて座ると、自分の視界からジェネラルを外すように、体の正面を横に向けるミディ。自分の立場が悪くなり、逃げているように見える。

 ここで逃がしてたまるかと、ジェネラルは立ち上がると、しっかりとミディの視界に入る位置に立った。

 そして、再びあさっての方向に視線を向けるミディの顔を覗き込む。

「……ちゃんと反省してる?」

「ん~~……」

 少し考え込むように、ミディは首をかしげた。ここで即答しないあたり、この王女らしい。

 そしてしばらく考えた後、発された言葉は。

「……少しはね」

“少し……ですか……”

 やっぱりね…、とジェネラルはため息をついた。

 だがあの女が、少しは反省していると言ったのだ。大きな進歩だと思ってもいいだろう。

「まあ……、たまには」

 ミディは、そっと瞳を伏せた。
 先ほどとは違って、静かな様子だった。

 大きく息を吐き出すと、瞳を閉じたまま、言葉をつむぎ出す。

「誰かに心配されるのも……、悪くはないわね」

 そう呟くミディの姿は、どこか嬉しそうだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます

めぐめぐ
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。 気が付くと闇の世界にいた。 そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。 この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。 そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを―― 全てを知った彼女は決意した。 「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」 ※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪ ※よくある悪役令嬢設定です。 ※頭空っぽにして読んでね! ※ご都合主義です。 ※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)

どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら

風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」 伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。 男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。 それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。 何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。 そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。 学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに! これで死なずにすむのでは!? ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ―― あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?

突然現れた自称聖女によって、私の人生が狂わされ、婚約破棄され、追放処分されたと思っていましたが、今世だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
デュドネという国に生まれたフェリシア・アルマニャックは、公爵家の長女であり、かつて世界を救ったとされる異世界から召喚された聖女の直系の子孫だが、彼女の生まれ育った国では、聖女のことをよく思っていない人たちばかりとなっていて、フェリシア自身も誰にそう教わったわけでもないのに聖女を毛嫌いしていた。 だが、彼女の幼なじみは頑なに聖女を信じていて悪く思うことすら、自分の側にいる時はしないでくれと言う子息で、病弱な彼の側にいる時だけは、その約束をフェリシアは守り続けた。 そんな彼が、隣国に行ってしまうことになり、フェリシアの心の拠り所は、婚約者だけとなったのだが、そこに自称聖女が現れたことでおかしなことになっていくとは思いもしなかった。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました

やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>  フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。  アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。  貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。  そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……  蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。  もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。 「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」 「…………はぁ?」  断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。  義妹はなぜ消えたのか……?  ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?  義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?  そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?  そんなお話となる予定です。  残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……  これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。  逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……  多分、期待に添えれる……かも? ※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。

領主様、冒険者ギルドの窓口で謎解きの依頼はおやめください

悠木真帆
恋愛
冒険者ギルド職員のサリサは冒険者たちの活動のために日々事務仕事に追われている。そんなある日。サリサの観察眼に目をつけた領主ヴィルテイト・リーベルトが冒険者ギルドにやってきてダンジョンで見つかった変死体の謎解きを依頼してくる。サリサはすぐさま拒絶。だが、その抵抗を虚しく事件解決の当事者に。ひょんなことから領主と冒険者ギルド職員が組んで謎解きをすることに。 はじめは拒んでいたサリサも領主の一面に接して心の距離が縮まっていくーー しかし事件は2人を近づけては引き離す 忙しいサリサのところに事件が舞い込むたび“領主様、冒険者ギルドの窓口で謎解きの依頼はおやめください”と叫ぶのであった。

【短編完結】婚約破棄なら私の呪いを解いてからにしてください

未知香
恋愛
婚約破棄を告げられたミレーナは、冷静にそれを受け入れた。 「ただ、正式な婚約破棄は呪いを解いてからにしてもらえますか」 婚約破棄から始まる自由と新たな恋の予感を手に入れる話。 全4話で短いお話です!

私は悪くありません。黙って従うように言われたのですから。

田太 優
恋愛
お貴族様に見染められて幸せに暮らせるなんて物語の世界の中だけ。 領主様の次男であり街の代官という立場だけは立派な人に見染められたけど、私を待っていたのは厳しい現実だった。 酒癖が悪く無能な夫。 売れる物を売り払ってでも酒を用意しろと言われ、買い取りを頼もうと向かった店で私は再会してしまった。 かつて私に好意の眼差しを向けてくれた人。 私に協力してくれるのは好意から? それとも商人だから?

処理中です...