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第78話 逃亡
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チャンク捕獲の為にミディたちと別れたジェネラルは、2段飛ばしで階段を駆け上がっていた。
ひらひらと足元に布がまとわりつくのが鬱陶しく、途中でドレスの端をくくり動きやすくする。
クルーシーが出てきた所には、地上に向かう階段がきちんと用意されており、新たに道を作る必要はなかったのでホッとした。
階段を上り、転がる勢いで、ジェネラルは地上に出た。
目の前には、使いの女性と歩いた廊下が広がっている。
物凄い勢いで飛び出してきたジェネラルを見た侍女たちが、驚きの表情を浮かべているのが見えた。
しかし、今は気にしている暇はない。
その途中、
ゴゴゴゴゴゴゴ……
何かがすれる低い音が、ジェネラルの鼓膜に届いた。
“何の音だろう……。とにかく早く、あの人を捕まえないと!”
嫌な予感がよぎる。
魔王は再び廊下を駆け、チャンクがいた玉座の間へと向かった。
玉座の間には、チャンクの側に控えていた女性二人以外、誰もいなかった。
護衛が一人も見当たらないのは、そのほとんどがジェネラルの下にいるからだ。
彼女たちが落下から免れたのは、ミディとバックが現れた時に、床が抜けなかったチャンクの後ろに隠れていたからだろう。
ぽっかりと開いていた床は閉じられ、元通りになっている。
先ほどの音は、床が元に戻った時の音だったようだ。
捕まえるべき人物の姿は、どこにも見当たらない。
一足早く、逃げ出したようだ。
その時、ジェネラルの足の下から、かすかに悲鳴が聞こえた。
ミディの声ではないが、さらなる焦りがジェネラルを襲う。
「すみません、チャンクは一体どこに逃げましたか!?」
ジェネラルは女性達に近づいた。
只ならぬ様子のジェネラルに、女性達は怯えた表情で彼を見ている。
先ほどの騒ぎを、全て見ていたのだ。彼女達の反応がこれでも、仕方がない。
女性は、もう一人の女性と支えあうように、
「チャンク様は……、あちらの扉から…お逃げに、なっ、なりました……」
と、震える指先で右の方を指さした。
一言礼を言うと、半開きになった扉をくぐり、再びジェネラルは駆け出した。
途中、侍女達にぶつかりながら、そして時々チャンクの行方を聞きながら、一本道の廊下を爆走する。
どうやら話しによると、チャンクもひいひい言いながら、護衛数人を引き連れてこの廊下を通っていったらしい。
そして、屋敷の玄関にたどり着いたとき、
「見つけた!!」
目の前には、2人の護衛に守られながら馬車に乗ろうとしているチャンクの姿があった。
その側には、侍女たちが数人がかりで、なにやら袋を馬車に運んでいるのが見える。袋からちらちらみえる黄金の輝きを見ると、彼の財産の一部なのだろう。
「逃がしません! 大人しく捕まってください!」
追いついたジェネラルを見、一瞬チャンクの表情に緊張が走ったが、可愛い少女一人なのに気がついたのか、みるみるうちに表情に余裕が表れる。
「あの娘を捕まえろ! 傷は付けるな!」
チャンクの命令に、護衛たちが動いた。
ジェネラルに襲い掛かり、彼を捕まえようとその手が伸ばされる。
侍女たちから悲鳴があがった。
しかし、ジェネラルは逃げない。
「あなたたちに用はありません!」
そう叫ぶと、左手をなぎ払うように横へ振った。
細い光の軌跡が、ふっと現れて消える。
その瞬間。
「うおっ!!」
「うわああっ!!」
護衛たちが、思いっきり後ろに転んだ。
ジェネラルが魔法で、護衛たちに足払いを放ったのだ。
一人が後頭部を思いっきり打ち、気を失った。
何が起こったのか分からないが、ジェネラルが何かをしたのは感じたのだろう。
もう一人の護衛が、怒りの形相で、再びジェネラルに襲い掛かろうと身を起こした。
しかし、その2本の足で地を踏む事はなかった。
「うっ、動けない……!」
地面にに大の字になってのた打ち回る護衛。
よく見れば、両手首・足首に、細く黒い紐のようなものが巻きついているのが見えただろう。
そしてさらによく見れば、その黒い紐が、護衛の影から伸びているのが見えただろう。
影に魔力を与え操り、護衛の自由を奪ったのだ。
「しばらく、そのままでいて下さい」
必死で自由になろうともがく護衛に一瞥を投げると、ジェネラルはすぐにチャンクに向き直った。
妙な技を使うのを見、只ならぬものを感じたのだろう。
媚びた表情と猫な声で、チャンクは命乞いをする。
「じぇっ、ジェネット…! な? どうして欲しい? 何が欲しい? わしを逃がしてくれるなら、何でもしてやろう、な?」
「残念ですね、チャンクさん。僕が今欲しいのは、あなた自身です」
「えっ? わっ、わし……?」
「そっ、そういう意味ではありません―――!!」
ぽっと赤く頬を染める勘違いチャンクに思いっきり突っ込むと、ジェネラルは力任せに左手を振った。
左手から一瞬、光を放たれる。
「なっ、何だ! どうなってる!!」
チャンクは悲鳴を上げ、自分の体を見た。
ジェネラルの魔力によって作られた縄が、中年の太い胴にが巻きついていた。
うねうねと動き、体を締め上げるそれを見、チャンクは気味の悪い悲鳴を上げている。
体の自由を奪った瞬間、縄が光を放ち動きを止めた。
そこには、手足胴を縛られ、動けなくなった肉の塊が、フゴフゴ言いながら地面に転がっていた。
ひらひらと足元に布がまとわりつくのが鬱陶しく、途中でドレスの端をくくり動きやすくする。
クルーシーが出てきた所には、地上に向かう階段がきちんと用意されており、新たに道を作る必要はなかったのでホッとした。
階段を上り、転がる勢いで、ジェネラルは地上に出た。
目の前には、使いの女性と歩いた廊下が広がっている。
物凄い勢いで飛び出してきたジェネラルを見た侍女たちが、驚きの表情を浮かべているのが見えた。
しかし、今は気にしている暇はない。
その途中、
ゴゴゴゴゴゴゴ……
何かがすれる低い音が、ジェネラルの鼓膜に届いた。
“何の音だろう……。とにかく早く、あの人を捕まえないと!”
嫌な予感がよぎる。
魔王は再び廊下を駆け、チャンクがいた玉座の間へと向かった。
玉座の間には、チャンクの側に控えていた女性二人以外、誰もいなかった。
護衛が一人も見当たらないのは、そのほとんどがジェネラルの下にいるからだ。
彼女たちが落下から免れたのは、ミディとバックが現れた時に、床が抜けなかったチャンクの後ろに隠れていたからだろう。
ぽっかりと開いていた床は閉じられ、元通りになっている。
先ほどの音は、床が元に戻った時の音だったようだ。
捕まえるべき人物の姿は、どこにも見当たらない。
一足早く、逃げ出したようだ。
その時、ジェネラルの足の下から、かすかに悲鳴が聞こえた。
ミディの声ではないが、さらなる焦りがジェネラルを襲う。
「すみません、チャンクは一体どこに逃げましたか!?」
ジェネラルは女性達に近づいた。
只ならぬ様子のジェネラルに、女性達は怯えた表情で彼を見ている。
先ほどの騒ぎを、全て見ていたのだ。彼女達の反応がこれでも、仕方がない。
女性は、もう一人の女性と支えあうように、
「チャンク様は……、あちらの扉から…お逃げに、なっ、なりました……」
と、震える指先で右の方を指さした。
一言礼を言うと、半開きになった扉をくぐり、再びジェネラルは駆け出した。
途中、侍女達にぶつかりながら、そして時々チャンクの行方を聞きながら、一本道の廊下を爆走する。
どうやら話しによると、チャンクもひいひい言いながら、護衛数人を引き連れてこの廊下を通っていったらしい。
そして、屋敷の玄関にたどり着いたとき、
「見つけた!!」
目の前には、2人の護衛に守られながら馬車に乗ろうとしているチャンクの姿があった。
その側には、侍女たちが数人がかりで、なにやら袋を馬車に運んでいるのが見える。袋からちらちらみえる黄金の輝きを見ると、彼の財産の一部なのだろう。
「逃がしません! 大人しく捕まってください!」
追いついたジェネラルを見、一瞬チャンクの表情に緊張が走ったが、可愛い少女一人なのに気がついたのか、みるみるうちに表情に余裕が表れる。
「あの娘を捕まえろ! 傷は付けるな!」
チャンクの命令に、護衛たちが動いた。
ジェネラルに襲い掛かり、彼を捕まえようとその手が伸ばされる。
侍女たちから悲鳴があがった。
しかし、ジェネラルは逃げない。
「あなたたちに用はありません!」
そう叫ぶと、左手をなぎ払うように横へ振った。
細い光の軌跡が、ふっと現れて消える。
その瞬間。
「うおっ!!」
「うわああっ!!」
護衛たちが、思いっきり後ろに転んだ。
ジェネラルが魔法で、護衛たちに足払いを放ったのだ。
一人が後頭部を思いっきり打ち、気を失った。
何が起こったのか分からないが、ジェネラルが何かをしたのは感じたのだろう。
もう一人の護衛が、怒りの形相で、再びジェネラルに襲い掛かろうと身を起こした。
しかし、その2本の足で地を踏む事はなかった。
「うっ、動けない……!」
地面にに大の字になってのた打ち回る護衛。
よく見れば、両手首・足首に、細く黒い紐のようなものが巻きついているのが見えただろう。
そしてさらによく見れば、その黒い紐が、護衛の影から伸びているのが見えただろう。
影に魔力を与え操り、護衛の自由を奪ったのだ。
「しばらく、そのままでいて下さい」
必死で自由になろうともがく護衛に一瞥を投げると、ジェネラルはすぐにチャンクに向き直った。
妙な技を使うのを見、只ならぬものを感じたのだろう。
媚びた表情と猫な声で、チャンクは命乞いをする。
「じぇっ、ジェネット…! な? どうして欲しい? 何が欲しい? わしを逃がしてくれるなら、何でもしてやろう、な?」
「残念ですね、チャンクさん。僕が今欲しいのは、あなた自身です」
「えっ? わっ、わし……?」
「そっ、そういう意味ではありません―――!!」
ぽっと赤く頬を染める勘違いチャンクに思いっきり突っ込むと、ジェネラルは力任せに左手を振った。
左手から一瞬、光を放たれる。
「なっ、何だ! どうなってる!!」
チャンクは悲鳴を上げ、自分の体を見た。
ジェネラルの魔力によって作られた縄が、中年の太い胴にが巻きついていた。
うねうねと動き、体を締め上げるそれを見、チャンクは気味の悪い悲鳴を上げている。
体の自由を奪った瞬間、縄が光を放ち動きを止めた。
そこには、手足胴を縛られ、動けなくなった肉の塊が、フゴフゴ言いながら地面に転がっていた。
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