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第75話 真相
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倉庫から出、屋敷の中を歩いている間、ジェネラルは女性と同じような格好をしている女性たちを、多く見かけた。
側を通り過ぎる女性たちの表情は、変わらないものもいれば暗い者もいる。中には女性と同じように、ジェネラルに対し哀れそうな視線を送る者もいた。
例の服装…、話によると、チャンクの命令ならしい…。
今のこのドレスですら、別世界に意識がいってしまいそうになるのに、あんな物を着ろと言われた日には……。
背中に悪寒が走り、ジェネラルは思わず身震いした。
そうしている間に、目の前に護衛の立つ大きな扉が見えてきた。
女性は、護衛に近づくと、
「この子が、新しい子です。チャンク様に……」
といい、ジェネラルの背中を護衛の方に押した。
「あっ、あの……」
「くれぐれも、チャンク様を怒らせないようにね……」
呼び止めたジェネラルに、女性はそっと耳元で忠告した。
そして再び護衛に礼をすると、女性は暗い表情でその場を立ち去った。
時々、ジェネラルのことが気になるのか、振り返っていたが、やがて曲がり角に差し掛かり見えなくなった。
少し寂しそうに女性を見送っていたジェネラルだが、
「おい、何をしている。中に入れ!」
護衛の声にジェネラルは扉の方に向き直った。促され、部屋の中に入る。
部屋は非常に広かった。
部屋の先にはその先には檀上が作られており、豪華な装飾をされた金ぴかの椅子が置かれている。檀上前には真っ赤な絨毯が長々と敷かれており、その脇には、兜を被り剣を装備した護衛たちが並んでいた。
その様子はまるで、玉座の間。
“王でもないのに、玉座なんて……、滑稽だね”
部屋の煌びやかな様子とは正反対に、ジェネラルは冷めた目で部屋を見ていた。
「娘を連れて参りました。チャンク様!」
「ご苦労。仕事に戻れ」
「はいっ!!」
玉座に座る男の低い声が、護衛を部屋から追い出した。奴が、この事件の協力者であり屋敷の主―チャンクのようだ。
護衛は、90度以上腰を折ると、そのまま部屋を出て行った。
広い部屋に、ジェネラルは取り残された。
このまま前に進むか迷っているとき、
「娘をこちらに連れて来い」
玉座に座っている男の声が、部屋に響き渡った。
彼の命令に、素早く二人の護衛がジェネラルの両脇に立ち、彼を前へと連れて行く。
大人しく、連れて行かれるままに前へ進むジェネラル。
進むにつれて、チャンクの姿が確認出来るようになって来た。
玉座には、中年太りした男が偉そうに座っていた。頭の髪は少ないが、頑張って努力をしているのが伺える。
着ている服自体は上等な良いものだ。が、良い服とその服を着て似合うのとは、残念ながら別問題だ。
両脇には、露出の高い服を纏う美しい女性二人が控えていた。
侍女たちの服と言い、自らの服と言い、奴の趣味の悪さにジェネラルは眩暈を覚える。
“何かさ…、悪者の親玉のダメな人って、こんな感じだよね…”
これがチャンクを見たジェネラルの感想だった。
そんな事を考えているジェネラルを他所に、チャンクの気持ち悪い視線が少年の体を何度も行き来した。
そして、
「うんん…、可愛らしい娘だな…。想像以上だ。お前、名は何だ」
満足そうに、チャンクがジェネラルに問いかける。
視線と同じく、下心をめちゃくちゃ感じることが出来るいやらしい口調に、ジェネラルは胃の辺りが気持ち悪くなってくる。
「……ジェネットです……」
とりあえず考えていた偽名を口にする。我ながら、全くひねりのない偽名だと思うが、下手に違うものにするよりも本名を含んでいた方が使いやすい。
「ジェネットか…、名前も可愛らしいな」
適当に考えた名前を気に入って頂けたようだが、考えた当人は全く嬉しくない。
ニヤニヤ嘗め回すような視線をジェネラルに向けるチャンクに、少年は意を決して口を開いた。
「あっ、あの……、わっ、私……、センシティの村で、ステータス様の怒りを沈める為に、生贄として川に入ったのですが……。どうしてこのような場所へ……?」
怒りを堪え、出来るだけしおらしい声でジェネラルは尋ねた。
可愛らしい少女が困惑している姿に萌えたチャンクが、ぺらぺらと喋りだす。
「それはだなあ……。お前みたいな可哀想な女たちを、助けてやる為だよ」
「助ける……為?」
「そうだ。お前もあんな村にいるよりも、ここにいる方がいいだろう? もう空腹になる事もない。寝る場所もある。今までの生活を考えれば、ここは天国じゃないか。んん?」
「じゃあ、四大精霊ステータス様の怒りは……、嘘……」
ショックを受けたような表情を浮かべるジェネラルに、チャンクが腹を抱えて笑った。
「もちろんだとも! 元々あの川はよく氾濫しておったが、あの川の近くにある別の川と繋げることで、自由に水量を増やしているのだ。おっと、この事は誰にも言っちゃダメだぞ? でないとお前も、川の氾濫の原因を探っていた連中と同様、一生閉じ込めておかなければならなくなるからな」
子供に注意するように、チャンクは優しく言った。
“……全てが、つながったね”
心の中で指を鳴らすジェネラル。
今の会話で、川の氾濫原因だけでなく、川の氾濫の原因を探っていた人たちの行方も知ることが出来たのだ。
敵からぺらぺらと事の次第を話すなど、駄目ボスの典型である。
そんな事を考えているジェネラルを他所に、チャンクは再びいやらしい笑みを浮かべた。
「お前も、可哀想になあ。だがこれからは、思い存分可愛がってやるからな。毎晩毎晩な……。うはははっ」
もう頭の中には金と女の事しかないです、と顔に書いたようにニヤケた顔が、うるさく笑う。
だがジェネラルの耳には、全く届いていなかった。握った拳が震え、無意識に唇が動く。
「女性たちの人生を滅茶苦茶にして……、よくもそんな事を……」
家族を引き離され、絶望に沈んだ女性たち。
逃げてきたフィードの苦しみ。
そして、上に立つ者として、危険を冒す決意をしたミディの表情。
ジェネラルの中で、何かが音を立てて切れた。
「僕は、あなたを絶対に許さない―――!!」
突然の叫びに、誰もが言葉を失った。
チャンクは、こぼれださんばかりに目を見開き、ジェネラルを見ている。
周りの護衛たちも、目の前の少女が、いきなりチャンクを怒鳴りつけた事に驚き、動けないようだ。
目を見開いたまま、ようやくチャンクが口を開いた。
「ぼっ、僕……だと……? お前、自分の事を僕というなど……」
“あっ………”
しまったと表情に出すジェネラル。
切れてしまったとはいえ、思いっきり男を出してしまったのだ。
そして、この攻撃的な発言。
チャンクの視線が、鋭いものになる。
“僕の側に二人の護衛。そしてチャンク……。この二人の護衛を魔法で倒して、チャンクを捕らえて逃げるか……”
素早く周囲に視線をやり、逃走ルートを確認する。
左手に魔力が集まってきた。使う魔法も決まっている。戦闘準備は万全だ。
チャンクが口を開いた。
「……めちゃくちゃ可愛いな!! かなり萌えたぞ!! これから自分の事を、『僕』と言うようにしろ!!」
「違うだろ――――――――!!!」
予想外の発言に、ジェネラルは思いっきり突っ込んだ。
しかしチャンクは気にせず、ハァハァと息遣い荒く、ジェネラルに萌えている。
女性に萌えられても、恥ずかしいで終わらせる事が出来るが、男性に萌えられるなど、ハッキリ言って……気持ち悪いの一言に尽きる。
ハァハァしながら、チャンクはジェネラルに向かって手を伸ばした。
「さあ、早くこちらに来てこの膝の上に乗るのだ。そして私の事を『パパ』と、その可愛い声で呼んでおくれ」
「僕の父は、かなり前に亡くなってますから!!!」
「いや、そういう意味じゃなくてな……」
「なら、どういう意味なのかしら?」
それは、ジェネラルのすぐ隣から聞こえた。
不意に聞こえた、女性の声。
聞きなれた、声。
そして、随分長く聞いていないように感じた声。
「久しぶりね、ジェネ」
隣にいた護衛が、兜の目元とあけ、こちらを見ていた。
その瞳、その声は間違いなく、
「ミディっ!!」
「ジェネ、その格好、とっても似合っているわよ?」
センシティから行方不明になったミディ本人が、目元に笑みを浮かべてジェネラルを見ていた。
側を通り過ぎる女性たちの表情は、変わらないものもいれば暗い者もいる。中には女性と同じように、ジェネラルに対し哀れそうな視線を送る者もいた。
例の服装…、話によると、チャンクの命令ならしい…。
今のこのドレスですら、別世界に意識がいってしまいそうになるのに、あんな物を着ろと言われた日には……。
背中に悪寒が走り、ジェネラルは思わず身震いした。
そうしている間に、目の前に護衛の立つ大きな扉が見えてきた。
女性は、護衛に近づくと、
「この子が、新しい子です。チャンク様に……」
といい、ジェネラルの背中を護衛の方に押した。
「あっ、あの……」
「くれぐれも、チャンク様を怒らせないようにね……」
呼び止めたジェネラルに、女性はそっと耳元で忠告した。
そして再び護衛に礼をすると、女性は暗い表情でその場を立ち去った。
時々、ジェネラルのことが気になるのか、振り返っていたが、やがて曲がり角に差し掛かり見えなくなった。
少し寂しそうに女性を見送っていたジェネラルだが、
「おい、何をしている。中に入れ!」
護衛の声にジェネラルは扉の方に向き直った。促され、部屋の中に入る。
部屋は非常に広かった。
部屋の先にはその先には檀上が作られており、豪華な装飾をされた金ぴかの椅子が置かれている。檀上前には真っ赤な絨毯が長々と敷かれており、その脇には、兜を被り剣を装備した護衛たちが並んでいた。
その様子はまるで、玉座の間。
“王でもないのに、玉座なんて……、滑稽だね”
部屋の煌びやかな様子とは正反対に、ジェネラルは冷めた目で部屋を見ていた。
「娘を連れて参りました。チャンク様!」
「ご苦労。仕事に戻れ」
「はいっ!!」
玉座に座る男の低い声が、護衛を部屋から追い出した。奴が、この事件の協力者であり屋敷の主―チャンクのようだ。
護衛は、90度以上腰を折ると、そのまま部屋を出て行った。
広い部屋に、ジェネラルは取り残された。
このまま前に進むか迷っているとき、
「娘をこちらに連れて来い」
玉座に座っている男の声が、部屋に響き渡った。
彼の命令に、素早く二人の護衛がジェネラルの両脇に立ち、彼を前へと連れて行く。
大人しく、連れて行かれるままに前へ進むジェネラル。
進むにつれて、チャンクの姿が確認出来るようになって来た。
玉座には、中年太りした男が偉そうに座っていた。頭の髪は少ないが、頑張って努力をしているのが伺える。
着ている服自体は上等な良いものだ。が、良い服とその服を着て似合うのとは、残念ながら別問題だ。
両脇には、露出の高い服を纏う美しい女性二人が控えていた。
侍女たちの服と言い、自らの服と言い、奴の趣味の悪さにジェネラルは眩暈を覚える。
“何かさ…、悪者の親玉のダメな人って、こんな感じだよね…”
これがチャンクを見たジェネラルの感想だった。
そんな事を考えているジェネラルを他所に、チャンクの気持ち悪い視線が少年の体を何度も行き来した。
そして、
「うんん…、可愛らしい娘だな…。想像以上だ。お前、名は何だ」
満足そうに、チャンクがジェネラルに問いかける。
視線と同じく、下心をめちゃくちゃ感じることが出来るいやらしい口調に、ジェネラルは胃の辺りが気持ち悪くなってくる。
「……ジェネットです……」
とりあえず考えていた偽名を口にする。我ながら、全くひねりのない偽名だと思うが、下手に違うものにするよりも本名を含んでいた方が使いやすい。
「ジェネットか…、名前も可愛らしいな」
適当に考えた名前を気に入って頂けたようだが、考えた当人は全く嬉しくない。
ニヤニヤ嘗め回すような視線をジェネラルに向けるチャンクに、少年は意を決して口を開いた。
「あっ、あの……、わっ、私……、センシティの村で、ステータス様の怒りを沈める為に、生贄として川に入ったのですが……。どうしてこのような場所へ……?」
怒りを堪え、出来るだけしおらしい声でジェネラルは尋ねた。
可愛らしい少女が困惑している姿に萌えたチャンクが、ぺらぺらと喋りだす。
「それはだなあ……。お前みたいな可哀想な女たちを、助けてやる為だよ」
「助ける……為?」
「そうだ。お前もあんな村にいるよりも、ここにいる方がいいだろう? もう空腹になる事もない。寝る場所もある。今までの生活を考えれば、ここは天国じゃないか。んん?」
「じゃあ、四大精霊ステータス様の怒りは……、嘘……」
ショックを受けたような表情を浮かべるジェネラルに、チャンクが腹を抱えて笑った。
「もちろんだとも! 元々あの川はよく氾濫しておったが、あの川の近くにある別の川と繋げることで、自由に水量を増やしているのだ。おっと、この事は誰にも言っちゃダメだぞ? でないとお前も、川の氾濫の原因を探っていた連中と同様、一生閉じ込めておかなければならなくなるからな」
子供に注意するように、チャンクは優しく言った。
“……全てが、つながったね”
心の中で指を鳴らすジェネラル。
今の会話で、川の氾濫原因だけでなく、川の氾濫の原因を探っていた人たちの行方も知ることが出来たのだ。
敵からぺらぺらと事の次第を話すなど、駄目ボスの典型である。
そんな事を考えているジェネラルを他所に、チャンクは再びいやらしい笑みを浮かべた。
「お前も、可哀想になあ。だがこれからは、思い存分可愛がってやるからな。毎晩毎晩な……。うはははっ」
もう頭の中には金と女の事しかないです、と顔に書いたようにニヤケた顔が、うるさく笑う。
だがジェネラルの耳には、全く届いていなかった。握った拳が震え、無意識に唇が動く。
「女性たちの人生を滅茶苦茶にして……、よくもそんな事を……」
家族を引き離され、絶望に沈んだ女性たち。
逃げてきたフィードの苦しみ。
そして、上に立つ者として、危険を冒す決意をしたミディの表情。
ジェネラルの中で、何かが音を立てて切れた。
「僕は、あなたを絶対に許さない―――!!」
突然の叫びに、誰もが言葉を失った。
チャンクは、こぼれださんばかりに目を見開き、ジェネラルを見ている。
周りの護衛たちも、目の前の少女が、いきなりチャンクを怒鳴りつけた事に驚き、動けないようだ。
目を見開いたまま、ようやくチャンクが口を開いた。
「ぼっ、僕……だと……? お前、自分の事を僕というなど……」
“あっ………”
しまったと表情に出すジェネラル。
切れてしまったとはいえ、思いっきり男を出してしまったのだ。
そして、この攻撃的な発言。
チャンクの視線が、鋭いものになる。
“僕の側に二人の護衛。そしてチャンク……。この二人の護衛を魔法で倒して、チャンクを捕らえて逃げるか……”
素早く周囲に視線をやり、逃走ルートを確認する。
左手に魔力が集まってきた。使う魔法も決まっている。戦闘準備は万全だ。
チャンクが口を開いた。
「……めちゃくちゃ可愛いな!! かなり萌えたぞ!! これから自分の事を、『僕』と言うようにしろ!!」
「違うだろ――――――――!!!」
予想外の発言に、ジェネラルは思いっきり突っ込んだ。
しかしチャンクは気にせず、ハァハァと息遣い荒く、ジェネラルに萌えている。
女性に萌えられても、恥ずかしいで終わらせる事が出来るが、男性に萌えられるなど、ハッキリ言って……気持ち悪いの一言に尽きる。
ハァハァしながら、チャンクはジェネラルに向かって手を伸ばした。
「さあ、早くこちらに来てこの膝の上に乗るのだ。そして私の事を『パパ』と、その可愛い声で呼んでおくれ」
「僕の父は、かなり前に亡くなってますから!!!」
「いや、そういう意味じゃなくてな……」
「なら、どういう意味なのかしら?」
それは、ジェネラルのすぐ隣から聞こえた。
不意に聞こえた、女性の声。
聞きなれた、声。
そして、随分長く聞いていないように感じた声。
「久しぶりね、ジェネ」
隣にいた護衛が、兜の目元とあけ、こちらを見ていた。
その瞳、その声は間違いなく、
「ミディっ!!」
「ジェネ、その格好、とっても似合っているわよ?」
センシティから行方不明になったミディ本人が、目元に笑みを浮かべてジェネラルを見ていた。
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