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「何だろ、これ……」
スカーレットは、ミモザたちのテーブルには戻らず、自分が借りている部屋に戻っていた。
ベッドの上に身体を投げ出すと、先ほどカメリアから貰った紙袋に視線を向ける。少し考えた後、彼女は身体を起こし、袋を開いた。
出てきたのは、
「……花の……髪……飾り?」
それを手に取り、スカーレットは呟いた。
袋の中に入っていたのは、花弁を開いた緋色の髪飾りだった。
それは只の髪飾りではなく、
「……魔法がかかってる。何だろ……」
触れる指から、大いなる存在の力が感じられる。何かの魔法が付与されている証拠だ。
指輪の一件もあるので、スカーレットの表情が少し険しくなる。何気なく紙袋を逆さにすると、中から一枚の手紙が落ちて来た。
何かと思い、それに視線を向けると、
「……納品書?」
手紙を手に取り、良く見えるように自分の前に持って来ると、内容を確認した。そこに書かれている内容を読み上げる。
「ええっと……、『この度は、当店へご依頼頂きありがとうございます。乱花月第五日にご依頼頂きました細工品について、以下の通り納品いたします』」
【注文日】乱花月第五日
【納品日】乱花月第三五日
【品 物】髪飾り(贈呈用)
【付与魔法】防御力上昇・素早さ上昇・器用さ上昇・身代わり
【請求金額】一万五千G
「……高っ‼」
納品書に書かれていた金額を見て、思わず叫んでしまった。まじまじと手に持っている緋色の髪飾りを見つめ、再び納品書を読むと、一つの事実に気づいた。
(これってもしかして……、あたしの誕生日……プレゼント?)
注文日は、丁度彼女がミモザたちに自分の誕生日が近い事を伝えた次の日。
納品日は、丁度彼女の誕生日。
彼女の想像が正しいと証明するかのように、納品書には贈呈用という文字が並んでいる。
これらを総合して考えると、この髪飾りはカメリアが誕生日プレゼントとして用意した物、という結論に達した。それも彼女のためを思い、盗賊スキルを補助する魔法の付与までして。
そう考えた瞬間、スカーレットは真っ赤になってベッドに倒れてしまった。しかし、髪飾りからは視線を逸らすことができない。
(どうして……? ならどうしてあの時渡してくれなかったの?)
ドキドキする気持ちを抑えるため、髪の毛に触れた時、硬く当たる物を感じた。
彼女の手に触れた物、それはミモザたちが誕生日プレゼントにくれた髪飾りだった。
次の瞬間、笑いが込み上げてきた。次第に大きくなり、大きな声となって部屋に響き渡る。
「あっ、あはっ……、あははははっ‼ そっか、そうだよね。カメリアの事だもん。プレゼントが同じ髪飾りで被っちゃったから、ミモザたちの事を考えて渡すのを止めたのね!」
ミモザたちのプレゼントも良い物ではあるのだが、カメリアが用意した髪飾りにはどうしても劣ってしまう。
それに二つも髪飾りがあっては、スカーレットも困るかもしれないという気持ちもあったのかもしれない。かと言って、他のプレゼントを用意する時間もなかった。
だから、誕生日プレゼントを渡さなかったのだ。
全て予想ではあるが、ほぼ間違いないとスカーレットは確信していた。
(真面目なあいつの事だもん。絶対そうだわ。それにしてもほんと馬鹿だなー。納品書が入ってるのを気づかずに渡すなんて……)
納品書に書かれた、付与魔法の項・身代わりを見ながら思う。
身代わりとは髪飾りの持ち主に危険が迫った時、一度だけ身を守ってくれる魔法だ。この魔法の付与が、とても高いのだ。
(ほんっと、心配性。あたしの事、子どもとでも思ってるのかな?)
しかし不快には感じなかった。その代り起こったのは、どこか気恥ずかしいむずむずした気持ち。
心の中で、小さく誰かが囁く。
(もしかして本当に……、カメリアは……あたしを……?)
しかしすぐに頭を振ると、その声を聞かない事にした。改めて髪飾りを手に取ると、スカーレットはベッドから降り、誰ともなく宣言した。
「全く。髪飾りの一つや二つ、ちゃんと着こなして見せるわよっ!」
スカーレットは、ミモザたちのテーブルには戻らず、自分が借りている部屋に戻っていた。
ベッドの上に身体を投げ出すと、先ほどカメリアから貰った紙袋に視線を向ける。少し考えた後、彼女は身体を起こし、袋を開いた。
出てきたのは、
「……花の……髪……飾り?」
それを手に取り、スカーレットは呟いた。
袋の中に入っていたのは、花弁を開いた緋色の髪飾りだった。
それは只の髪飾りではなく、
「……魔法がかかってる。何だろ……」
触れる指から、大いなる存在の力が感じられる。何かの魔法が付与されている証拠だ。
指輪の一件もあるので、スカーレットの表情が少し険しくなる。何気なく紙袋を逆さにすると、中から一枚の手紙が落ちて来た。
何かと思い、それに視線を向けると、
「……納品書?」
手紙を手に取り、良く見えるように自分の前に持って来ると、内容を確認した。そこに書かれている内容を読み上げる。
「ええっと……、『この度は、当店へご依頼頂きありがとうございます。乱花月第五日にご依頼頂きました細工品について、以下の通り納品いたします』」
【注文日】乱花月第五日
【納品日】乱花月第三五日
【品 物】髪飾り(贈呈用)
【付与魔法】防御力上昇・素早さ上昇・器用さ上昇・身代わり
【請求金額】一万五千G
「……高っ‼」
納品書に書かれていた金額を見て、思わず叫んでしまった。まじまじと手に持っている緋色の髪飾りを見つめ、再び納品書を読むと、一つの事実に気づいた。
(これってもしかして……、あたしの誕生日……プレゼント?)
注文日は、丁度彼女がミモザたちに自分の誕生日が近い事を伝えた次の日。
納品日は、丁度彼女の誕生日。
彼女の想像が正しいと証明するかのように、納品書には贈呈用という文字が並んでいる。
これらを総合して考えると、この髪飾りはカメリアが誕生日プレゼントとして用意した物、という結論に達した。それも彼女のためを思い、盗賊スキルを補助する魔法の付与までして。
そう考えた瞬間、スカーレットは真っ赤になってベッドに倒れてしまった。しかし、髪飾りからは視線を逸らすことができない。
(どうして……? ならどうしてあの時渡してくれなかったの?)
ドキドキする気持ちを抑えるため、髪の毛に触れた時、硬く当たる物を感じた。
彼女の手に触れた物、それはミモザたちが誕生日プレゼントにくれた髪飾りだった。
次の瞬間、笑いが込み上げてきた。次第に大きくなり、大きな声となって部屋に響き渡る。
「あっ、あはっ……、あははははっ‼ そっか、そうだよね。カメリアの事だもん。プレゼントが同じ髪飾りで被っちゃったから、ミモザたちの事を考えて渡すのを止めたのね!」
ミモザたちのプレゼントも良い物ではあるのだが、カメリアが用意した髪飾りにはどうしても劣ってしまう。
それに二つも髪飾りがあっては、スカーレットも困るかもしれないという気持ちもあったのかもしれない。かと言って、他のプレゼントを用意する時間もなかった。
だから、誕生日プレゼントを渡さなかったのだ。
全て予想ではあるが、ほぼ間違いないとスカーレットは確信していた。
(真面目なあいつの事だもん。絶対そうだわ。それにしてもほんと馬鹿だなー。納品書が入ってるのを気づかずに渡すなんて……)
納品書に書かれた、付与魔法の項・身代わりを見ながら思う。
身代わりとは髪飾りの持ち主に危険が迫った時、一度だけ身を守ってくれる魔法だ。この魔法の付与が、とても高いのだ。
(ほんっと、心配性。あたしの事、子どもとでも思ってるのかな?)
しかし不快には感じなかった。その代り起こったのは、どこか気恥ずかしいむずむずした気持ち。
心の中で、小さく誰かが囁く。
(もしかして本当に……、カメリアは……あたしを……?)
しかしすぐに頭を振ると、その声を聞かない事にした。改めて髪飾りを手に取ると、スカーレットはベッドから降り、誰ともなく宣言した。
「全く。髪飾りの一つや二つ、ちゃんと着こなして見せるわよっ!」
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